第38話 新学期、それは、出会いと再会

「新入生の皆さんは、こちらで受付をお願いしま〜す!!」

 今年は、新人の先生が、1年生担当なんだ……

 今日は、4月10日、吾らが百日草高校の入学式である。

 なぜ俺は、入学式のなのに学校にいるかというと、生徒会副会長だからである。簡単に言うとそうだが、本来なら、生徒会長だけが登校し、生徒会長挨拶をする予定だったが、生憎、修のやつ、今日に限って風邪引きやがって……今度、なにか奢ってもらわないとな。

「あ、いたいた、せんぱ〜い!!」

「朝から騒がしいぞ、春川。」

「いやいや、先輩は朝から暗すぎるだけですよ〜」

「いや、朝は誰しも嫌いだろ」

「私はいつも朝からランニングするくらい大好きですよ?」

「一人でフルマラソンでも走ってろ!!」

「いくら何でも、私もそこまでの余裕ありませんよ!!」

「普通なら走れるのかよっ!!」

 この書記、バケモノなのか?

「あ、そろそろ集合時間だ。行くぞ春川、今日はよろしく頼むな!!」

「はい、この可愛い、可愛い生徒会書記の私が副会長をサポートします!!」

「それは頼もしいな。期待してるからな。」

「もちろんです!!」

 こうして、俺は人生初めてにして最後であろう、入学式の生徒代表挨拶を行うことになった。








「は〜、終わった〜!!」

 俺は、緊張感が漂う体育館を出て、生徒会室に戻ってきた。

「お疲れ様です、先輩」

「ああ、春川のほうもお疲れさん」

「あの、ところで質問なんですが……」

「なんだよ?」

「いつになったら、下の名前で読んでくれるんですか?」

「……一年後くらい?」

「その時先輩もういないじゃないですか。」

「そ、そうだな……」

「私、今日頑張りましたよね?」

「……そう、だな」

 確かに、今日はかなり働いてもらったし、なにかジュースでも奢って……

「ということで、今日から、私のこと下の名前で読んでくださいね?」

「それ、本気で言ってるの?」

「はい、私は至って本気ですよ。」

「え〜……」

「で、どうするんですか?まさか、後輩のお願いを無視したりしないですよね〜?」

「……わかった。ご褒美だぞ、櫻」

「……」

「なんで黙り込んでるんだよ?」

「……いや、だって、いきなり呼び捨てされるなんて思っていなかったんだもん!!」

「お、おう、そうだったんだな」

「そう、ですよ……」

 やばい、恥ずかしい〜!!

「……やっぱり、名字のままがいいです。」

「わかった。じゃあ、名字のままにしておくよ……」

「はい、お願いします。」

 結局俺と春川の関係は変わらないままになるのかも知れない。

「じゃあ、俺帰るから。」

「あ、はい、お疲れ様でした。」

「春川もお疲れさん」

 俺はそのまま生徒会室を出て、下足室で靴に履き替え、いつものバス停に向かった。









 俺がバス停に着くと、バス停には一人の生徒がいた。

 髪はミディアムショートくらいで、結構可愛い顔をしている。

 彼女の胸元のリボンの色を確認し、俺と同じ学年の子だと理解した。

 でも、こんな女の子いたかな〜?

 俺はその子に見覚えはない。

 俺は人とそこまで深くは関わらず、表面上の付き合いしかしないから、どんな生徒がいたかなんて覚えているわけが無いのだ。

 だが、彼女は見た事、いや話をしたことがある。

 どこ出会ったんだ?

「・・・・・・はあ〜、何故そこに立っているんですか。座ればいいじゃないですか、副会長?」

「は、はあ・・・・・・」

「何を今更そんなに緊張しているのですか。去年同じクラスでしたよ、私たち。」

「あ、去年同じクラスだった!!えっと〜、何さんだっけ?」

「忘れられてる。まぁ、あなたにとって私がその程度の存在であったわけですね、冴河裕太さん」

「なんか、すみません・・・・・・」

「では、改めて自己紹介させていただきます。私は、夜咲よざき 日花ひばなです、年は同い年って言っても同学年ですし、わかっていますよね。」

「あ、ああ、わかっているとも。夜咲さんだったね。思い出した思い出した・・・・・・」

 そうだ!!

 思い出したぞー、この子確か去年のうちのクラスの学級委員長だった。

「で、座らないんですか?」

「あ、いや、・・・・・・」

 ポツンッ

 なにか冷たいものが、俺の頭に当たった。

 俺は空を見上げた。

「あ、雨だ。」

「早く入らないと濡れますよ?」

「じゃあ、失礼して・・・・・・」

 俺は彼女の座っている向かい側のベンチに座った。

「去年は、その、災難でしたね」

「そうだな、でも、その経験は大事なものだし、一生消えない傷だと思う。でも、俺は前を向くって決めたんだ。父さんとの約束でもあるから」

「そうですか・・・・・・、ところで、こうやってちゃんと会話するのって初めてじゃないですか?」

「そうだよな。俺、君とあんまり話したことないよな!!」

「いえ、会話ではなく注意ならかなりの数しましたけど?」

「えッ!?」

「まあ、無理もないですよ。去年の印象とかなりかけ離れてるので、私」

「それってどういうことですか?」

「は〜、しょうがないひとですね〜・・・・・・」

 そう言うと夜咲さんは、カバンから何かのケースを取り出した。

「っと、こうすればわかりますか?」

「あぁ!!去年の学級委員長だ!!」

 そこには、何かある度に俺を注意してきたThe学級委員長がいた。

 いたのだが、

「なんか、去年と印象が違う」

「はっきり言うね、君は。」

「だってこの間までは、三つ編みだったのに・・・・・・、人って髪だかけで印象変わるんですね〜」

「さっきから、君は失礼なんじゃないのかな!!」

 そう言うと、彼女はまた眼鏡をはずした。

「私、眼鏡からコンタクトに変えたの。」

「どうして?」

「理由はふたつあるけど、1つは教えない。」

「じゃあ当ててみるよ、俺が」

「君に当てられるかな?」

「ひとつは、体育で邪魔になるから」

「正解!!」

「もうひとつは、」

「もうひとつは?」

「好きな人から可愛いと思われたいから!!」

「ば、ばばばバカじゃないの君!!私は別に思われたいとかっ、ていうか好きな人とか特にいないしっ!!ああもうっ、なんですぐにそういうこと言うかな〜!!」

 あ、照れてる。これは確定だし、そして照れてる顔、超可愛い〜!!

「な、何よっ!!そんな目で見て、何かおかしいわけっ!!」

「いや、ただ可愛いなと思っただけだけど・・・・・・?」

「なんで君はすぐそういうこと言うかな〜・・・・・・」

「まぁ、俺は思ったことをすぐに言うタイプの人間だからな。」

「・・・・・・そんなふうに言われたら、余計勘違いしちゃうじゃん」

「えっ!?何か言った?」

「なんでもない!!あ、バス来た。」

「じゃあな、夜咲さん」

「さようなら、冴河くん。明日、遅刻しないでね?」

「なんなら、朝一番で来てやるよ。」

「それは頼もしい。じゃあね」

「おう、気をつけてな〜」

 俺は夜咲さんの乗ったバスを見送ってから数分後、俺の住んでいる方角のバスに乗り、家路についた。










_________________

(あとがき)

 皆さんこんにちは、汐風 波沙です。

 最近は本業の方が忙しく、書けなかったり、更新出来なかったりした日々が続きました。

 ですが、来週からは頑張って更新していきますので、今後とも、この作品を読んでいただけたらと思います!!

 最後になりましたが、今後ともこの作品、そして自分が書いている作品をよろしくお願いいたします。

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