第24話 俺の夏休み 後半戦④

結局日が暮れるまで、俺たちは海で遊びまくり、日が落ちる前に龍ケ原組の管理しているキャンプ場にやってきた。

「裕太君、今日は、A5ランクの和牛を用意しておいたよ。これから頑張っていく君のために。」

「あ、ありがとうございます。でも、本当に食べていいんですか、俺、龍ケ原家の住人じゃないのに。」

「もちろんじゃとも。なんせ今日は貴様が主役なのじゃからな。」

「十四文さん……。では、お言葉に甘えて、いただきます‼」

「おうおう、若いものはたくさん食え‼大人はたくさん飲め‼今日は、新しいワシの息子である、裕太の激励会なのだからな‼」

「じゃあ、今日の音頭は、裕太君、君にお願いしよう。」

「では、皆さんこれまでありがとうございました。今後は、自分で頑張っていこうと思っています。」

「よっ、若旦那‼」

どうやら、もう酔ってるようだ。

「では、皆さん、グラスをお持ちください。私、冴河裕太の今後の成長を祝って、」

俺は一度息を大きく吸った。

「乾杯‼」

「「「乾杯‼」」」

この後も、最高級のお肉に、おいしい食べ物と、2時間近く楽しむことができた。








「もう、車乗れる人数に達したから、愛莉、裕太君、歩いて帰ってきてくれないか?」

「りょーかい。」

「わかりました。」

というわけで、俺たちは、龍ケ原邸までの約2キロの距離を歩き始めた。

「……」

やばい、今朝激しく泣きあった後だから、話すことがない。

「……ねぇ、本当に行くの?」

話すことがなかった俺からすると、最高の助け舟だった。

「ああ、行くよ。ここにいつまでもお世話になるわけには行けないからな。」

「……そう、なんだ。でも、私の旦那さんになってくれれば、ここでずっと一緒に暮らすことができるんだから……」

「えっ⁉」

愛莉の顔が、約1ミリくらいの位置にある。

「私と、結婚しよう?」

もう、キスする勢いで言い放った。

「ごめん、それは、できない。」

「どうして‼」

「え、愛莉?」

「どしていつも選ばれるのは、雪乃お姉ちゃんなの‼」

「……」

「ねぇ、黙ってないで答えてよ‼なんでいつも、お姉ちゃんばっかり選ばれるのよ‼ねぇ……、教えてよぉぉぉ……、ねぇ、ねぇってば‼」

「……愛莉‼」

俺は、愛莉を抱きしめた。

「そうやって抱きしめて、誤魔化さないで‼」

「お前は、選ばれなかったわけじゃない。俺が、選ばなかったんだ。」

「……えっ⁉」

「俺は、お前のいいところ、兄弟思いなところを知っている。」

「……」

「俺は、お前がちょっと天然で可愛いことを知っている。」

「……ちょっと何を」

「もし、雪野と出会っていなかったら、お前を選んでたかもしれない」

「なら、私で……」

「それがだめなんだ‼」

「どう、して……」

「俺は、あの人と、約束したんだ。」

あの日から俺は、『必ず、また、二人で、最高の恋をしよう。』そう、思い続けてきた。

「だから、俺は、君と恋人にもなれないし、結婚もできない。ごめん、それが、俺の答えだ。」

「そっか……私、また負けたんだ……やっぱり、お姉ちゃんは、すごいなぁ。」

「いや、お前に魅力がないわけじゃない。むしろ、お前を断るのは、とてももったいないと思っているよ。」

「……どうしてだろう、なぜか、そんな風に言われても、うれしい自分がいる。」

「そうか、よかったな。」

「うん、元気出た。」

愛莉は、少し前に出た。

「私、進路決めた。」

「どこにするんだ?」

「裕太と同じ高校にする。」

「そうか……は、い、今なんて言った?」

「えっ、だから、裕太と同じ高校にするのっ‼あ、これもう決定事項だから。」

マジか~

これで、俺の高校生活が、終わる。確実に終わる。

「でも、うちの高校、公立の普通の高校だぞ?」

「いいのっ‼そしたら……」

愛莉は、俺の耳元まで来て、

「裕太を落としに行けるっていうことでしょ?」

「なっ⁉」

「フフッ、楽しみにしておいてね。絶対落として見せるからっ‼」

ああ、心から、その時を楽しみにしておこう。

これは、俺の中でだけつぶやいておこう。










翌朝

「忘れ物ない?」

「はい。今までありがとうございました。」

「またねっ、お兄ちゃん。」

「おう、紘も、元気でな。」

「次会うときは、お兄ちゃんくらいのイケメンになっておくっ‼」

「おう、期待してるよ。」

「あの子たちは、本当にお見送り良かったのかしら?」

まあ、あの二人なら、大丈夫だろう。

「じゃあ、そろそろ行きます。」

「体には、気を付けるのよ。」

「はい、ありがとうございました。」

こうして、俺は、新居に向かうために、駅を目指した。











_____________________________________

(あとがき)

こんにちは、汐風 波沙です。

今回は、夏休み辺の最終回になります。

つまり、第2章完結です。

今後の方針は、こちらは一時的に休憩する形になり、二週に一回くらいの更新になります。もしかしたら変わるかもですけど……

今後とも、私、汐風 波沙の作品をよろしくお願いします。

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