第3話

「動かないで!

 動けばルーク特製の魔道具が発動しますよ。

 愚かな方々ですね。

 ルークが私に護りの魔法をかけなかったと思っていたの?

 ルークが私を護る魔道具を残していかなかったと思っていたの?

 一歩でも動けば、産まれてきた事を後悔する魔法が発動しますよ!」


 あら、あら、あら。

 王太子とナオミだけでなく、私を捕まえようとしていた近衛兵まで、青ざめて脂汗をかいていますね。

 今迄ニタニタと笑っていた貴族達も、同じように青ざめて冷や汗をかいています。

 まあ仕方がない事でしょう。


 ルークが過去に行ってきた凶行は、それほど王侯貴族の間に鳴り響いています。

 私に嫌味を言ったある貴族令嬢は、魔法で舌を巨大化されてしまいました。

 一メートルを超える二股に割れた舌にされた令嬢は、地に頭を擦り付けて、私に泣いて詫びましたが、私がルークにとりなしても七日間も許してもらえず、舌が渇いて死にかけてしまいました。


 酔って私に下品な言葉を投げかけた王弟は、大切な所を南瓜のように肥大化させられ、高熱と激痛も加わり、七日七晩悶え苦しんだと聞きます。

 この時は、私がルークに手ずから御飯を食べさせてあげると約束するまで、頑として魔法を解きませんでした。


 もちろん、王家も貴族も黙っていた訳ではありません。

 父に苦情を言ってきましたが、叱責しようとした父を、ルークは蛙に変えてしまいました。

 王家や貴族は実力行使に兵を送ってきましたが、百を超える貴族の諸侯軍も、千を超える王国軍も、全員蛙に変えられてしまいました。


 言い出したら切りがありません。

 私の事を陰で悪く言っていたと評判の伯爵夫人は、ある日顔だけが疣蛙となり、半狂乱となったそうです。

 私に詫びを入れてきましたが、七日間は元に戻らなかったそうです。

 ルークの魔法は七日間の効力しかないのかもしれません。


 一方父上や兄上の悪口には無反応です。

 どれほど悪しざまに罵ろうと、ルークが報復した事はありません。

 それどころか、父上が私を厳しく躾けようとするたびに、ルークは父上を蛙や飛蝗、時には猫や豚に変えてしまうのです。

 そんなルークを止めようとした兄上も、何度も動物に変えられています。


 まだ人を殺した事はありませんが、私に危害が加えられたら、絶対に許さないでしょう。

 そんなルークが私のためにかけた護りの魔法です。

 どれほど恐ろしい効果が表れるか、王太子はもちろん、全貴族が戦々恐々としていることでしょう。

 

 さて、私は次にどうすればいいのでしょう?

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