第8話元カノは独占欲が激しかった。下

「もう一度やり直さない?」

この発言に対して僕はこう返さなくてはいけない。

「ごめん、それはできない。僕にはもう、大切な人がいるからさ。」

僕は少し微笑みながらそう答えた。

「なんで、私じゃないの?」

「そうだね。僕は君にここまでさせて、最低だ。」

「私、本当は、あの時だってまだ……。」

彼女は泣きながら、うったえた。このような場合、抱きしめるのが正解なんだろうけど、僕らはもう、そんな関係じゃない。

僕は彼女に起き上ってもらい、

「まだ、僕のことが好きでいてくれたんだな。そこは、何というか、とても嬉しかった。でも、……」

僕は言わなければならない。たとえそれがどんなにつらくても。

「僕は雪乃先輩が好きだ。君にどんなにアプローチされても、今の僕は、先輩が好きなんだ。だから、やり直すことなんて、できない。」

こんなこと僕だって言いたくない。高校に入ってからは、お互いいい友人をしていたからだ。それでも、僕はこのことだけは伝えたい。

「でも、これからも僕の親友でいてくれたら、とても嬉しい。だから、僕と親友になってくれませんか?」

と、彼女に今できる最高の笑顔で伝えた。

その瞬間、彼女は、泣きじゃくった顔を上げ、

「なら、私がいじめられていたら、助けてくれる?」

そんなの、

「当たり前だろ、いじめてたやつを全員ぶちのめすのも、僕と氷雨でやってやるよ。ダメだったら、一緒にいじめられてやる。だから、もう泣くな。」

と言って、僕は彼女の頭を撫でた。

「うん、もう泣くのやめる。これからは、親友として、あんたを支えるよ。」

彼女に笑顔が戻った。

やっぱり彼女は笑顔が一番似合う。

そんなことを思っていると、スマホの通知音が部屋に鳴り響いた。

『ねえ、今どこにいるの?』

先輩からのメールだった。

「なあ結衣、僕は、もう帰るよ。ついでに先輩に会いに。」

「あんたは昔っから一途なところは、変わんないのね。いいよ、行って先輩に会ってきな。そしてガツンと怒られろ。」

この時も彼女は笑顔で見送ってくれた。

ほんとに、先輩がいなかったら、彼女に惚れてたよ。

「じゃあ、また明日菜、遅刻すんなよ結衣。」

「あんたこそ、抜いてて遅刻したら許さないからねユー君。」

「次その呼び方したら絶交な。」

「わかったよ、裕太。」

僕はそのまま、結衣の家を後にした。そして、先輩のいるであろうバス停に向かった。



裕太が帰って、私は一人、自分の部屋に引きこもってしまった。

「まったく、私にここまでさせといて振るとかほんとどうかしてる。」

そんなことを言いながら、私は一人の男に電話をかけていた。

『珍しいね、結衣から僕に掛けて来るなんて。どうかした?』

こいつ人の気も知らないで。

「ねえ、今から暇?よかったら家来ない?」

『ごめん、実は彼女できたからさ、もう結衣の欲求を満たすのできそうにないんだ。』

このイケメン、クラスの全員から総スカン食らえばいいのよ。

「ねえ、私、また振られた。」

『誰に?』

「裕太に」

『だろうね。今のあいつには、もっと大事な人がいるからさ。でも、もし先輩と別れたら、ワンチャンあるよ。』

こいつ、ほんと時々いい奴になるんだからさ。

「私はもうあきらめて、親友になるわ。」 

『本当にそれでいいのかい?』

「うん、けれに言われたからじゃなくて、これは、私の決断だと思う。」

『ならいいんじゃない?気の向くままやるといいさ。それだけ?なら、僕は切るよ。』

「うん、ごめんね、付き合わせて。」

『いや、かまわないさ。今度彼女紹介するよ。ついでに男も。』

「最後のは要らないかも。じゃあね、藍澤。」

『じゃあね、結衣ちゃん。』

私は通話を切った。

「これから私一人か。ちょっと寂しいかも。」

そんなことをつぶやいてると、玄関から、『ただいまー』

という声が聞こえた。弟が帰ってきた。久しぶりに弟と遊ぶか。

修也なおやー、勉強終わったらおねーちゃんといい子として遊ぼう。」

「また男に振られたのかよ。いいよ、遊んであげるよぼっちなビッチのねーちゃんと。」

「私ボッチじゃないし、ていうかビッチでもない‼」

そんなことを言いながら、私は、弟とリビングに向かった。

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