第11話 幸せの崩壊は突然で残酷だ。上
8月1日、夏休みに入り、約1週間がたった。
「ねえ、雪乃。今日どうする?」
僕は自室のベッドの上にいる年上の女子に話しかけた。
「どうするって何が?」
「うわっ⁉て、耳元でいきなり話さないでくださいよ。」
「いいじゃないたまには。でも、今日どうするって何が?」
ベッドの上にいたはずの雪乃がいつの間にか僕に後ろから抱きついていた。
この先輩本当に何も知らないんだ。
「今日の花火祭ですよ。行くんですか?それとも家で見るんですか?」
「ああ、そういえばそうだったね。ごめん、忘れてた。」
「えへへ……」と可愛く笑いながら答えた。
「裕太君はどっちがいい?行くか、家か。」
「どうせなら行きたいですね。先輩の浴衣姿観たいですし。」
「じゃあ、行くことにしようか。何時から行く?」
「花火自体は、20時からなんで、18時とかからでどうですか?」
「わかった。浴衣、何色来てほしい?」
「水色。いや、白とピンクの浴衣とかですかねー。似合いそうですし。」
「わかった。善処するわ。」
と言いながら、僕の部屋のドアを開けた。
「じゃあ、18時、リビングね。」
とウィンクしながら言い残して、去って行った。
「僕はどうしようかな。浴衣は、似合わないか。普通に私服でいいか。」
僕は、内心楽しみにしながら、残りの夏休みの課題に取り組んでいた。
「やっぱこの学校の課題は多いな。」
そして、
入る高校間違えた。
とも思っていた。
18時、少しおなかがすいているが、縁日で何か買えばいいだろうと、いつもより少し多めにお金を入れた財布を持ってリビングに降りた。
「遅かったわね、でも、時間ぴったりよ。」
そこには、薄ピンクと白の浴衣を着て、髪を一つ結びにしている少し大人っぽい印象の雪乃が立っていた。
とても似合っている。
少し目を奪われていると、
「何かおかしいかしら。」
と少し頬を赤くしながら雪乃は答えた。
「あ、いや、その、……、浴衣が、すごく似合っていたんで、目を奪われていました。」
と伝えるとさらに顔を真っ赤にしながら、
「お、お世辞でもっ、とっても嬉しい……、って何言ってんの私。」
少し慌てている彼女を見て思った。
最高に可愛い。
「早くいかないと、いい場所取られますよ。」
「そ、そうね。じゃあ、行きましょうか。」
僕らはその後、家の戸締りをして、家を出た。
今日は、母さんと嵐さんもデートのようだ。
「ここが祭会場?」
「そうですよ。」
「人が多すぎない?」
「去年よりは少ない方ですよ。」
そう、この祭りはこの地域ではかなり大きい祭なのだが、ほかの地区の人も来るためかなりの人数になる。
去年は氷雨に無理やり連れてこられたが、それなりに楽しめた。
僕らは、人の波の方向に歩き始めた。
「この地区の花火は、日本で最高にきれいな花火で有名ですから。焼きそば、買いますか?」
「お願いするわ。」
といい名が、僕らは、焼きそば屋の前に止まった。
「いらっしゃい。おやおや、これはこれは、お二人カップルかい?」
店主は、日焼けが、似合うダンディーなおじさんだった。
「そうですけど。」
「兄ちゃんもやるときはやる男なんだな。ここまでの美人な嬢ちゃんを見たのは、3年ぶりだよ。」
「そうですか。焼きそば一つ、お願いします。」
「ドライだねー。嬢ちゃんが美人だから、一つまけてやるぜ。」
「美人だって、裕太君。」
「お代は、380円だぜ。」
「400円からお願いします。」
「お釣りの20円、がんばれよ、裕太君。」
「な、ナニをですか。じゃあ、失礼します‼」
と、先輩の手握り、店を後にした。遠くから、「まいどあり―」
という声が聞こえてきた。
少し歩き、ある程度離れると、
「ねえ、裕太君。そろそろ離してくれない?握ったままだと恥ずかしい……。」
そして、手を見ると、僕らは、恋人つなぎをしていた。
「あ、す、すみません。とっさに握ってしまいました。」
僕は、雪乃の手を離した。雪乃は、恥ずかしいのか、後ろを向いていた。
「もう、つなぎたいときは、言ってからつないでよ。心の準備が、できてなかったんだら。でも、……」
振り返りながら、
「たまには、強引なのもいいかな。、なんちゃって。」
今日一番の笑顔だった。
「雪乃さん、結婚してください。」
プロポーズしてしまった。
「君が18歳になったらね。」
「ありがとうございます。」
これで結婚確定だ。
その後、縁日を楽しんで、両手にタコ焼きと、焼きそばを持っていた。
「今何時?」
「19時30分です。そろそろ場所探しますか。」
「いや、大丈夫だよ。」
と言って、少し笑みを浮かべ振り返りながら、
「少し遠いけど、さっきいい場所を見つけたんだ。」
また、僕は、この人に惚れてしまった。
「じゃあ、案内お願いいたします。」
「お願いされました。」
「えへへ」と言いながら、雪乃は、前を向き、僕の前を歩きだした。
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