6
随分と長い夢を見ている気がする。いつの間にか、何もない空間にオレは立っている。あたりを見渡してみるも、あるのは真っ白の壁だけで、他には何もない。
(……なんだ、ここ)
記憶を巡らせるも、こんな場所に記憶はない。
うんうんと唸りながら考えていると、手のぎりぎり届かない範囲に、誰か分からないが人が立っているのが見えた。
近づこうと一歩足を踏み出す。すると、その人は絵具を周りに撒いたかのように液体だけを残し、消えた。
「―……っ」
中央付近に残っているのは、日記のような本だけ。体中に寒気が走る。そして悟る。これは正真正銘夢だ。それもとても精神的に来る代物のやつ。
(やめてくれ……)
今日、変に避けたせいで、迷惑をこうむったであろう人物の顔が浮かび、唇をかみしめた。
迷惑をかけたくないから離れようとすると、いつもこうだ。結局は追われて、その人にも、オレにもなにかしらが起こる。目が覚めたら飛騨先生に怒られて……。どんなループだ。そろそろやめたいものだ。
液体から視線を逸らそうと反対側を向けば、いつ来たのだろう。小さな波が起きるように、足元に水が溜まっていた。
「……っ、ぐ……!?」
その水の水位は徐々に上がっていき、オレの膝、腰とどんどん浸食していく。さきほどまで広かった筈の空間が、いつの間に両腕を広げられる程度にしかなくなっていた。
「だれっ……誰か……!」
鼻につかない様に顔を上げ、そう叫ぶ。苦しい。息ができない。変に口を開くと喉にまで水が入って来るから、顔を水が覆う頃には黙らないといけない。ただひたすらに、腕を伸ばすしかないのに、その思いは届かず、誰にも届かない。
(ぐっ……誰でもいい……誰でもいいから……たすけ……!)
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