第3話 雨のバス停と僕らの時間 (金曜日)

翌日。その日も雨だった。傘は持ってきていたため、バス停までは、濡れることなく、たどり着いた。

「今日も、早いですね。そんなにホームルーム短いんですか。」

「いや、3年生は、意外と暇だから、早く終わるの。」

と少し微笑みながら彼女は、答えた。

「ところで、私とやる気になった?それとも結婚?いや、先に、妊娠させてくれるの?」

「あんたほんとに何言っちゃてってるんですか。やる気にはなりませんし、妊娠させる気もありません。でも、先輩が、いいなら、結婚を前提に、付き合いたいと思っています。かなり本気でです。」

「え、本当にいいの?本当に私なんかでいいの?後悔しない?まさか、私で散々遊んだあげくに捨てるとか言わないよね。そういうのも、気持ちよさ……。」

この人まさか、超ドMなんじゃないのか?俺そんな人と付き合っていいのか?

「先輩ってもしかしてMですか?」

「な、何故分かってしまったの?」

「質問を質問で返さないでください。」

「わかったわ。私は、超が付くほどドMよ。で、何故分かったの?」

「先輩の発言を聞いていたら分かりますよ。今度ドM発言したら、知りませんから。あと、この間の返事、ちゃんと言いに来ました。」

「本当に!?ちょっと待って、深呼吸させて。」

と彼女は、深く息を吸って、ゆっくりと吐き出した。

「じゃあ、言って、いいよ。」

「はい。それでは、……」

僕は、そうつぶやくと、少し頬を赤く染めている彼女の眼をまっすぐ見て、

「僕はこの世界でずっと一緒にいたいと思う人は、雨沢雪乃さん、あなただけです」

僕は、一言言った。

「そして、楽しい時は一緒に楽しみ、悲しい時はそばで支えて、泣いたり、笑ったり、時には喧嘩もするかもだけど、僕はずっと、あなたと一緒に居たいです。だから、僕と結婚を前提に付き合って貰えないでしょうか?」

「……いよ」

「えっ?」

「ずるい、そんな事言われたら、もう、断ったりできないじゃん……」

と彼女は言いながら。僕の頬に手を当ててきた。

僕は、そのまま、顔を上げた。

彼女の頬を、一筋の雫が流れ落ちた。

「返事、するね?

私も、世界で一緒にいたい人は、1人だけ、その人は、少し意地悪で、でも、とても優しい人。私はそんなあなたが、大好きです。だから、今、とても幸せです。不束者ですが、よろしくお願いします」

といった。そして僕は咄嗟に彼女を抱きしめた。

「ありがとう、ございます。先輩に気持ちが届いて、とても嬉しくて、嬉しくて、震えが止まらないです。本当に一生大事にします。こちらこそよろしくお願いします」

と、僕は、全力で抱きしめながら答えた。

「やっぱり抱きしめるのは、ズルだよ……」

「先輩の方こそ、涙は、卑怯です。」

僕らは、抱きしめあいながら、

「よろしくね、私の大好きな騎士ナイトさん。」

「こちらこそ。かなりMっ気の強いお姫様。」

僕らは、笑いながら、お互いに、言い合った。

「ところで、私そんなにMなのかな?」

と聞いてきた。

「相当ですよ。攻められるのが好みなんですか、先輩。やっぱり結婚やめようかな。」

「ひどい、結婚は、やめないで。攻められるのは、かなり好きかもしれないけど。あと、先輩っていうのもダメ。名字も。」

「じゃあ、何と呼べばいいんですか。」

というと、

「名前で呼んでよ、私の。」

と、さっきよりも頬を赤くして彼女は、言った。

「わかりました、雪乃。これからよろしく。」

「不束者ですが、こちらこそ、よろしくお願いします。」

僕らの物語は、やっと始まりを迎えることができた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る