第三章

第25話 一人暮らしと始まりの予感

「……っと、これで最後か?」

「すまないな、部活休みの日に手伝ってもらって。」

「親友なんだから当たり前だろ?」

「そう、だよな……」

「おう‼」

「ちょっと~、二人でいい感じにならないでもらえる~‼私もいるんだけど。」

「ああ、結衣も、ありがとな。」

「そんなの、ウチら3人の中なんだから、特に、氷雨には、もっと迷惑かけても、そいつの彼女に何も言われないわよ。」

「じゃあ、何かあったらまた頼むわ‼ 」

「津、次はほどほどに頼むよ、裕太。」

「もちろん力仕事だけどな。」

「いいじゃない‼筋トレにもなるんだし、ちょうどいいじゃん。ねえ、これから家電買いに行こうよ。」

「いや、それは、今度にするよ。二人とも今日はありがとう。」

「まあ、今後何かあるたびここに集まることになりそうだし、それに、あんたが心配だし、私たちも、これで安心できたかも。」

「そうだよ。僕たちは裕太が心配なんだよ。最近、結構性格が昔戻ってきてるから、本当っ心配なんだよ。」

「そうか……、今後はなるべく落ち着いて行動するようにするよ。」

「おう、そうしてくれよ‼」

「うん、それがいいと思う。」

「わかった。」

「じゃあ、俺たちは帰るよ。」

「ああ、気をつけてな。」

「そっちこそ、いきなり女の子連れ込んだりしないでよ‼」

「ばっ、そんな相手、いるわけないだろ‼」

「ははは、ねえ、顔真っ赤だよ‼」

「おい‼俺をからかうな‼」

「まあ、時にはいいんじゃないか。お前がからかわれるのも。」

「まあ、1年に何回かならな。」

「じゃあな、親友。」

「ああ。また、来週からの学校で。」

「じゃあね。ちゃんと健康考えて食事するんだよ。」

「お前は俺の母親か‼でも、考えてみるよ。」

「うん‼じゃあね。」

「おう‼」

‶ガチャン″

玄関が閉まり、この部屋には、俺しかいないということを、改めて実感した。

「さてと、着替えてどっかに飯でも食いに行くかな~」

俺は服をジャージから、パーカーとジーンズに着替え、部屋の鍵と財布と、スマホを持った。

「一人暮らしか……やっぱり、龍ケ原家にお世話になればよかったかな……なんて、今更考えてもしょうがない。これから俺は、ここで生きていく。そう決めたのは俺だ。」

そして、俺は靴を履き、玄関のドアを開けた。







部屋を出て、鍵を閉め、ロビーを抜け、マンションの外に出た。外には、俺の頼んでいた引っ越し業者と別の会社のトラックがあった。

「俺のほかにも入居者がいるんだな……」

そう思いながら、俺は近くにある飲食店を調べながら、歩き始めた。









調べた結果、俺は近くにあったカフェに入った。

外観から、とてもいい店だと思っていたけど、まさに、カフェって店だった。

「いらっしゃいませ~、お好きな席へどうぞ~」

俺は突き当りの窓側の席に座った。

「注文が決まり次第及びくださ~い」

店員さんは水をおいて、どこかに行ってしまった。

メニューを見ると、コーヒーの種類、紅茶やハーブティーの種類が、所狭しと並んでいた。

そして、ひときわ目立ったのは、ランチセットと、ボリューミーセットだった。

男なら、ボリューミーセットだが、あまり食べない俺からすると、ランチセットかな~と思った。

そして、俺は決めた。

「「すみません、ランチセット(ボリューミーセット)一つお願いします。」」

「えっと……お客様の注文が、ボリューミーセットでよろしいでしょうか?」

「はい?」

店員は、俺の注文を聞いていなかったようだ。

「「だから、俺は(私は)、ランチセット(ボリューミーセット)だと言ってますよね‼」」

「えっと……」

「あ……」

俺は気付いた。俺のほかにも注文をしている客がいて、そいつの声と俺の声がかぶって、メニューが変わっていたのだった。

「すみません、もう一でお願いします。」

「はい、ランチセットをお願いします。」

「かしこまりました。ランチセットおひとつですね。少々お待ちください。」

俺はなんとか、ランチセットを注文できた。

「「ところで、さっきの奴、なんで俺(私)にかぶせてきたんだろう(のでしょうか)?」」

俺はまた正面を向いた。その時、出会ってしまった。

「「……」」

俺は言葉を失った。胸のサイズや、髪型は少し違うが、あの人にそっくりな人を見つけてしまった。そして、何より声が全く一緒だった。

「あの……何か御用ですか?」

「あっ、いや、特に何もないんですけど……よく、食べるんですね。」

「と、当然よ‼このくらい食べないと、活動できないですから。ところで、あなた、全然食べないんですね。」

「俺小食ですから。」

「そうなんですね。まあいいわ。」

「お待たせしました。ランチセットです。」

「ありがとうございます。」

「ごゆっくりどうぞ~」

うん、フレンチトーストがとてもおいしそうだ。

「おまたせしました~ボリューミーセットです。」

「ありがとうございます。」

「ごゆっくりどうぞ~」

彼女の方も、今料理が来たようだ。

「……まずは、」

俺はスープをひとくちすすり、、フレンチトーストを食べた。

「「うまい(おいしい)‼」」

また被った。

「……」

「……あぅ」

どうやら、彼女も今回ばかりは気付いたようだ。

「ところで、まだお名前、伺ってませんでしたね?」

「あ、俺の名前ですか?俺は、冴河裕太です」

「……君が、そう、裕太君というのね。とても素敵な名前ね。」

「ありがとうございます。あ、あなたの名前は‼」

「……秘密、私、こういう場所で自分の個人情報言いふらすような人間じゃないもの。」

「そうですか。じゃあ、俺は行きます。」

「もう食べたの?」

「はい、とてもおいしかったですよ。フレンチトースト。」

「そう、ですか。じゃあ、また、何か縁がありましたら。」

「はい、さようなら。」

俺は、店を出た。まあ、世界にはその人に似た人が3人いるっていうし、そんなものだろう。

「さて、帰って荷物の開封作業するかぁ‼」

俺は、新しい帰路についた。







_____________________________

(あとがき)

こんにちは、汐風 波沙です。

今回から、第3章に入ります。ここから、また青春が始まりそうな予感がします。

よかったら、作品のフォロー、感想、レビュー、応援をいただけると幸いです。

今後とも、この作品と、自分の書いている作品をよろしくお願いします。

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