エピローグとプロローグ

「なんだか、去年もこんな日があったな……」

僕が病院を出ると、止みそうにない雨が降っていた。

この病院のバス停は、どうやらハウスのような作りになっているようだ。

だから、外から中に誰がいるのかわかった。

そこには、彼女がいたのだった。

「川添千雪……」

ボソッと呟くと、彼女が振り返った。

僕は、手を振ると彼女はまた目線を下に向けた。

僕は、そのままバス停の中に入り、あの日の様に言った。

「こんにちは!!」

「冴河裕太……、今の貴方はどっちの貴方なの?」

「さあ、どっちだと思う?」

「まあ、いいわ。どちらにしたって貴方とは話をしようと思っていましたが、その顔付き、そして、その目つき、吹っ切れたようね」

「そうだね、君のお父さんのおかげでね」

「父さんがですか?」

「はい、そのおかげで、今は僕が僕でいられてるんです。」

「僕……!?まさか、元に戻ったの!!」

「いえ、元々僕は『強い裕太』の仮面を着けただけの弱い冴河裕太だから……」

「そんなことない!!」

「え……」

ちょっと!?

近い近い!!

どうして女の子は興奮すると顔と身体を近付けるのだろうか……

「貴方は弱い人なんかじゃない!!だって、あの日私の事を気にかけてくれたじゃない……」

「覚えていたんですね」

「忘れるはずがありません。あんな衝撃な出会い方……」

彼女は頬を赤くしながら唇に触れた。

そう、あれは本当にラブコメのような出会いだった。
















1年生の頃の6月、ちょうど衣替えの週の話だ。

その頃は、生徒会に入る前だった。

何よりも、学校に慣れてきていて調子に乗っていた。

それ故に、前もちゃんと見ないで階段を登っていた。

「きゃっ!!」

「うわっ!!」

だから、自分よりも小さい女の子とぶつかってしまった。

だけど、僕はまずは彼女を抱き締め、彼女に怪我をさせないように階段を転げ落ちた。

落ちる瞬間に僕は目を閉じてしまった……

まあ、落ちたと言っても、10数段くらいで、僕の怪我するくるらいの段数ではない。

だけど、彼女にとっての大切なものを奪ってしまった……

「んっ……」

なんでこの子は色っぽい声出してるんだ?

「……ッ!?」

目を開けて、僕も気が付いた。

僕らは、キスしていた。

さらに言えば、僕は舌も入れてしまっていた

当然ながら、上に彼女、下に僕、つまり、彼女の唾液が重力にしたがって垂れてくる。

つまり、今僕の口内は彼女の唾液で満たされているわけである。

そのため、僕は彼女に退いてもらおうにも伝える事が出来ない状態なのである。

「……っはぁ、助けて頂きありがとうございます。これは、その、お礼と言いますか、なんと言いますか……、とにかく忘れてくださいっ!!」

「グッ、ちょっと待っ……」

あ、飲み込んでしまった。

怪我していないか確認しようとしたら女の子の唾液を飲み込むなんて、

「御褒美にも程があるだろ……」

その後、僕は保健室に行き、痣になっている部分に湿布を貼ってもらい下校した。











「確かに、そんなこともあったな……」

「そうですね、まさか、ファーストキスを貴方に奪われてしまうとは思っていませんでした」

「その事に関しましては、本当に申し訳ありません。」

僕はベンチの上で土下座した。

「全然、大丈夫ですから。あの時、怪我1つしていないのは、貴方のお陰なんですから。でも、ちゃんと責任取ってくれるんですよね?」

「うぐっ……」

そんな照れた表情で身体をモジモジしながら言うなよ、僕がヤラシイ事をした後みたいに見えるだろうが……

「何が所望ですか?」

「うーん、そうですね。残りの人生を貴方の隣で貴方と一緒に歩くことを許してくれませんか?」

「……」

返答に困るお願いだな……

「無理にとは言いません。だって、貴方には、たくさんの魅力的な女の子がアプローチしていますもんね……、いいんですよ、私は1番になれなくても、貴方が、私の好きな人が幸せなら」

あ、この人、愛が重い系の人なのかもしれない……

でも、重い愛も受け止めようによっては、とても愛されているってことだよな……?

「そうだね、僕も好きな人が幸せなら、1番じゃなくてもいいと思っていたけど、!!」

「ちょっと、待っ……」

あの時とは違う。今回は、僕の意思で、そして、僕だけのために僕は千雪さんの唇を奪った。

「んっはぁ……」

彼女はトロンとした目付きで僕を見ている。

「今度は、あなたの意思でしたんだから、責任、取ってくれるのよね?」

僕はもう決めていた、

「その覚悟は、とっくに出来てるよ。その証明のために君にしたんだよ」

「……」

彼女は顔を真っ赤にし、唇に触れながらそっぽを向いた。

その表情すら可愛らしさがあり、

「ずっと隣で見ていたい……」

僕はボソッと本音を漏らしてしまった。

「そ、そう、なの?」

「えっ!?本音漏れてた?」

そう問いかけると、彼女は少しだけ首を縦に振った。

「なんか、恥ずかしいな……」

僕は頭を搔くと、彼女は少し笑った。

「貴方はやっぱり面白い人ですね、やっぱり私、貴方が好きみたいです」

「好きじゃなかったら、キスした直後にぶん殴られて去勢されてるよ」

「殴るかどうかはともかく、去勢はさせてますね」

「ちょ!?いきなり怖いこと言わないでよ……」

僕はムスコを覆い隠した。

「冗談ですよ」

「よ、良かった……、ところでさ」

「はい、どうかしましたか?」

「今日、この後暇?」

「はい、暇です……」

何かを察したようにボソッと彼女が言った。

「よかったら、ウチ来ない?」

「行っていいんですか?」

「もちろん、ちょうどバスも来たし……」

僕は雨で濡れた右腕をジャージの裾で拭き、彼女に差し出した。

「はい、では、お邪魔します」

彼女は微笑みながら、僕の腕を掴んだ。


僕らは、バスの中でも他愛のないことを話し、この時間が永遠に続いて欲しいと僕は心の中で祈っていた。

気が付けば、もう最寄りのバス停だった。


「じゃあ、行こうか」

「はいっ!!」

僕らは、繋いだままの手を離さずにバスを降りた。


「やっぱり雨強いな……」

「1度雨宿りします?」

「そうだな」

僕らは、バス停で1度雨宿りをすることにした。

「実はさ、君に伝えたいことがもう1つあるんだ」

「何ですか?」

「僕の君への気持ち」

「ッ!?」

「雨音でかき消されないようになるべく大きな声で言うよ」

「わかった……」

僕は、あの日あの笑顔に惹かれた。

そして、少し照れてる顔も、怒っている顔もとても可愛かった。

だから、僕は一生君と居たいって思ったんだ。

そのために、僕が今できる最高のプロポーズを、君に、君だけのために!!

「雨が降っていますが、僕と結婚しませんか?」

「ッ!?」

「答えを聴いてもいいかな?」

「はいっ、不束者ですが、よろしくお願いします」

彼女は少し涙をうかべながら、とても綺麗な笑顔で答えた。








色々あったが、俺の物語は終わりを迎え冴河裕太の新たな物語が始まる。

これは、俺にとっては、ハッピーエンドのエピローグ。

でも、僕にとっての、始まりのプロローグ。

『これから、たくさん迷い、たくさんの選択をするだろうが、お前なら、きっと乗り越えられる。

だから、胸を張って生きていけよ。

俺とはここでお別れだ。』

『あぁ、今まで本当にありがとう。僕はもう、逃げないよ!!強くあると僕に誓うよ!!』

『それでいい。強くなくていい。ただ、強くあれ!!誰の指図も受けるなよ、俺!!』

『君と過した6年間は、とても楽しいものだったよ。次は友達として会いたいな……』

『おいおい、泣くんじゃねぇよ!!男の別れには、涙じゃなくて笑顔だろ?』

俺は、俺の頬を軽く引っ張り、笑顔を作った。

『そろそろお別れだ。じゃあな、冴河裕太!!』

『また会えるといいね、冴河裕太!!』

こうして僕、冴河裕太は、ようやくスタートラインにたったのだった。













________________________

(あとがき)

皆さんこんにちは、汐風波沙です。

このセリフ、テンプレだな‪w

えっとですね、まずは謝罪から。

不注意で最終回のデータを飛ばしました。

申し訳ありませんでした!!!

土下座ものですね。

切腹ものでもありますね。

そんなことは重々承知なんです。

なので、今後はデータを飛ばさないように心掛けます(時々飛ばします)。

では、伏線や他のヒロインについては、今後の続編の方に引き継ぎます。

今まで本当にありがとうございました!

そして、今後とも自分の執筆している作品、そして続編の方もよろしくお願いしますm(__)m

以上汐風波沙でした!

また会える時を〜!

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