第新話 俺の正月の過ごし方
‶ポンポーン″
俺は、年越しそばの準備をしていると、ロビーのインターホンが鳴った。
「はい。」
『お、やっぱりいた。裕太、部屋入れてくれないか?』
「あ、ちょっと待って。今ドア開ける。」
俺はロビーの自動ドアのカギを解除した。
そして、また年越しそばの準備を始めた。
‶ピンポーン″
今度は、部屋の前のインターホンが鳴った。
「鍵開いてるよ~」
「お邪魔しま~す。なんだ、裕太一人なんだ。」
「なんで一人じゃ悪いんだよ、氷雨。」
「いや、てっきり柊君も来ていると思っていたからさ。」
「あいつなら、もう少ししたら来ると思うぞ。春川も一緒に。」
「じゃあ、僕は結衣ちゃんを呼ぼうかな。」
「お前っ、結衣を呼んだら、マズいだろっ‼」
「私を呼んだら、どうマズいのか、説明してもらおうか、裕君。」
「あ、あの、坂本さん、なんで付き合っていたころの呼び方なの?」
「裕君の方こそ、私のこと坂本さんなんて呼ばないで、普通に結衣って呼んでよ。」
「ああ、わかったよ、結衣。」
「うん、それでいいの。で、なんで私が来たらマズいのかしら?説明してくれるのよね?」
「いや、その~、年越しそばが足りなくなるといいます、なんというか~……」
「なるほど、そういうことね。なら、心配しなくていいわよ。なぜなら、私はそこの馬鹿と違って、ちゃんと材料持ってきてるからっ‼」
「失礼なっ‼僕だって今年はちゃんと飲み物の準備してきたんだよっ‼」
「で、裕君、準備どこまで済んでるの?」
「一応、一通りは。」
「じゃあ、汁とかもしっかり準備してるんだね。」
「そうだな。」
「じゃあ、あとは、」
「待つだけだ。」
俺たちは、修と春川が来るまで待つことにした。
「ところで今更だけど、この部屋ってかなり広いよな。」
「そうね。ここに高校生が三人いて、こんなにスペース余ってるものね。」
「でも、あまり集まってほしくないな、俺としては。」
「あ、まさかヤラシイもの出しっぱなしにしてから?」
「いや、みんなが帰った後に、その……、少し、寂しくなって、しまうといいますか、まあ、そんな感じの理由だよ。」
「「……」」
「な、なんで黙り込むの?」
「いや、裕太の口からそんなことをきくのは初めてだからさ。」
「私でよかったら、求めてくれたらいつでも駆けつけるからっ‼」
「結衣の過剰な愛情表現は置いておいて、俺は、結構一人は好きだけど、誰かとすると、なんか安心するといいますか、そんな感じのことだよ。」
「そう、」
「なんだ。」
「「「……」」」
‶ピロンッ″
この沈黙を破ったのは、俺のスマホの通知音だった。
「あ、春川だ。」
『SAKURA🌸:もうすぐ着きますよ。』
『YUUTA: ああ、わかった。着いたらインターホンを押してく
れ。ロビーまで迎えに行くから。』
『SAKURA🌸: 了解しましたっ‼』
その後、何かのキャラクターの『了解ですっ‼』と敬礼をしているスタンプが送られてきた。
「そろそろ来るって。」
「じゃあ、僕はコップ出しておくよ。」
「じゃあ、私は、汁をあっためてくわ。」
「俺は、迎えに行く準備をしておくよ。」
「じゃあ、それぞれで、準備しますかっ‼」
「「オォーッ‼」」
こうして俺たちは、それぞれ準備を始めた。
それから数分後、ロビーのインターホンが鳴った。
『センパーイ、あなたの可愛い可愛い後輩ちゃんですよ~っ‼』
「俺には可愛い後輩はいるが、可愛い可愛い後輩はいない。」
『なっ⁉先輩が冷たい。そして、寒いので入れてください。』
「ああ、わかった。今から行くから待ってろ。」
『は~い、ちなみに、後ろに柊木会長がいますよ。』
「あ、ドア開けるから、ロビーに入っていてくれ。」
俺はロビーの自動ドアのロックをはずした。
「じゃあ、ちょっと行ってくるわ。」
「「は~い、行ってらっしゃーい。」」
「ああ、行ってきます。」
俺は玄関のドアを開けて、部屋を出た。
部屋からロビーまでは、大体30秒くらいかかる。
その理由は、エレベーターが長いので、なかなか時間がかかるのだ。
「あ、先輩、このマンション、いいところなんですね。」
「裕太、早く部屋に上げてくれ。そうしないと、俺が死んでしまいそうだ。」
「お前、そんな寒がりだったか?」
確かに、今日は朝から雪が積もっていて、かなり寒かったけど。
「ところで、お前、家賃払えているのか?」
「ああ、龍ケ原十四文さんが、この部屋使っていいと言ってくれていて、ちゃんと片付けとかはしているが、やはり、部屋が広いだけあって、使い勝手が悪いな。」
「外見からはそうは見えませんが、中ってそんなに広いんですか?」
「ああ、かなり広いぞ。たぶん入ったら驚くレベル。」
「じゃあ、早速、お邪魔しますね。」
「はいどうぞ。」
「お邪魔しま~すっ‼」
「お邪魔します。」
「お。来たね。」
「いらっしゃい、櫻ちゃん、柊木君。」
「「中広いっすね。」」
「二人とも同じこと言ってるぞ。」
「じゃあ、そろそろ始めちゃいますか?」
「あ、私達、お菓子とか結構持ってきましたよっ‼」
「俺は、実家にあった肉を持ってきた。」
「えっ⁉これ、A5ランクの肉じゃんっ‼」
「お前んち、金持ちだな。」
「うちは代々続く、柊木グループだからな。」
「それもそうか。」
「なら、これは、すき焼きに使うとして、じゃあ、始めようっ‼裕太、お前が音頭はとれよ。」
「そうだな。では皆さん、こともいろいろお疲れさまでしたっ‼乾杯っ‼」
「「「「乾杯っ‼」」」」
こうして俺たちの年末は始まった。
それからは、年末の特番を見ながら、今年のことを語り合ったり、ゲームをしたり、年越しそばを食べたり、すき焼きを食べたりして、俺たちは年を越した。
「なあ、初詣行くけど、どうする?」
「私少し寝たーい。」
「私は、裕太先輩が行くなら行きます。」
「じゃあ、僕は行こうかな。裕太は?」
「俺も行くよ。去年は行かなかったし今年くらいは行こうと思う。」
「じゃあ、留守番は、坂本だけか。」
「じゃあみんな、私の分まで言ってきてね~。」
「「「「行ってきますっ‼」」」」
「うん、行ってらっしゃ~い。」
こうして、俺たちは、初詣に出かけた。
「結構人いるな。」
「ここ、結構大きいところですからね。」
「みんな学業でいいのか?」
「はい、私、2年生ですけど、何があるかわからないので。」
「僕らは、今年は受験だからね。」
「そうだな。」
「志望校どこにするのか決めたか?」
「まだ。」
「同じく。」
「俺は国公立の大学に推薦が決まっているからな。」
「なんで?」
「生徒会長だから。」
「そうなんですね。」
「ああ、すごいだろ?」
「いえ、少しだけ実力なくて落第しないかなと思っています。」
「お前、ひどいな。」
「そんなもんだろ、後輩は。」
「そうだね。」
「ほら、早くしないと、もう次ですよ。」
「ああ、じゃあ、みんな、行こうか。」
「うん」
「おう」
「はい」
こうして俺たちは、それぞれの願いを二例二拍手一礼の作法に沿って祈った。
「ただいま~、て寝てるし。」
「起こさないようにね。」
「そうですよ、先輩。」
「俺、シャワー浴びたいから、借りてもいいか?」
「廊下を左だから。」
「ああ、ありがとう。」
そういうと、修は、浴室の方に向かっていった。
「先輩、私も寝るんで、10時になったら起こしてください。」
「ああ、わかった。」
「じゃあ、僕は奥の寝室を借りようかな。」
「そうだな。女の子の横に寝たら、危ないからな。」
「「じゃあ、おやすみなさ~い。」」
「ああ、おやすみ。」
二人はその後眠りについた。
「さて、俺は片付けしておくか。」
俺は部屋に散らばっている、お菓子の袋などを片付け、空になったペットボトルは、ラベルをはがし、ボトルは洗って、食器類は、すべて洗い、残りの飲み物は、冷蔵庫に直せるものだけ直した。
「お前はまだ寝ないのか?」
「あ、修、お前、もうシャワー浴び終わったのか?」
「ああ、助かったよ。タオル、使わせてもらったが、白い方は使ってよかったのか?」
「ああ、問題ない。洗濯するから別にどっちを使ってもらってもかまわないんだか。」
「ところで、お前って、やっぱりいい奴だな。」
「なんでだよ。」
「今、こうやってみんな寝てるのに片付けしててよ。」
「そんなの、この家の主だから、当然だよ。」
「まあいい。ところで、何か悩んでいるのか?」
「いや、明日普通に朝飯にするか、おせちにするかで悩んでいるんだが、どうしたらいい?」
「なんならうちから取り寄せようか?」
「そこまでしてもらうのは、さすがに悪いよ。」
「そうか。でも、普通に自由でいいんじゃないのか?」
「それもそうだな。」
「そういえば、言ってなかったな。誕生日おめでとう。」
「覚えててくれたのか?」
「もちろん生徒会役員の誕生日は把握しているからな。」
「うわ……、でも、ありがとな。」
「ああ、もちろんだが、プレゼントは後日来るから心配しなくていいぞ。」
「そのプレゼントが何なのかが気になりますけどね。」
「お前が17歳か。早いな。」
「これで同い年だろ?」
「俺は来月の28日だ。」
「俺の方が早かった。」
「当たり前だ。」
「フフッ」
「ハハッ」
俺たちは笑いあった。
「でも、今年もよろしくな、裕太。」
「こちらこそ、よろしく頼むよ、修。」
こうして俺の新しい年が始まった。
_____________________________
(あとがき)
明けましておめでとうございます、汐風 波沙です。
昨年は、自分の頑張りもあり、かなりPV数が上がりました。
読んでくださった方々には、感謝しかないですね。
さて、今回は、正月編をお送りしました。
どうでしたか?
感想はそれぞれだと思うので、近況ノートで返していただければと思っています。
今後とも、この作品そして、自分の書いている作品を今年もよろしくお願いします。
雨が降っていますが、私と結婚しませんか? 汐風 波沙 @groundriku141213
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