【調理】ハーピーのバロット
依頼人
鳥人族の老女
・鳥人族とヒトの有精卵
・岩塩
水子、或いは弟妹の丸茹で。
ここではバロットと、そう言われているらしいですわね。
ご存じかと思いますが、わたくし達は住処は主に渓谷の麓でございます。知人も崖、竜谷の洞穴、修羅入洞の入り口……夜目が利くものは勿論いらっしゃいますが、行ってきてそのまま帰ってくる者はいない。羽飾りが綺麗だと、赤鳳の方々もヒトに襲われやすいとのことで、わたくし達のご先祖様は常に生きることがままならない、といった具合でした……ですから、そういった話からこのような風習が生まれたのかもしれません。
基本的に、わたくし達の世代には「弟妹」はいません。正確に言うと「狩りに行く長男と、家庭を守る長女」のみ子を成して、それ以外の子をつくらない、と言った考えです。
では双子になった場合どうするか、ですが……体が虚弱である方に手に掛けます。申し上げた通り、大昔わたくし達はいつ生きられるか分からない、という状況に立たされておりました。その中で、双子が生まれてしまう、その倍糧を得なければならないのは、凶報に他ならないと考えておりました。わたくし達は強い者を欲しております。故に双子と分かった卵を火にくぐり、息絶えるか息も絶え絶えな子を、元気な方の子へ食べさせる。わたくし達の子供ですから、食糧ではないのです。なので、子に食べさせ、その殻を使い液を啜ることで、家族として厳しい世を生き抜こう。そういった考えでした。
弟妹、も、同じような理由でございますわね。やれ人は「食料」と嘆いておられておりますが、その方々の頭はわたくし達とは異なったモノです。ええ、異なったものでございます。同族の肉の味も知らない、「喰う者」の言い分と言うものはそういったことでしょう。
貴方がたもそのナリをしておられますから……それでもお受けいただけると? あら、ありがたいですわね……ええ、少し色々とあった者ですから、ごめんなさいね……貴方がたのように理解を示して頂ける方がいたとは思わず。このご縁に感謝いたしますわ。
ただ……ごめんなさいね、申し訳ないのだけれどもその卵は、まだ私から用意していないの。
いえ、このまま安泰にしてくれれは一か月後なのだけれども……愚娘が、ヒトとの子を身ごもっていたのよ。
びっくりしてしまったけれど……風習があっても、あの子が伴侶として決めた相手。出会ってみたのだけれど、昔の主人によく似ててね、優しく、港湾に住むのだそうで、娘を安全な所に住まわせて守って頂ける、とても素敵な方。
ただ……生まれないのよ、鳥人とヒトじゃあ。お医者様からそう言われたのだけれど、産むと聞かなくて……幸せなのも私たちの世代じゃあないというのも分かるけれどもね。
ええ、お医者様からその前例はないと聞かされておりますし……だから、悲しむのなら、直ぐにでも祝いと称して、「その子」を料理として生かすべきだろうと、そう思ったのです。
……生きているか、どうか、本当にその医者が行っていた真偽が分からない、と、おっしゃるおつもりで?
ああ!!なるほど、生死によって味付けが変わるのね!
うんと熱い湯に入れて頂戴な!アレはわたくし達の子供なのだから、残さず食べてしまいたいの!
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