第22話 俺の夏休み 後半戦②
「おーい」
「……」
「ねえ、裕太さん」
「……」
「無視すんなっ‼」
「痛って‼なにすんだよ夏那‼」
「だって……、無視するから……、寂しかったから」
菜にその可愛い反応、妹にしたい。
「なんていうのは嘘で―。てへへ♡」
「なんだ、嘘かよ。」
「でも寂しかったのは本当だよ。最近、お姉ちゃんに夢中で、私を無視してたから、その罰。」
「罰が重いような気がするんだが……。」
まあ、愛莉にばかり、気を向けていたのは事実だしな。
「今日は、今までの分遊んでやるから、存分に楽しめよ‼」
「うん‼」
やっぱり素直な子は、可愛いな。
「ところで、みんなは?」
「もう海に入ってます。」
早いなー。大の大人がめちゃくちゃ騒いでるよ。
「ねえ、お兄ちゃん、私たちも行こう‼」
「ああ、って今お兄ちゃんって……」
「はーやーく―‼」
「うおわっ⁉」
俺は、腕を引っ張られながら連れていかれた。
「来るのが遅い。」
「ごめん,愛莉」
「どうせ、どこに行ったか分からなくなってたんでしょ。」
「はい、正解です。」
「まあ、いいか。ところでさ、遊んでこないの?」
「いいのか?」
「どうして?」
「質問を質問で返してくるな。」
「ごめん、ごめん。で、どうしてそんなこと聞くの?」
「いや、……一人でここで待ってて寂しくないのかな~と思ってさ。」
「それなら心配いらないわ。私、日光を浴びすぎちゃいけないの。だから、この間買った水着は見せるためのものになっちゃってるってわけ。」
「そうか。なら……」
俺は、ウウェストポーチから防水使用のスマホを取り出し、財布と、それ以外を愛莉に渡した
「ちょっとの間、預けておく。財布から、金、取るなよ‼」
「取らないわよ‼それに、私の方が持ってるから‼て、もうあそこまで行ってる……。」
そんなことを気にせず、裕太は浅瀬から、最も遠い浮島まで泳いで行っていた。
「フー、随分遠くまで泳いできたな。」
「おや、裕太君もここまで来たのかい?」
「あ、吹雪さんもいたんですね。」
「私もいる‼」
「あ、十四文さんもいたんですね。」
「ねえ、裕太君。」
「なんでしょう、吹雪さん」
「これは龍ケ原家の男の掟なんだけど、ここまで来たら、帰りは競争して帰らなきゃいけないんだよ。」
「な、なんだって!? 」
「そうじゃぞ。ここまで来たんなら、逃げるなんてことを男ならしないよな?」
「そうだよ。男なら逃げないよね?」
「……」
「沈黙は良くないなぁ~」
「どうする吹雪。切り落としておくか。」
何を?
「そうですね~、切り落としておきましょうか。」
わかったぞ、あれだ。
「わかりました‼やればいいんでしょ、やれば‼」
「よく言った。それでこそ男だ‼」
「よし、君のコールで始めよう。」
「わかりましたよ。では、位置について、……」
俺たちは、着水の構えをした。
「よ~い、スタート‼」
俺たちの戦いが始まった。
最初は、前に、吹雪さん、十四文さんがいたが、だんだん俺が追いついたのか、ほぼ横並び一直線になった。
「うわぉぉぉぉ‼」
「まだ若いのにはまけぇぇぇぇぇん!」
「俺は絶対に、勝つ‼」
そして、ゴールの浅瀬までは、あと10メートル。ここで飛び出したのは、俺だった。
「「「うをぉぉぉぉぉぉ‼」」」
俺たちは、最後まで全力を尽くした。
「かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼げぼげぼげぼ……」
「父さん、マズい‼裕太君が、溺れかけている」
「救出するぞ‼」
やばい、意識が……
そこからの意識は、たぶん、なかったと思う。
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