第10話 始まりを感じさせる終業式

翌日、昨日のことを学校の先生に報告をした。対応したのは担任ではなく、生徒指導の、いかにもって言う体育教師だった。

「わかった。助かったよ冴河。あの生徒は現行犯でしか捕まえることができないと思っていたが、君の証言のおかげで、処分を与えることができる。」

「いえ、僕の方も、雨沢先輩の危ないところをぎりぎりまで助けなかったんで、ほぼ同罪ですよ。」

少し暗い顔をしていると、

「そんなことは無いさ、君は大事な彼女を守ったんだろ。未遂の方がまだいいさ。この学校には、あいつに犯されて、もう学校に来ていないやつの方が多い。でも、今回で奴を処分できれば、来てない生徒も来ることができるようになるだろう。」

ああそうか。僕は、他の生徒をすくこともできたのか。

「ココだけの話、坂下さんは、うちの保護者会のリーダーでな、それまで口封じされていたそうなんだよ。でも、坂下がついに、あの雨沢さんの娘さんに手を出したとなれば、きっと恐ろしいと思わないか?」

確かに、あの人起こるといつもより、三倍怖くなりそう。

「嵐さんにはもう話しました。相当お怒りで、『今からそいつの家に行ってそいつに落し前つけさせてやる。』って言って飛び出しそうになっていましたよ。」

「アイツらしいな。今も昔も変わってない。」

「ところで先生、いくつなんですか?」

「ああ俺か?俺はこう見えて今年で60だぞ。」

「嘘だああ‼」

「いやあ、若いって言われるけど、もう来年で定年なんだよ。」

と言いながら、大声で笑っていた。

この先生2Lのジャージをパッツパツで来てるんだぜ。

「先生、若さの秘訣って何ですか。」

「毎日筋トレとプロテイン。」

この先生、仕事できるのに、脳筋だった。

「じゃあ、このことは校長を通して、今日の終業式で話すことにするよ。じゃあ、教室戻っていいぞ。」

この先生は、かなりさっぱりしてるから、嫌いじゃないタイプだ。

「ありがとうございました。では、今後の対応よろしくお願いいたします。失礼しました。」

と言って僕は応接室を出た。



教室に戻り、自分の机に座ると、一人の生徒が話しかけてきた。

「おい冴河、お前、坂下先輩ぶっ飛ばしたんだろ?」

なんでその話広がってるのー。

「ぶっ飛ばしたっていうより、人のにチョッカイかけるのが悪いんだよ。」

と答えると、

「じゃあ、お前、やっぱりあの『氷結姫』と付き合ってるのか?」

「今更だけど、『氷結姫』って何?」

「お前そんなのも知らいのか?お前やっぱコミュ障だろ。」

それを言われると反論できない。

「去年、もう退学した俺の先輩が言ってた話なんだけど……。」

退学したんかい。ていうか、この学校退学する人多くない?

「その先輩が、あの人に告ったんだって、そしたら、『あなたの今日には、私じゃなくて私の体なんでしょ?』って言われたらしいんだよ。だが、俺の先輩は、『君自身にも興味がるよ。』と言ったそうだ。そしたら、『嘘ね。だってあなた私の胸しか見てないもの。そんなけだものは、嫌い。早く私の目の前から失せなさい。』って言われたんだとさ。それで心に傷を負ってしまった先輩は、退学したんだとよ。」

「去年、僕の知らない間にそんなことがあったのか。」

「それだけじゃないぜ。退学したのは、俺の先輩だけだが、去年、一年だった俺らの中にも告った奴は何人もいて、そのたびにぼこぼこにして返り討ちにしていたんだって。このクラスにもいるぜ。ほら、あの、一番後ろの窓側の。あいつは、告った後から、サイコパス化していて、授業中に、『雨沢先輩、僕のにしてゆっくりじわじわしてあげますからね。キャッキャッキャッキャ。』て、時々言ってるよ。」

そろそろ僕死ぬな、絶対。

「で、話し戻すが、付き合ってるのか?」

「婚約までした。」

「そうか。……ん?はあ?お前それどういう意味だ‼」

声出てるー。ちょっと静かにしてろよ。

「どういう意味だあちょっと説明しろやこんや……。」

「ちょっとうるさいかなー。おはよう裕太。」

ナイスタイミングで来てくれた。やっぱり持つべきものは、ラブコメ主人公クラスの、イケメンの友達だよな。

「サンキュー、おはよう氷雨。」

「藍澤じゃないか。お前知ってたのか?」

「もちろん。」

氷雨は答えながら座った。

「ところで、もうすぐホームルーム始まるから席に着いた方がいいよ。」

「ああ、わかった。」

と言いながら、席に戻って行った。

「明日から夏休みだからって怠けるなよ、裕太。」

「そんなことわかってるよ。」

そう、今日はこの学校の終業式。絶対この夏で、先輩ともっと先へ進みたい。




終業式が終わり、目標であった夏休みまでに彼女は達成できた。

僕は今、放課後の屋上て、決意した。

「この夏は、高校生活最高の夏にしてやるぞおお‼」

この時は知る由もなかった。この夏が最悪の夏になるなんて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る