第30話 学校と弁当と人間関係②
「……ちょっ、何してんのさ、彩雪‼」
「え、何って、抱擁だけど?」
「何か文句ありますか?的な顔しないでもらえるかな?」
「どうして?私たち……」
「わあああああああっ⁉とりあえず、離れてもらえる?クラスの視線が殺意と嫉妬で埋め尽くされてるし、俺の背後に恐ろしいものを感じているから……」
「誰が恐ろしいのかな、冴河裕太君?」
「いえ、何も言っておりませんよ、坂本結衣さん……」
「じゃあ、とりあえず……」
唯は俺の胸倉を掴まれて、背面黒板に叩きつけられた。
「痛っ、ちょっと、落ち着きませんか、坂本さん。」
「この状況で落ち着けるのは、たぶん、あんたと氷雨くらいだよ。そんな話はどうでもいいから、さっさと説明しろやコラッ‼」
「あの、その辺にしておいた方がよろしいかと、私は思いますが?」
「はあ、何言ってんの?私のことはどうでもいいのよっ‼あなたの方こそ、こんな変態野郎から何も暴力、特に性的な方は受けてないの?」
「しいて言うなら、私の名前を呼び捨てくらいですかね。」
「そっか。なら冴河裕太、判決を言い渡す。」
「俺は無実だっ‼」
「有罪、男どもっ、このアホを一人一回ずつどんな暴言を言う権利を許す。」
「「「「「「「「「「よっしゃぁぁぁぁ‼」」」」」」」」」」
やばい、この刑は、さすがに精神が持たない。
「このラブコメ主人公っ‼」
「うぐっ‼この程度なら……」
「違う、モブっぽいラブコメ主人公だっ‼」
「それ暴言じゃ無くないっ⁉」
「うるさいっ、だまれっ‼」
「……」
「このっ、……クソ野郎ッ‼」
考えて絞り出したのがそれ⁉
「俺に坂本さんをよこせっ‼」
「それは私が遠慮しておくわ。」
「最低っ‼」
それが一番
「刺さるやつだってっ‼」
その後、30分くらい男子からの暴言?を受け、俺は少しというか、かなり精神がズタボロになった。
「は~ひどい目にあった。」
「それはお疲れ様とご愁傷様ね。」
「原因はお前にあるからな。」
「知らないわよそんなの。」
「ところで、バス全然来ねぇ~。暑すぎる……」
「それは仕方ないわよ。もう9月だけど、残暑は中旬くらいまで残るのよ、今年は。」
「今年の夏は確かに暑かった。」
俺の場合は、物理的な意味で。
「そうだったのですね。私は東北の方なので、こちらに来てからが暑かったですね。」
「おい、また口調戻ってるぞ。」
「嘘っ⁉油断してた……、まさか口調が戻ってしまうなんて……」
「まあ、ゆっくり直していこうな、お嬢様。」
「また、お嬢様って言った‼私起こるときは起こるんだからねっ‼本当っに、裕太君は、ひどい人ですねっ‼」
「さっき抱き着いてきたことへのお返し、いや、倍返しかな。」
「くっ、次はしくじらないようにしなくては。」
「でも、悔しそうな顔まで可愛いと、ますますいじめたくなるな。」
「なっ……、今、私のことを、可愛いと……」
「昨日から言ってるけど、気付いてなかった?」
「くっ、またしてもやられてしまいました。でも……」
「ちょっ⁉」
彩雪は、俺の顔を両手で挟み、自分の顔に近づけた。
「私は結構カッコいいと思うけどなぁ~……」
「えっ⁉」
「なんてねっ‼ドキドキした?」
「お、お前~‼」
「フフっ、仕返し成功だねっ‼」
「ヌグググ、まあいい。次はもっと恥ずかしがらせてやるからな。覚悟しておけよ。」
「……」
「どうした?まさか、俺の顔を近づけすぎて、自分にもブーメランしたのか?」
「そ、そうよっ、悪いっ‼」
「いや、恥じらってる顔もとても可愛い。」
「また私をからかってるっ‼ひどいよ、恥ずかしそうにしている子には優しくしないとなんだよっ‼」
「ごめんごめん、可愛い子を見るとついついいじめたくなるんだよ。」
「性格が腐ってますね。」
「よく言われるよ。」
「あ、バス来ました。」
「じゃあ、帰るか。」
こうして俺たちは、俺たちが住んでいるマンションのある隣町に向かうバスに乗り込んだ。
「ふ~、今日も危なげなく終わることができた。」
俺はシャワーを浴びて、ベッドの上で服を着ないまま、寝っ転がりながらそうつぶやいた。
「……以外にも、まさか結衣にはまだ執着心があるなんて思っていなかったよ。」
そりゃ、三年間も付き合ってたんだし、そのくらいあるだろうけど、あそこまでガチガチだと、
「さすがによくないな。」
でも、俺はもう大切な人を作る気はない。
大切な人がいたらその人が悲しい思いをするかもしれないから。
「……眠い、そろそろ服着て寝るか。」
まだ23時を回っていないが、眠い時は眠るのが、人間なのです。
俺は、服を着て、電気を消し、ベッドに倒れこむようにして眠りについた。
夢を見ていた。
その夢は、一人の女の子と、手を繋いで歩く帰り道だった。
「ねえ、私のこと好き?」
そんなこと聞かれなくても、
「ああ、愛してるよ。」
「フフっ、嬉しいっ‼私も、裕太のこと愛してるよ。」
「知ってる。そうでもないと、手を繋いで帰らないだろ?」
「それもそうね。じゃあ、そろそろ、お別れのチュー、しない?」
「ああ、しよう。」
夕日に照らされ、あたりが朧んでいく中で、俺と彼女はゆっくりと唇を重ねた。
ところで目が覚めた。
暑い。
エアコンを入れよう。
俺はいつもリモコンをおいている位置に手を伸ばすと、何か柔らかい感触がした。
モミモミ
この柔らかさ、そして、少し暖かさを感じる……
推測するに、これは女性の胸だ。
何故ここに女性の胸がある?
分からない。
とりあえず、起き上がろう。
俺は布団から出て、あたりを見回した。
「な、なんでここで寝てんだよ、彩雪っ‼」
_____________________________
(あとがき)
皆さんこんにちは、汐風 波沙です。
昨日ぶりですね。
今回も本編です。
冴河裕太が今後どのヒロインを選ぶの、そして、恋をするのか、
それは、今後考えていくとして、
今回は、彩雪がヒロインである第三章の中盤地点あたりに入り始めたところです。
今後の展開を考えるため、また番外編に逃げるかもしれませんが、今後も頑張って行こうと思います。
よかったら、作品のフォロー、レビュー、応援をいただけると、今後のモチベーションになるので、いただけると幸いです。
今後とも、この作品、そして、自分の書いている作品をよろしくお願いします。
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