遠足、それはラブコメイベントばかり?⑥
「結局、ずっと仕事だけしてたな、今年も」
「そうだな。でも、俺達らしい遠足ではあったな。そう思わないか、裕太?」
遠足も終盤に差し掛かり、俺たちは黄昏ていた。
「俺たちは、これで任期終了か……」
「2年間、早かったか?」
「思っていたよりもな」
「確かに、色々あって大変だったよな、俺達の代は」
「あぁ、でも、そのおかげで、成長できた。リーダーとしても、人としても……」
「本当にお前はたくましくなったよな。まだまだ未熟なところもあるがな」
「それは、お前もだろ?」
俺たちは、笑い合った。
そして、こうも願った。
『こんな日々が永遠に続いて欲しい』
そう、俺たちがこうやって何かを協力してやるのは、これで最後なのである。
来週からは、新生徒会がこの学校を動かしていく。
「さて、そろそろ時間だ。行くぞ、生徒会退任・新生徒会任命式」
「あぁ、楽しかったよ、半年間だったけど、色々濃い半年だった。ありがとう、修」
「こちらこそ、俺の願いを聞いてくれて、そして、友達になってくれたこともだ」
「これからも俺たちは、友達だろ?」
「あぁ、そうだな……」
「おいおい、泣いてるのか?」
「あぁ、そうだよ。なんか、最終回みたいで、泣けてきた……」
「おいおい、俺たちの高校生活はまだ終わらないんだぞ!!」
「そうだな……」
「なあ、握手しようぜ?」
「なんだか、俺達の始まりを思い出すな……」
「確かに、俺たちは、最初はかなり仲がよろしくなかったからな、初めはまず仲良くなることから始めたな……」
「本当に懐かしいな、あの日々が……」
「あぁ、それも今じゃいい思い出だな、ほら」
俺は、右手を修に突き出した。
「そうだな。これからも、よろしくな、裕太」
修が、俺の右手を握った。
「こちらこそ、よろしく、修」
俺はその手を握り返した。
「じゃあ、行くか、退任・任命式」
「あぁ、行こうぜ、俺達の最後の晴れ舞台に!!」
その後、俺たちの退任式は大盛況で終わり、新生徒会長は、2年の
「冴河、なにか手伝うことある?」
「いや、大丈夫だよ、
なんと、俺に話し掛けてきたのは、野球部のキャプテンの三嶋
この生徒は、俺が落ち込んでいた時に唯一話し掛けてくれた、めちゃくちゃ良い奴。
そして何よりも超がつくほどのイケメン。
だが、氷雨ほどイケメンではない。
「お前、今日井戸に落ちたって聞いてたから、てっきり骨折してるんじゃないかと思ったぞ……」
「いや、元気だよ。帰りもロードバイクで学校まで帰る予定だ」
「いや、車で帰れ」
「だから、俺はなんともな……」
不覚にも俺はシートを持ち上げる際にふらついてしまった。
「あ、あれれ?おかしいな……」
「ほら、多分打撲だな、今から元生徒会長に言って、今すぐお前を車に乗せるように言ってくるから、お前は車の方に行ってろ!!残りは俺と生徒会でやっておくから」
「あ、ありがとう……」
俺は、学校の車に向かった。
「相変わらずサボるな、お前等は」
そこには、いつもの顔触れがいた。
「私に会いたくて、裕太もサボってきたって訳か、私嬉しいな!!」
「結衣、それは、2億パーセントありえないからな。それで、何故春川はここに居るんだ?」
「私、行きは車で来たので、帰りも車で帰るように言われているんですよ。そのおかげで、片付けをサボれちゃいましたっ!!」
「サボるなよ、新副会長っ!!」
俺は、春川に軽くチョップした。
「ひゃぅっ」と可愛い声を上げながら当たった部分を押さえている。
「酷いですよ、先輩ぃ……」
「まぁ、バツはこの辺にしておくか……」
「さて、全員揃ったな。じゃあ、帰りは2つに分かれるぞ、冴河と川添は私の自家用車で、残り2人は、
「おつまみ先生、運転出来たの?」
「出来ますよ、大人ですから」
枝間目先生は、免許証をスマホの裏から取り出し、結衣に見せた。
「では、私は2人を病院に連れていきます。枝間目先生は、学校へ2人を送ってください」
「わかりました。では
「お互いにね、じゃあ、冴河と川添は乗りなさい」
「は、はい」
俺と千雪さんは、錦先生の車に乗り込んだ。
俺たちが乗ったのを確認し、先生は乗り込んだ。
「じゃあ、とりあえず総合病院でいいよな?」
「はい、一応保険証も持ってきていますので、大丈夫です。」
「準備がいいな」
「何かあった時のための保険ですよね?」
「確かに、そうだなっ!!で、川添の方は?」
「総合病院には、母が居ますので大丈夫です」
「そっか、お前の母親、医者だったな。じゃあ、出発するぞ、シートベルトしろ〜」
俺たちは、シートベルトを着用するのを確認すると、先生はエンジンをかけ、車が動き出した。
「あの、裕太さん。今日は、その、色々とお疲れ様でした」
「あ、あぁ。俺も、今日はずっと生徒会の仕事ばかりしてて、あまり話せなかったけど、結衣が優しくしてくれただろ?」
「はい、坂本さんにはとても優していただきました。やはり、1つ年上ということもあり、変な事を言ってくる人がいましたので、そんな時に坂本さんが助けてくれて、本当に嬉しかったんです」
「本人が聞いたら、赤面モノだな」
「詳しいんですね、坂本さんのこと……」
「中学の頃、俺たち、恋人だったんだよ」
「冴河、それ本当か!?お前もやる時はヤるんだな!!」
「なんで、錦先生が反応するですか。と言うよりも、教師がそんなこと言っていいんですか?」
「私だって一人の人間だ。そんなことを言ってもいいだろ?しかもここにはお前達ふたりしかいないしな。あ、この事何処かに漏らしたら、お前達の内申は、ボロクソに書くからな」
「理不尽ですね、でも、教師は基本的に性根が腐ってないとやっていけないらしいですが、本当に先生は、性根が腐りきってますね」
「ハハっ、川添も言う時は言うんだな。そのくらい話せていたら、去年には、学校戻ってこれたんじゃないか?」
「それは、言わない約束ですよね?」
「悪い、口が滑った」
「ところで、去年って何かあったんですか?」
「教えませんよ、貴方には。だって、貴方が一層悲しくなるだけですから。」
「そ、そうなのか……」
俺は、そのまま外を眺めた。
「だいぶ曇ってきましたね」
「確か、今日の夜から明日の朝方にかけて雨が降るんだったんじゃないか?」
「マジかー、傘持ってきてない……」
「私も持ってきてないですね……」
「まぁ、病院まで送るが、帰りはバスで帰れよ。私は暇じゃないんだからな……」
「俺たちを見捨てるんですね」
「当たり前だろ?」
「最低ですね……」
「いや、私はお前たちの親じゃねぇからな」
「「……」」
そこをつかれると、弱いな、やはり未成年は……
「まあ、交通費と飲み物代くらいは出してやるよ。ほら、一人千円だ」
俺は、1000円札を受け取った。
「ほら、そろそろ着くぞ、準備しろ」
そう言うと、先生はエントランス付近のロータリーに車を停車し、
「まぁ、後日全額学校保険で帰ってくるから、精密に検査してもらってこい」
「わかりました。ありがとうございました」
「道中お気を付けて」
「おう、じゃあ、また来週な〜」
そう言うと先生は、去って行った。
「じゃあ、俺たちも行くか」
「はい」
俺たちは、病院の中に入った。
20分後、診察は完了し、三嶋くんが言っていたように、打撲だった。
「2、3日で痛みは引くけど、1週間は、痣は引かないかな……」
どうやら、落ち方がかなり良かったようで、この程度の怪我で済んだ。
「じゃあ、湿布を処方しておきますので、毎日貼ってください。治るまでです。」
なので、背中に毎日湿布を貼る必要が出来たが、背中は届かないのが、難点だ。
「ありがとうございました。診察終了ですか?」
「診察はお終い。ここからは、娘のことについて話してもいいかな?」
「はい、どうぞ……、娘!?」
「僕の名前は、川添
「つまり、川添千雪さんの父親と言うわけなんですね……」
「そして、君には伝えたいことがある。娘の心臓のドナーについてだ」
「ドナーですか?」
「あぁ、ずっと君に言うか悩んでいたが、遺族の君と会う機会がなかったということもあるが……」
「それってどういうことですか?」
「君も気が付いているのではないのか?私の娘が、彼女に見えてしまうことがあるだろ?」
「……っ!!」
「やはりそうだったのか、私の娘、千雪の心臓は、雨沢雪乃さんの心臓だ。彼女は、私の娘の中で生きているんだ」
「もう、千雪さんの1部なので、生きてはいないんです」
「それは違うよ、千雪は手術の後から、こんなことを言い出すようになったんだよ。『早く、彼のもとに帰らないと、彼が泣き出してしまう』と。これは、臓器移植の際にはよくある事らしいんだよ。でも、千雪は違った。君を見ると、ドキドキすると言っていた……」
「……」
「これは、医者としてではなく、父親として君に頼みたいことがある。娘を、千雪を頼まれてくれないか?」
「……ですよ」
「すまない、よく聞き取れ……」
「もう僕には、そんな資格ないですよ!!僕は今までたくさん悲しい思いをして、決めたんです。もう大切な人を作りたくない、二度と失いたくないっ!!と決めたんです。でも、彼女を見てると、思い出すんです。雪乃と一緒にいた日々を……、楽しくて、騒がしくもあった。時には喧嘩だってしたし、許しあったこともあった。その思い出一つ一つに特別なものがあり、そして、もう失いたくないって思いが強くなるんです」
「……」
「だから、今、胸が苦しくなるのは、あの時雪乃のことを守れなかった罪の罰なんだってこと、だから、僕は彼女を頼まれたとしても、僕に彼女の隣に居る資格なんて、ないんですよ……」
「……そうか、君も色んな思いを抱えながらも成長することを選んだんだね。まさに父親そっくりだ」
「父さんのことを知ってるんですか?」
「もちろんだよ、アイツとは幼なじみだったからな」
「そうだったんですね……」
「まぁ、今は俺よりもいい友達ができたみたいだったけど、年に1回は飲みに行く仲だったんだぜ」
「そう……ですか……」
「僕から君へ言うことは、2つ」
「……」
「1つ目は、よく頑張ったねお疲れ様。もう、過去に囚われる必要なんてないんだよ」
「……っ!!」
「もう1つは、甘ったれたこと言ってんじゃねぇよ!!逃げるためのその仮面は、外してしまえ!!お前は、お前の物語の主人公なんだよ、お前しかいないんだよ!!苦しい?罰?関係ないよ、お前はただ目の前のことから逃げてるだけなんだよ、さっさと立て、前を向け、歩き出すしかないんだよ!!このくらいかな?」
「ッ……っ!!」
「もういい、吐き出してしまえ、何もかも。君は君の道を進む以外ないのだから」
「……」
その時、僕のを頬を一筋の雫が流れ落ちた。
「抱え込み過ぎなんだよ、裕太くん」
その言葉を聞いた瞬間、僕の中の何かが跡形もなく崩れ去った。
「ずっと、抱え込んでたんだね……、もう、抱えきれないくらいの重りを……、だから今だけは、好きなだけ泣くといいよ」
「うっぐっ……」
そこからは溢れ出した涙が止まらず、その場に泣き崩れてしまった。
10分後、気持ちに整理が着き、落ち着きを取り戻した。
「ありがとうございます、気分が少しだけ楽になりました」
「いや、今まで放置してしまっていたのは僕の方だし、また、何かあったら言ってくれ」
「ありがとうございます……、さっきの話なんですが、僕は本当に千雪さんの隣に居てもいいんでしょうか?」
「はあ……」
呆れたような顔してため息を着く、川添先生。
「私は、君だから!!千雪を任せたいんだ。君は、大切な人を失う辛さ、大切な人を守ることの大切さを知っている。もう、君は、立派な男だ。自分に自信をもて」
「ありがとうございます、では、そろそろ行きます」
「ああ、言い忘れていたが、今日僕は夜勤だ」
「行きませんよ、家には!!」
こうして、僕は偽りの自分を辞めることにしたのだった。
_______________________
(あとがき)
皆さんお久しぶりです、汐風波沙です。
あとがきを書くのは、久しぶりです。
さて、今回の更新で、1度自分のキャパシティの限界が見えたので、この作品の更新を休止することを報告します。
投稿を辞める訳ではありません。
良かったら、この作品の方を読んでみての感想や、誤字・脱字の方があれば、教えていただけると、今後の自分の成長に繋がるので、よろしくお願いします!!
では、今回は、この辺で失礼します。
これからも、自分の執筆している作品をよろしくお願いします!!
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