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「おはよう、閑野ちゃん」
「はよ」
富未と簡単な挨拶だけ済ませ、オレは第一校舎へ、富未は第三校舎へと入っていく。最近の富未との関係はこの朝の挨拶から始まっている。
飲み会にて出会ったオレたちは、そこから一緒に大学にいくようになり、昼飯を食うことが多くなった。時に授業終了後、近くのカフェで談笑したりもするくらいだ。自分自身、ここまで仲良くなるとは思ってもみなかった。どちらかというと富未は人気のある奴だ。一緒に昼飯を食っていると男女関係なく一回は確実に話しかけられるし、教授たちにもよく呼び止められている。一方のオレは呼び止めてくる奴と言えば頭の悪い奴らばっかだし、先生で言えば養護教諭と論文解説講義を受け持つ登坂ぐらいだ。どちらの先生も大抵注意の為ぐらいでしか呼び止めないから、基本はフリー。時々戸田がくるくらいだろうか。あいつは友人というよりは悪友に近い高校からの知り合いだから、何とも言えないところではあるが。
第一校舎のとある部屋の扉を開け、後ろの方へと座り、頬杖をつく。
今日もまた、変哲の無い楽しくもない授業の時間が始まる。そう思っていた。
そんな日常を壊すかのように、オレの携帯が振動した。ポケットから取り出し確認してみれば、そこには“養護教諭:
人がちらちらと入ってき始めた教室から出、通話ボタンを押す。
「はい。閑野です」
「あぁ、良かった繋がった! ちょっと確認したいことがあるの。第二校舎の養護教諭室まで来てくれない?」
「来てくれって……オレこれから登坂の授業なんすけど」
「登坂先生には私から言っておくから! よろしくね!」
有無を言わせずに電話を切られ、思わず呆然としながら携帯の画面を眺める。アプリの置かれたホーム画面が映し出されているだけで、電話をしていたような形跡はそこには無かった。思わず大きな溜息を付き、額を押える。
勢いのある奴を嵐のような奴だとはよく言うが、道宮はそんな騒ぎじゃない。ゲリラ豪雨とか、下手をすると勢力の強い台風だ。初めましての時からそんなだから、きっと根っこからその性格なのだろう。好きな奴は好きなんだろうが、オレは苦手なタイプだ。
おまけに行かないと余計に怒る。俺は仕方なく鞄に教材やれプリントやれをしまい、近くの奴に養護教諭室に行くことを告げてから外に出た。
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