第14話 俺の今後は……

葬儀の後、俺は言われていた龍ケ原邸に来ていた。

「おや、君は―?」

「あ、俺は、十四文さんに言われて……。」

「ああ、君が旦那が言ってた裕太君?」

「そうです。俺が、冴河裕太です。」

「上がって上がって。うちにも年の近い孫がいるんよ。」

なるほど、通りで話し方が若い。特有のなまりがあるけど……。

「お邪魔します。もう十四文さん戻ってきてますか?」

「ごめんね、あの人、きっと色々してるのよ、きっと。」

あの人めちゃくちゃいい人だな。

「ところで、私の息子もいるから、そっちにあいさつした方がいいわよ。」

何だって⁉それはあいさつしないと怖いな。

「ところで、奥さんの名前を伺っても?」

「名前で呼ぶ必要ないわよ。おばあちゃんって呼んでいいわよ。」

「ありがとうございます、おばあちゃん。」

「いいわよ。息子の部屋は、角曲がってすぐの場所よ。」

俺は一礼しておばあちゃんの言うとおり、角を曲がってすぐの部屋の前にいた。

『嵐さんの弟ってどんな感じの人だろう。やっぱり厳ついのかな?とりあえずノックしないと。』

心の中でそんなことを思っていると、

「いつまで人を待たせるつもりなんだ、君は‼」

と言いながら、いきなりかなりガタイのいい人が飛び出してきた。

「まったく、これだから最近の若い子は……。ところで、学校で習わないのか?人を待たせる行為はして和いけないというのを。特に年上を。」

「でも最近ではそういうのを焦らしプレイと言って、楽しむ人もいますよ?」

「そうか、それは一理あるかもしれんな。ああ、こんな廊下に居座らせて済まない。とりあえず中に入ってくれ。」

と俺はこの男性の部屋に半ば強制的に連れ込まれた。

「すまないねー茶の一杯も出せんで。」

「いえ、お構いなく……。」

と言いながら、部屋を見渡した。人が座れるほどのスペースはあるが、何かの資料が散乱していた。

「どうかしたかい?」

「いえ、この資料何なのかなあと思って。」

「ああ、それか。とりあえず自己紹介しておくよ。僕の名前は、龍ケ原吹雪たつがはらふぶき、君のお母さんの再婚相手の弟だよ。」

この人が。なんか、

「想像してたのと違う。」

「心の声が駄々洩れだよ。」

あ、止めるの忘れてた。

「すみません、失礼なこと言ってしまって。」

「いやいいんだ。僕も顔を知らない人が初めて僕を見ると、イメージが違うっていうからね。」

へへへと笑いながら吹雪さんが言った。

「ところで、資料は、兄さんから言われていた君の精神状態、性格、そして、好きなタイプまで記載した重要書類だよ。」

「なんてもの用意してんすか‼でも、なんのために。」

「兄さんは、君の本当の父親になろうとしていたよ。君のすべてを知っていたからね。僕はそれを応援したまでに過ぎない。」

「あんたのはプライバシーの侵害だよ。」

「そうかもね」

と笑いながら吹雪さんは答えた。

「こんな時だから君に提案したいことがある。」

とまじめな口調に戻し話しはじめた。

「これから一週間ばかりの間、ここに住んでくれないか、もちろん、僕らと一緒に。」

「……あの、一つ聞いていいですか?」

「どうぞ。」

「なんで一週間でしょうか。」

「まず、家を見つけるのに少し時間がかかりそうだからだ。」

「他には?」

「今の君をこのまま放置できないからだ。」

「どうしてですか。」

「今、君の眼には殺意が感じられる。君はこのままだとあの時と同じ事件を起こして、アイツと同じ運命に会いたいのか?」

「なるほど、診療ですね。そういうことならいいですよ。」

「君は何だかんだで物分かりがよすぎないか?」

「人間そんなものですよ。」

「そうか。とりあえず、荷物を部屋にもっていったら、大広間に来てくれ。うちの娘にも合わせてやるよ。」

と言いながら、少し大きめの旅行バッグを投げつけてきた。

「部屋は、出て右に行って一番奥だから。」

どうやら俺の一人暮らしは、もう少し先になりそうだ。

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