第2.5話 翌日の先輩

「はぁ~、昨日は緊張した。」

私は今、バスの中にいる。

なぜバスの中にいるのかと言うと、学校に向かうためである。

「昨日は私、少し大胆過ぎたかなぁ……」

はあ~‼恥ずかしい‼やっぱり今思い出すと、恥ずかしすぎて、自殺しそう……

「……でも、裕太君もまんざらではなさそうな表情だったけど……」

そう、ちゃんと至近距離じゃないと分からないけど、顔立ちは結構整ってるし、

「何より、優しい所が、いいと思う……」

わぁ~‼何言ってるんだ私‼こんなんじゃだめだね。

「よし、そろそろバス停に着くし、気合い入れておかないと‼」

私は今、この路線の人が少ないことに感謝している。まずもって私以外いないんだけどねっ‼

「よしっ‼今日も一日頑張るぞっ‼」

お~‼

「終点、百日草ジニア高校前」

どうやら着いたようだ。

「運転手さんっ‼」

「どうしたんだい雪乃ちゃん?」

「今日も運転、頑張ってくださいねっ‼」

「若い子にそんな事言われると、頑張るしかないねぇ~。よしっ‼今日も頑張ります‼」

「じゃあ、行ってきます。」

「いってらっしゃ~い」

私は運転手さんから見送られ、バスを降りた。








バスを降りると、そこは、昨日、私と裕太君のキスしたバス停でした。

まあ、そうですよね。

だっていつも降りる場所はそこなのですから。

どうしましょう。

「昨日の事がフラッシュバックし、ちょっとドキドキする……」

ダメ、ダメ‼そんな事でドキドキしてたらダメよ。

「私は常に裕太君の理想の先輩でいなくちゃいけないんだから。」

でも、それってちょっとキツイかも知れない……。

私は歩きだした。あまり長居すると、遅刻してしまうからである。

私は、校門の方へ歩いて行った。

「あ、ゆっきーじゃん、おはよっ‼」

「ヒャッ‼出会い頭に胸揉むのやめてって言ってるじゃん、リン‼」

「ダ~メ‼これは私の毎朝の日課で三年間続けてるのっ‼だから~、ゆっきーの胸は、私だけのもの~‼」

「ひぅっ‼」

この現在進行形で私にセクハラしているのは、山沢夏鈴やまさわかりん

ちなみに、彼女は、自分ではBだと言っているが、Aカップである。 

「何で今日は、何時もより強いのっ‼」

私はリンを振り払った。

「だって~、ゆっきーから、男の臭いがしたんだもんっ‼」

「はい?」

「その辺の女の子には分からないかもだけど、私にはわかるのよ。昨日、男子の部屋、しかも年下の2年生の部屋に行ったでしょう?」

「え……、行ってない‼行ったかもしれないけど、行ってないっ‼」

「いや、今行った事の自白いただきました。」

「もうっ‼やっぱり、リンとは絶交っ‼」

「ごめん、ごめん。」

「早くしないと遅れますよ山沢さん。」

「もうすでに他人行儀⁉本当にごめんなさい‼そんなつもりなかったんだよ~、許してぇ~」

「フフッ、ごめんね、リン。ちょっと意地悪したくなってね。」

「も~っ‼」

私たちは、そのまま仲良く登校した。











「あいつが……でさ~、ねえ、ゆっきー聞いてる?」

「えっ、あ、ごめん。それで何だっけ?」

「ちょっと今日おかしいよ。何かあったの。さっきの時間もずっと心ここに有らずだったし。」

「そう、なの?」

どうやら、3時限目が終わりまで、私は、何も微動だにしてなかったらしい。

「あ、そろそろ時間だ。何か相談したくなったら、私を頼ってね。親友なんだから。」

「……うん。ありがとね、リン。」

「そんなのいいって。あ、ちゃんと授業は受けてね。評定落ち着か茂だから。」

「うん、わかったじゃあ、またあとでね。」

それからの授業もなぜか、集中することができなかった。













「ただいま~、て誰もいないんだけどね。」

私は、誰もいない廊下を抜け、リビングに向かった。

「あ、お父さん。居たなら電気くらい……」

「なあ、雪乃。今回の再婚どう思う?」

「え……」

「素直な意見でいい。お前が嫌なら……」

「嫌じゃないよ。お父さんが決めた人なんだもん。絶対いい人だよ。」

この言葉は嘘。私は、あの人の事をよく知らない。正直言うと、どうでもいい。

「そうか。なら質問を変えよう。裕太君はどう思う?」

「え……、そ、それは、どどど、どういう意味なの?」

「やっぱりそうか。お前、完璧主義者のくせに、わかりやすもんな。そこは、お前の母さんに似ているな。」

「でも、私の頑固なところは、お父さんに似たんだよ。」

「そうだな。で、どうなんだ。裕太君。」

「うん……正直言うと、彼の事で、頭の中が一杯なの。」

「そうか。なら、これは再婚してしまうしかない。」

「どうして⁉」

「まだよくわからん義息子に、俺の大事な娘はやらん。」

「なら、私が裕太君を貰ってくるっ‼」

「それもダメだ。私が許さない。」

「やっぱりお父さんは、親バカね。」

「親バカで何が悪い‼」

お父さんは、胸を張って言った。

「フフッ」

「ハハッ」

私たちはいつの間にか笑い合っていた。

やはり親子なのだと言うことを実感した。

「いいよ、再婚して。私たちは別の方法で結婚するから。」

「そうしてくれ。」

「うんっ‼」

私は決意した。

お父さん達の再婚は、最高のものにしようという事を。

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