第6話 元カノは独占欲が激しかった。上

ホームルームが終わり、帰宅する準備をしていると、

「ねえ冴河、今日、一緒に帰らない?」

顔を上げると、結衣が少し目をそらしながら聞いてきた。

「ああ、別にいいけど、お前、部活はどうした。」

「あ、あのね、今日、顧問の先生がいないから、部活が無くなったの。だから最近一緒に帰ってなかったから、一緒に帰りたいなーと思って……。」

あーなるほど。俺が先輩と付き合うことになったことは知ってるけど、まだ独占しておきたいというわけか。

「わかった。じゃあ、どっか寄っていくか?」

「いや、いいよ別に。一緒に帰るだけで……。」

「ぜんぜん遠慮しなくていいんだぜ。今日久しぶりの休みなんだろ?できることなんでもしてやるぞ。」

「じゃ、じゃあ、……」

彼女はまっすぐ目を見て、

「家、来てよ。」



昇降口を出て、

「ちょっと母さんに連絡する。」

と言って、スマホをポケットから出した。うちの母親は、L●NEなどはやっておらず、いちいちメールをしなくてはいけなかった。

 件名:今日は遅くなります。

 内容:友達と遊んでくるため、今日は帰りが遅くなります。

                         裕太

と打ち、『送信』ボタンを押し、数秒後、母親から、了承のメールが届いた。いつも思うがメールを打つのがとても速かった。

「ごめん。待たせてしまったな。」

「いいよ。それよりも、聞いたんだけど、雨沢先輩と付き合ってるってホントなの?」

知ってたー⁉

「どうしたの、そんな顔して。もしかして体調悪いの?」

「いや、そんなことは無い。ただ、なんでそのことを知れ渡ってるのかなーと思ってさ。」

「なんでって、今朝配布の新聞部の号外に乗ってたからよ。」

と言いながら、彼女は、新聞を開き、見せてきた。

「な、なんでこの写真が載ってるんだよおおおお‼」

そこには、あの日のキスの写真が拡大され、載せられていた。

「なんか、この時ちょうど新聞部の一年生がスクープだーと言いながら走って学校に戻ってきてたの。」

その生徒分かった瞬間殺しに行く。

「いやー、まさかあの『氷結姫』を落とす男があんたとは思わなかったよ。だってあんた意気地なしのちきにゃろうだったもんね。」

「それ3年も前の話だろ。それも僕たちが付き合ってた頃の。」

そう、僕はこの女と3年前、つまり中学二年の夏から、中学三年の夏まで付き合っていたのだ。しかも、初体験は、すべて網羅している。

「ねえ、少し買い物して帰らない?」

「ああいいけど、どこに行くんだ?」

「すぐそこ。」

と彼女は近くの少し大きめのスーパーマーケットを指さした。

「ちょっと買いたいものあるんだ。」

と彼女は笑みを浮かべながら、走って行った。

「先行ってるからジュースコーナーのところで合流ね。」

「わかった。店内では転ぶなよ。」

少し大きめの声で彼女に告げた。

「私、子どもじゃないから‼」

少し怒らせてしまった。それから僕も急ぐようにして、スーパーマーケットの中に入った。



「久しぶりに来たけど、かなり品ぞろえいいなー。」

こんなことをつぶやきながら、この店のジュースコーナーに、足を運んでいた。

「俺も何か買おうかな。」

そうつぶやきながら、エナジードリンクが置いてあるコーナーを見ていると、

「何か買いたいものが見つかりましたか?」

と、結衣が後ろから抱き着てきた。

「な、何してんだよ前‼」

僕は慌てて彼女を振りほどいた。

「ふふふっ、相変わらず初心うぶなんだね。」

彼女は少しツボに入ったのか、おなかを抱えて笑っていた。

「そういえば、僕と付き合ってた頃より胸、デカくなってないか?」

「モー、そういうところは昔と変わってない。そうね、あんたと別れた後、別の奴と付き合ってたから。その男がかなりの肉食系で、一週間に三回ヤッてたかな。」

こいつなかなかなヤリマンになってる。

「あ、でも高校入る前に別れたんだよ。そこまでデカくもないのに持久力あるし、あとバスケしたかったし。」

こいつこんなキャラだったっけ?

そんな疑問を持っていると、

「買うもの決めた?ないなら家、行こうよ。」

「特に買うものないから、店、出るか。」

そう彼女に告げ、二人で店を出た。

こんなところ取られたら、また新聞部にとられるんだろうなー。

そんなことを思いながら、店を後にした。

「ところで、お前、何買ったの?」

興味本意で聞くと、

「秘密‼」

ウィンクしながら、指を一本立てて、口元に当てていた。その様子は、とても可愛かった。

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