異世界転位 170話目
「よーし、ちと時間がとられる事が有ったが、ゴブリン掃討戦を開始するぞ!」
「おおっし、気合いが入ってきたぜ!」
「おい、なんかあったのか? それに何時のまにエルフリーデ様やリンカさんが来たんだ?」
「……なんで私はここに居るの?」
「私も帰りたかったっちゃ!」
山裾の岩が転がるところに布陣した討伐軍は、エルフリーデとリンカに現地で偵察をしていた冒険者達と合流し、本格的な討伐戦に入る前に軍儀を開いていた。
「戦力は1人でも多い方が良いに決まってるからだ、そんじゃゴブリン共だが今はどうなってる?」
「ああ、ほとんどが洞窟内に戻ったようだ、まあこれだけの規模の軍が来ればビビって逃げるわな。」
「まあな、それはそれで問題なんだけどな。」
「ねぇ、ゴブリンごときにこんな軍勢は要らないでしょ? て言うか私達は帰っていいんじゃない?」
黄昏いたエルフリーデだったが、持ち直したのかそう言ってくる。
「何を言ってるんだってそうか、エルフ達は鉱山に潜らないから知らないのか。」
「へ?」
「おい、ちょっとそこら辺から死体を何体か持ってこい。」
ケンがそう命じると兵士達が数体のゴブリンの死体を持ってくる。
「見てみろ? 草原や森にいる奴と違いがあると思わないか?」
「……なんかホッソリとしてる? それに手足が長いわ。」
「その通りだ、何でだと思う?」
「ダイエットに成功した!」
「成長期やから!」
「アホか!?」
「いや冗談……オ、オッパイを揉まないでよ、アン!」
「外でしかも皆が見てる前で……正直興奮するっちゃね!ハァハァ……」
「お前ら真面目にやれよ!」
すっとんきょうな答えを返したエルフリーデとリンカの2人を無理矢理抱き寄せると、ケンは2人の豊満なオッパイを揉みしだく。
そんな3人にアルヴァーが怒鳴り付けると、3人は顔を見合わせてキョトンしてながら聞いてくる。
「アルヴァー、お前は何時ここに来たんだ?」
「最初からいたよ! 山がゴブリンに占領されてるって報告が来たから、俺達の楽園の単作者で偵察しながら拠点を確保してたんだ、てめえの依頼でな!」
「……おお、そうだった! この天幕に入ってきた時に、なんで野盗が? 戦いの前の生け贄用か? って考えたから気にも止めてなかったぜ!」
「お前とは本気で話し合う必要があるようだな。」
睨み合うケンとアルヴァー、そんな2人、いやケンにフェリクスが声をかける。
「おい、そろそろ胸を揉むのを止めてやれ、失神しそうだぞ?」
「あへぇ……」
「ンゥ! オッパイだけでイってしまったちゃ……」
「おお、あまりの揉み心地に気がつかなかった!」
ケンはハッキリと嘘と分かる事を言いながらも、胸を揉み続けるのだった。
「それでこの違いがなんだって言うの?」
なんとか復活したエルフリーデの往復ビンタでやっとケンが2人から離れ、話がゴブリンに戻る。
「こいつらゴブリンってな、草原や森だと地べたを這いずり回るんだが、何故か洞窟とかにいると手足が伸びて壁や天井を這いずるんだよ。」
「ダンジョンだと変化がないんですがね、結構昔からゴブリンの生体の謎の1つって言われてるんですよ。」
「へー、アルヴァーさん他にもゴブリンって謎が有るんですか?」
「いやえーっと、フェリクス様その話は後にでもしやしょうぜ。」
「何でよ、私も気になるからここで良いじゃない?」
「そうちゃよ、うちも気になるっちゃ!」
アルヴァーがなんとか誤魔化せないか考えるが、ケンがゴブリンの謎の1つをアッサリと告げる。
「ゴブリンってのは知っての通り性欲が旺盛だ、そのおかげて一匹見かけたら30匹居ると言われている。」
「例の黒いヤツみたいっちゃね。」
「でだ、その繁殖力なんだが……計算が合わない事があるんだよ。」
「へ? どう言うこと?」
「人でもなんでも性交して孕ませるゴブリンなんだが、大体どの種族が何体のゴブリンを年間に産み出すか分かってるんだ、昔の偉い魔導師が調べてな。」
「そ、それって……」
「おう、その偉い魔導師様のその後はえらいことになった魔導師様になるんだが、今は関係ない、それで討伐数と苗床になってた被害者なんかの数である程度は討ち洩らしがいないかが、ギルドやそれを知っている冒険者なんかは把握出来るんだ。」
「へー? それなのに数が合わないってことは、少なかったってこと?」
「逆だ、やたらと多くいる時が有るんだよ。 しかも苗床になった被害者が居ないか、少ない時に多くな。」
「それならゴブリンのメスが生んでるんじゃないんちゃか? ごく稀にいるんやよね?」
「リンカ、その通りだ、メスゴブリンがいる集団で、苗床が居ないか少ない時にやたらと数がいるときが有るんだよ。」
「なによ、謎でもなんでもないじゃない!」
「……メスゴブリンってな、雄より強くて性欲も強いんだ。 雄から搾り取って、枯れ殺すこともあるらしい。 そしてそんなメスゴブリンは妊娠中でもやりまくって、年間に300匹以上産むことも有るらしいんだ。」
「す、凄いわね?」
「それがどうかしたっちゃか?」
「……それでもな? 数が合わないってことが多々有ってな? そうするとコイツらどうやって増えてんだ? ってなるよな?」
「そ、そうっちゃね?」
薄ら笑いしながら話していたケンだったが、急に深刻そうに話し出す。
その表情に何か恐ろしい事を言い出すと感じたエルフリーデとリンカはゴクリと唾を飲む、そしてフェリクスもこの話を知らないのか真剣な表情になり聞きいっている、アルヴァーだけがこのバカがと呟きながら片手で目を覆っている。
「……で、数例の目撃例が有るんだよ……そう言った集団の中でな……なんとな!?」
「「う、うん!」」
「雄同士がやり合ってんだとよ。」
「アホかーー!」
「真面目に聞いてたうちらがバカだったちゃ。」
「このバカ、想像しちまったじゃねぇか……ちょっと外で吐いてくる。」
あまりの話にエルフリーデとリンカは激怒し、フェリクスはナニやら想像してしまったようで気持ちの悪さに真っ青になっている。
「まあ、まてまて、さっきも言っただろ? 数が合わないって。」
「それがなんだって言う……え?」
「ちょ、ちょっと待つちゃよ!?」
「お、お前まさか!」
「まあさっきの話にも出たひどい拷問の上に首と胴体が離れてしまい、えらいことになった偉い魔導師様もその事に気がついていたみたいだが、さすがに調べる気にはならなかったんだが、な?」
「う、うん!」
「聞きたいような聞きたくないような……」
「やめろよ、マジでやめろよ? そんな話は信じないからな!」
3人とも何となく結論が分かっているのか、そんなことを言ってくる。
「………………妊娠している雄ゴブリンを一体、確認したことがあるそうだ!」
「「ギャーーー!」」
「腐女子が大喜びっちゃよ!」
ケンの言葉に悲鳴を上げるエルフリーデとフェリクス、リンカ、お前は間違っているぞ。
「それでだな、そんなオスラブなゴブリンなんだが、さっきも言った通りコイツらの手足が長いとな、壁や天井までも這いずり動くんだよ、たまに弓まで放ってくるしな。」
「本当に黒いヤツみたいやね。」
「それって結構厄介なんじゃ?」
「ああ、そうだ、エルフリーデなんかは不思議に思ったことないか? ドワーフがやたらと重武装を好むのを。」
「いや別に?」
「駄目エルフに聞いた俺が間違いだった、ドワーフは洞窟や鉱山の中での戦いを想定しているからだ。 つまり鉱山や自分達の住む地底でゴブリンと戦うことが多いから、重装備をして身を守るようにしているのさ。」
「森やダンジョンだと無いんですが、本当に自然の穴や鉱山跡にドワーフの町だった所なんかだと、器用に壁や天井から奇襲してきたりするんです。
ただしょせんはゴブリンなんでそんなに威力はないんですよ、だからドワーフ達は重装備で攻撃を跳ね返せるようにしてるんです。」
「ゴブリンが妖精、土妖精の成れの果てと言われるゆえんがこれなんです。」
ケンに続きフェリクスが、そしてアルヴァーがそう補足する。
「へー、知らなかったわ。」
「しっかし3人とも、そんなことをよく知ってるっちゃね?」
「上位の冒険者になるとそういった知識も持ってろと、研修を受けさせられるのさ。」
感心する2人にケンがそう言うと、アルヴァーがこれからの事を話す。
「そう言うことなんでこれからは騎士達とドワーフ達の到着を待ちます、重装備の彼等が最初に前進して残ったのを兵士や冒険者で殲滅する戦法でいきます。」
アルヴァーの説明を聞いてウンウンとうなづいていたエルフリーデとリンカだったが、リンカがふと思い質問をする。
「なぁ、なんか洞窟とかに攻め込むのを前提に話しとるけんども、ゴブリン達がこんな短時間で大きな巣穴を作れるんちゃか?」
「なんだリンカ、聞いてないのか? この山脈が創られた時に、セレナ様はドワーフ達が住みやすい場所も創ってたんだよ。」
「そ、それってまさか……」
「おう! そこに住み着いて数を増やしてるらしいんだわな、これが!」
結局、ドライトとその家族が面倒後とを起こしていたのだった。
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