出会い

祭りの喧騒はどこへやら。文明的な明かりがなくなり、月明かりのみに照らされた村を静寂が支配していた。


 暗く、それでいてどこか幻想的な夜。


 吹き付ける風とそれを受けて揺れる植物の音だけが静かに場を支配していた。


 その中をただ一人鼻歌交じりに歩く少女。


 その少女の白とも銀とも見て取れる長髪が月明かりに照らされ、不思議な輝きを放っていた。本来なら異質な雰囲気を醸し出すはずのそれは、むしろその少女にはとても似合っていた。


 その理由が少女が特別な力を持つ白巫女故なのかはわからないがとにかく、その光景が綺麗の一言に尽きることは確かだ。


 ちなみにこの少女がこのような行動をとっているのは、ただ単に夜の散歩が好きだったからに他ならない。


 自分の髪とは対照的な色をした夜空に、それとは対照的に自分の髪によく似た色の輝きを放つ月。それをこの少女はひどく気に入っていた。


 また、こうして一人で歩いていれば白巫女としての振る舞いをしなくても済むということも、この少女が夜を好む理由の一つであった。



 そういう訳で、この少女は現在ご機嫌だったのだ。



 だから少し遠くに行ってみようと思ったのかもしれない。



 遠くに行こうと思ったから、普段誰も好んで立ち寄らない場所に偶然足を運んでしまったのかもしれない。もしくはいまだ少女故の好奇心というのもあったかもしれない。



 そういったいろいろな要因が重なって、少女はあの場所へ向かって歩き始めてしまった。





 少女の目指す先に何がいるとも知らずに。





 この先に待ち受ける出会いが、自分の人生を大きく左右するものだとも知らずに。



 少女は、歩んでしまった。一歩、また一歩と。



 まだ子供の足なので歩幅は小さいが、しかし確実に近づいていく。



 その先にある出会いが自分の人生をどう変えるかなんて、全く考えもせずに。



 静かな夜を、着々と進んでいく。



 少女が進んだ道のりは、決して長くはない。しかしこの村もまた大きくはないのだ。それ故この少女の歩く速さであっても、数分としないうちについてしまうだろう。



 着いたとてすぐに何が起きるわけではないかもしれない。しかしもし彼の少年とひとたび出会ってしまえば運命の歯車を巻き戻すことはかなわないのもまた、確かなのだ。




 そんなことはつゆ知らず白銀の少女はたどり着く。




 忌まわしき半魔が繋がれた、その場所へ。




 幼き白巫女は半魔の少年を見るなりそれが何かわからないというような表情をする。


 事実、わからないのだ。今まで当たり前のように常に光の道を歩いてきた彼女は知らない


 この世に人々から嫌われた不幸な存在がいることなど。


 ましてや世界から、魔族からも人間からも忌み嫌われ、化け物と蔑まれ鎖につながれているものが存在することなど知る由もない。


 だから、少女は問いかけた。




 「あなたは、誰?」






 世界から忌み嫌われ、この世で最も不幸な存在と言っても過言ではない存在たる半魔。


 世界から重宝され、人々を助ける者として約束された光の道を歩む存在たる白巫女。


いわば、この世界における光の存在と闇の存在。


 これが、そんな二人の始まりであった。








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