第16話 俺の夏休み ハーフタイムその①

愛莉の言っていた言葉について少し考えながら俺は眠りについた。



その日、俺は珍しく夢を見た。

「ねえ裕太君。私のこと覚えていてね。」

それは俺が世界で一番愛している人の声だった。

そして気が付いた。俺たちは抱きしめあっていることに。

彼女の体温も感じられている。

「何言ってるんですか?忘れるわけないですよ。」

「でも、次会えるのは意外とすぐかもしれないから、期待して待っていてね。」

と言いながら、彼女は離れていった。

「待って雪乃、俺はまだ何も返せてない。」

「それなら、次の私に返してあげて。約束、だからね。」

と言いながら彼女は消えていった。





「雪乃‼」

俺は目を覚ました。そこは、龍ケ原家から借りている部屋だった。

「ゆ、夢だったのか。でも、何かおかしい。」

俺はその場で気が付いた。なぜ夢なのに体温を感じることができたのか。

そして、その結論は、すぐに分かった。

「う~ン。朝から騒がしいよ。」

「なんでいるんだ愛莉、ここは俺の部屋だぞ。」

布団から頭だけ出した愛莉がいた。

「とりあえず、布団から出……」

「今布団めくっちゃダメ‼」

だが、その言葉は遅かった。俺はもう布団を引きはがしてしまった。

そこには、愛莉の裸体があった。

は?

何でこいつ人の部屋で全裸なんだ?

「……だから、ダメって言ったのに。」

愛莉は顔を真っ赤にしながら言った。

「一ついいか?」

「ダメ。」

「お前、見た目よりも、胸あ……」

「だからダメって言ってでしょおおお‼」

バチン‼

そのタイミングで俺の意識はまたしても途切れた。




「やっと目を覚ましたわね。」

俺が目を覚ますと、愛莉の顔が目の前にあった。

「なんで俺また意識失ってたんだっけ?」

「思い出しそうならもう一発殴るわよ。」

「絶対思い出しません。」

「よろしい。」

少し機嫌が直ったようだ。

「そろそろ行かないとお父さん立ちが呼びに来そうだから、行くわよ。」

と言いながら、彼女は俺の体を起こした。

俺は寝間着から着替え、愛莉はその姿を目を輝かせながら見ていた。

「俺は今朝だけでお前をかなり怖くなったよ。」

「そんなこと言わないでよ‼ああそれと、」

と彼女は振り返り、

「このことは、お父さんやおじいさまには秘密ね☆」

とウィンクしながら彼女は言った。


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