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『現在おかけの電話番号は、電源が入っていないか、電波が届かない場所にあります』
もう数度目になる電話を取り消せば、僕は大きく溜息を付いた。
今日の昼頃に届いていたメッセージ以降、閑野ちゃんから既読もつかなければ電話もつながらない。おまけに教授に確認してみたら閑野ちゃんの授業はもう終わっているときた。
(避けられているな……? なんでか知らないけど)
閑野ちゃんのメッセージには“用事”と書いてあったが、大体閑野ちゃんの性格からして友人だと認識した相手には具体的な用事を伝える傾向がある。と、僕は勝手に見ている。実際この二週間ほど、家に帰ってからご飯を食べに行くだの風呂にいくだの親とでかけるだの……ソーシャルネットワークサービスに書き込んだらすぐに居場所が特定されそうな内容を送ってくる。話を中断するときに相手を不安にさせないように敢えてしているのかと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。
「昔何も言わずに姉ちゃんのメッセージ無視したら警察沙汰になったから……もう癖。信用できる相手には全部俺の行動送ってる気がする」
と、返ってきた。ということはつまり、僕は一応信頼され友人扱いを受けている筈。
だけれど今回、連絡先交換したばかりの時のようなメッセージしか来ていない。これは僕が意図的に避けられているか、あるいは携帯のバッテリーが切れたかのどれかだ。
しかし後者はあり得ないと踏んでいる。なんせ授業は四時間以上前に終わっているし、一緒に帰る人が居開ければまっすぐ家に帰るような超真面目な閑野ちゃんだ。バッテリーがなくなったからといってマックに入ったりもしない。だからこそこの状況はおかしい。
「どうするかなぁ……」
人の多くなった噴水広場のベンチで携帯の電源を切る。大きく息をつけば空を見上げた。朝は真っ青な空だったのに、夕方になるにつれて灰色の雲が出始めている。雨が降りそうだ。傘持ってきてないなぁ。
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