第19話 俺の夏休み 登校日

「おはよう、裕太。」

「おはよ。相変わらずイケメンだな、氷雨」

「それだけ冗談言えれば大丈夫そうだね、お二人さん。」

俺が下側室に入るタイミングで、氷雨、結衣と会うことができた。

正直、教室に一人で入るのは怖い。

「それにしても、あの後大丈夫だった?」

「あの後って?」

「だから、葬式の後だよ。」

ああ、そのこと話さないといけないな。

「あの後、俺は、龍ケ原家に居候させてもらってるけど、明後日には俺の新居が決まりそうだから、もうすぐ出ていくけど。」

「まさかあんた、龍ケ原って……」

「そう、あの龍ケ原。」

「大丈夫なの?ていうか、どういう関係なの?」

そういえば話していなかったな。

「俺と雪乃は、家族だったんだ。しかも、お互いの親が再婚して義理の姉弟になったんだ。まあ、結局、もういないけどさ。で、雪乃の父親の嵐さんが、龍ケ原十四文の息子だったんだ。」

「なるほど、そういう事だったんだ。ありがとう、真実が知れたよ、僕たちも。」

「そうか。」

「てか、なんで裕太『俺』に戻ってるんだ?」

「私も同じこと思ってた。」

ああ、そのこと気になる、よね。

「あの事件以降一人称が『僕』から『俺』に変わっちまったんだよ。」

「精神的なショックからかな?」

「たぶんそうだと思う。」

俺自身もよくわからん。

「とりあえず着いたし、教室入ろうぜ。」

「「そうだな(ね)」」

俺は二人と教室に入った。




教室に入ると、みんなの視線が一気に俺に集まった。

「おい、冴河。ちょっと面貸せよ。」

「朝っぱらから物騒なセリフ吐くなよ。俺はお前にかまってる余裕ないんだよ、虎弾こだま。」

俺が教室に入るなり、一発目に話しかけて、いや、喧嘩を売ってきたこいつは、虎弾敦彦あつひこ。幼稚園から一緒だった腐れ縁だ。

「いい度胸してんな、お前。人の女奪っといてわびの一言もないのかよお‼」

「はあ?お前、何言ってんの?」

「だから、雨沢雪乃の存在を、俺から奪ってすみませんでしたも言えねえのかよお‼」

「あの人は、俺の最愛の人だったんだよ‼だから、お前の女じゃねえんだよお‼あと、今時、ヤンキーなんて、流行らないまねやめろよ。ダサい‼」

「て、テメエ‼」

俺は胸ぐらをつかまれた。

「ほら、そうやってすぐに力で支配しようとするの、昔から変わってないな、お前。」

「うるせえ。死にたくねーなら、黙ってろ。」

「なら、お前の、負けだ。」

「黙れって言ってるだろうがあああ‼」

俺の右頬に、敦彦のこぶしがめり込み、地面に倒れた。と同時に、

「何やってんだお前らああああああ‼」

と体育の主任の先生が教室に入ってきた。






「……あれ、俺、教室にいたはずじゃ……。」

見渡すと、そこは保健室だった。

「あ、起きた。何してるの?もう2時限目終わる前だよ。」

先生は、俺の寝ていたベッドまで来て伝えた。

「ありがとうございます。あの、運んだのって、誰ですか?」

「藍澤だったと思うけど、どうして?」

「いえ、ちょっと気になって……」

「あと、ついでに、君のベッドに伏せている子も、2時限目終わったら連れて行って。」

俺はベッドの左側を見た。そこには、結衣がいた。

「わかりました。」

「それと、今から保険室出るけど、いやらしいことしないように。」

「な、し、しませんよ‼」

「( ̄∇ ̄;)ハッハッハ」と笑いながら、保健室の先生は出て行った。

「おい、起きろよ結衣。」

「うう~うん、あれ、冴河起きてる。」

「先生も今はいないよ。」

「なら、ヌいてあげるよ。」

「それは余計だ。」

「なら、私をイかせて。」

「それも却下だ‼」

「うふふ、最近かまってもらえなくて、寂しかったんだ。」

「そうか。じゃあ、もうすぐ2時限目終わるから、服装とと退いておけよ。」

「わかぁったぁあ」

まだ眠そうだな。

「なあ、結衣、こっち向け。」

「な ングっは。いきなりキスするのはずるいよ。」

「ごめん、眠そうだったからつい。」

「もう、まあいいけどね。もう頬っぺた大丈夫?」

「少し痛むがたぶん。」

「虎弾君、退学になったよ。」

「だろうな。」

「苦しくなったら、言ってね。私が何とかできそうなのは性処理くらいだけど、頼ってね。」

「欲求が抑えられなくなったらそうするよ。」

「……それでも、ちょっとは嬉しいかも。」

「ごめん、何か言った?」

「いやなんでもない。戻ろ、ホームルーム始まっちゃうか。」

「そうだな。」

俺たちは二人で教室に戻った。ホームルームが終わり、あとは吹雪さんを待つだけだ。

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