第昔話 中学校の話②

 翌日、私が家を出ると、そこには、冴河君がいた。

「おはよう。家、結構近くだったんだね。」

「そ、そうだね……、なんでうちの前にいるの?」

「俺たち付き合ったんだろ?だから、一緒に登校しようと思ってさ……、ダメだった?」

「いっ、いやっ、別に何も悪くなんてないけど……」

 落ち着け、落ち着くんだ私‼こんなことで動揺しちゃいけない。私は動じない女。私はクールでかわいい女子中学生……、

 よし、大丈夫‼

「そうだよね。付き合ってるんだから、一緒に登校も下校もするよね。」

「そ、そうだよな。じゃあ、行こうぜっ‼」

「あ、でもさ、付き合ってるんなら、手、繋いだりするよね……。」

「なっ⁉」

 フフッ、動揺して、顔真っ赤にしてる~‼

 どうするのかな?手、繋ぐのかな?

「……じゃあ、手、繋ぐか?」

 そう言いながら、右手を私に差し出した。

「えっ、あ、うん、繋ごうか……」

 私はその右手に、私の左手を重ね、握った。

「「……」」

 ダメだ、気まずいっ‼

 何か話さなきゃっ、ダメだよね……

「……そういやさ、俺たち、席、前後だし、昼飯、一緒に食わねぇ~か?」

「えっ、……ていうか、付き合ってるんだし、一緒に食べるのが普通なんじゃないの?」

「えっ、そう、なの?」

「普通、そうでしょ?」

「そうなんだ……」

「うん……」

「「……」」

 ダメだ、会話が続かないっ‼

 どうしようっ、どうしようっ‼

「おっスー、裕太……、悪い、邪魔したわ~」

「待ってくれ(ください)、氷雨(藍澤君)っ‼」

「ごゆっくり~」

 藍澤君は、私たちを置いて、走って行ってしまった。

「クソっ‼あいつ、学校で広めるつもりだなっ‼」

「ところで、藍澤君とは、いつから仲がいいの?」

「え、あ、あいつとは、ずっと一緒なんだよ。」

「どのくらい?」

「幼稚園の時から。その頃はそこまで仲いいわけじゃなかったんだけど、小学校でずっと同じクラスだったんだ。」

「へ~、そこで仲良くなったんだ。」

「いや、仲良くなったのは、5年生くらいの時かな。」

「何かあったの?」

「そうだね。当時、学年全体でいじめがあったんだ。」

「もしかして、いじめられてたのって……」

「ああ、お察しの通りじゃないかもしれないが、氷雨だ。氷雨って、イケメンだろ?だから、結構敵が多かったんだ。」

「そうだったんだ……」

「ある日、俺はいつもより早く登校した。そしたらさ、いじめっ子たちが氷雨の上履きを隠してたんだ。」

「陰湿だね。」

「だろ。だから、俺は言ってやったんだ。『誰しも何かコンプレックスを抱えている。だから、そんな無駄なことは止めろっ‼どうしても止めないと言うなら、お前らを警察に突き出す。証拠もあるし、少年院行きは確定だろうな。』ってさ。」

「カッコつけすぎ。でも、冴河君は、いい人だってことは分かったよ。」

「女子のいい人ってどうでもいい人を示すんじゃなかったっけ?それだと、かなりへこむんだよなぁ~……」

「大丈夫、私のいい人は、品減として強く、とても優しい人って意味だからっ‼」

「なんか、面と向かって言われると、恥ずかしいな……」

「……っ、あ、ふぅ……」

 そんなことを言われると、こっちだって恥ずかしくなるに決まってるじゃん。

「と、とにかく、そろそろ、手つなぐのやめない?学校着いちゃうし……」

「そ、そうだな。じゃあ……」

 私たちは手を離した。

「あのさ、他のやつには内緒っていう形じゃダメか?」

「どうして?まだ昨日の今日で付き合いました~じゃおかしいじゃん?」

「それもそうですね……、分かりました。私は物分かりのいい女だと言う自覚があるので、浮気しないという条件、忘れないでね?」

 私はズルいのを分かっていて、上目遣いで言った。

「お、おう、わかった。善処するよ……」

 あ、また赤くなってる。今度は耳まで真っ赤にして……

 私は、初めてできた彼氏の可愛さに、とてもほれぼれしていたことは、内緒である。











“キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン”

 4時間目の終了のチャイムがない、昼食の時間になった。

 中学校までは給食と言う固定概念があるが、この学校は、弁当持参の中学校であった。

 その為、今朝はいつもより早く起きて、弁当の準備をしてきて、少し眠たい。

 そして、何よりも、この中学校は、昼食は敷地内であれば、どこで食べてもOKと言う学校だった。

「なあ結衣、飯食おうぜ。」

「ひゃっ⁉」

 私と冴河君の席は、出席番号が13番と14番と言う連番なので、耳元で囁かれた。

「は、どうした?」

「いや、あの、その、耳元で何か言われるのが弱いと言うかその……ていうよりっ‼今、私の名前、呼び捨てしたよね。」

「ああ、当たり前だろ、俺たち付き合ってるんだし。」

「それはそうだけど、だから、なるべく秘密にしてっていてるじゃんっ‼」

「ああ、そうだったな。じゃあ、お~い、氷雨、あそこに飯食いに行こうぜ‼」

「ああ、わかってるよ。今行くよ~、裕太。」

「ちょっと‼なんで藍澤君まで一緒に食べる事になってるのよ?私許可してないっ‼」

「ならお前も誰か呼べばいいじゃないか。」

 なるほど、そういう事ね。

「じゃあ、私は、あの子にするわ。」

 私は窓際で本を読んでいる女の子を指さした。

「いいんじゃない?誘って来いよ。待っててやるからさっ‼」

「言われなくても分かってるわよっ‼」

 私は彼女のもとに歩み寄った。

「こんにちは。あなた名前何て言うの?」

「えっ⁉」

 彼女はびっくりしたような表情で私の顔を見上げた。

 なるほど、眼鏡をかけている清べせっかくの美人が台無しね。

「ねえ、あなた、名前、何ていうの?」

「私に関わらない方が良いですよ。」

「どうして?」

「あなたもいじめの標的になるから。」

「そんなの知らない。」

「えっ⁉」

「私、そんなこと気にして友達作るような人間にはなりたくないの。あと、いじめをしている人って、自分にないものが羨ましくてやってるだけなのよ。だから、あなたは、もっと胸を張って生きていっていいのっ‼」

「……っ‼私にそんな事言ってくれる人が、まだ、居た、何て、私……」

「ちょっと、何泣いてるのよ~。え、私何か悪いことでも言った?それなら謝るけど……」

「ううん、嬉しくて、感極まってしまったの。もう大丈夫。名前ね、庵御おんみ 加那かなです。よろしくねっ、えっと……」

「坂本結衣。私の事は、結衣と呼んでいいよ。よろしくね、加那ちゃんっ⁉」

「こちらこそっ、よろしくお願いしますね、結衣さんっ‼」

「なんか固いね。」

「そうでしょうか?」

「まあ、いいや。じゃあ、ご飯食べに行こうよ。お弁当持って~」

「あの、どこに行くんですかぁぁぁ⁉」

「ごめん裕太君、藍澤君。お待たせしました。」

「まあいいよ。で、そちらは?」

「私の親友になってくれる加那ちゃん。あ、藍澤君、手出したら、ただじゃ済ませないからっ‼」

「裕太には何も言わないんだね……。」

「もちろん、本人が分かってるから。」

「……」

「何で無言なのよっ‼」

「いや、何でもない。じゃあ行くか。」

 こうして、私たちは、昼食を取るため、別の場所に向かった。











「うわぁ~、こんな場所あったんだぁ~」

「本当に誰もいなし、日当たりも良好、雨風も防げる、つまり、穴場スポットだよ。」

「じゃあ、食うとするか。」

「そうだね。」

「じゃあ、失礼して……」

 私たちは対面になるように向かい合って座った。

 席順は、私、その左に裕太君、その体面に藍澤君、そして加那ちゃんの順である。

「あ、あのっ、皆さんは、小学校時代から仲が良かったのですか?」

「いや、俺と氷雨は一緒だけど、結衣は違う。」

「加那ちゃんはさ、藍澤君たちとは小学校違うの?」

「はい、私は別の小学校からですよ。この学校は、東小と北小の校区の境目にある中学校ですし。」

「そうだったんだ……、私、この町について何も知らないんだね。」

「と言うことは、結衣さんは、この町で育たなかったんですか?」

「そうだね~、前の小学校で色々あってさ、あと、親の仕事の関係でこの町に来たって感じかな。」

「そうだったんですね……、結衣さん、私に出来ることがあれば何でも言ってください。」

「ありがとう、気持ちだけで十分だよ。」

「じゃあ、先に解決する問題は、もぐもぐ、庵御さんの問題からでいいか?」

「そうね、そうしましょう。」

「えっ、皆さん、解決してくれるんですか?」

「もちろん、親友になるんだからっ‼」

「そうだね、友達を助けるのは、僕たちのポリシーだからね。」

「皆さん……、ありがとうございますっ‼」

「いいって、まだ解決してないしな。」

「そうだよっ‼だからさ、ねえ、加那ちゃん、どんなことをされたか教えて。」

「分かりました。私が小学校時代でされていたいじめは、毎日、をすることと、それを理由に理不尽な暴力を女子から受けると言うものでした。」

「男子の相手って、まさか……」

複数人によるレイプ⁉

「いえ、皆さんの思うような行為まで入っていませんですが、男子から胸を揉まれたり、その、アレを舐めるように強要されたり、時には、無理やり口の中に突っ込まれたこともありました。でも、それよりもつらかったのは、女子からのいじめです。どうやら、私が男子からいじめを受けていた時たまたまクラスのリーダー格の女子が思いを寄せていた男の子が、助けに入ってくれて、それが原因で学年全体で私をいじめ始めました。」

「そんな理不尽な……」

「その後、私は家にこもるようになり、そして、中学になりました。」

「そうだったんだ。辛かったよね……」

私は加那ちゃんを強く抱きしめました。

「結衣、さん……、ありがとうございます。」

彼女は、涙を流した。

「これは予想していたよりもひどいな、どうするの、裕太?」

「俺は、その子から助けてほしいと言われたら助けるが、今回のは、確実にSOSを出しても、見て見ぬふりの連続になっているよだ。これは、どうしようもないから、助ける以外に選択肢あるか?」

「いや、裕太君たちは、私を手伝ってくれるだけでいいよ。私は親友の為になら、神をも殺す覚悟があるからっ‼」

このとき私は決意した。悲しんでいる子がいるなら、私は、彼女たちを救える人間になろうと。





_____________________________

(あとがき)

皆さんこんばんわ、汐風 波沙です。

今回も、番外編です。

坂本結衣ちゃんは、本編では、裕太の親友役で出てきますが、この番外編では、主人公の立場で、この物語は結衣ちゃんの目線で描いています。

本編も、もう少しアイデアを温めてから書き始めるので、心配しないでください‼

最後に、今後ともこの作品、そして自分の書いている作品をよろしくお願いします。

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