異世界転位 171話目




「おーおーおー、ウジャウジャいるわな!」


「てか、いすぎじゃないか?」


「新しいゴブリンパラダイスの誕生か、こりゃ。」


ゴブリンの生体の話が終わった3日後、ケン達はアッサリと地上のゴブリンを撃破してドワーフ達の町(予定)、黒石の山の中に来ていた。


「へー、これがドワーフの住む町なんだ、今はゴブリンだらけだけど。」


「穴の中って聞いたちゃから、縦穴式みたいのを想像しちょったよ。」


「お前な、いくらなんでも失礼すぎだし、ドワーフ達の工芸品なんかを思い出してみろよ、かなりの技術力があっただろ?」


「そう言われると……いや、家なんかは建っとらんし、やっぱりイメージしにくいちゃよ。」


「まあな? 俺もそんなにいろんな場所を見た訳じゃないんだがな、壁に穴掘って住むのは間違いな訳じゃないんだけどもあそことあそこに向こうだな、あそこら辺にある広い場所に地上に有るような建物を作ったり、あそこみたいに幅が狭い所には橋を架けてあそこの道が狭まってるところにはトンネルを掘るんだ、今言った感じでイメージしてみろ? 地下都市って感じになるだろ。 ドワーフの都市ってのはそんな感じなんだよ。」


「うーん、イメージ出来たって言えば出来た気がするわ?」


「そうっちゃね、なんっても今はゴブリンの小屋しか建っらんから、イメージしにくいっちゃからねぇ。」


そう言ってエルフリーデとリンカは目の前の景色を見る、そこは深さ300メートル、あべ○ハルカスがスッポリと入るぐらいの亀裂が有る山の中だった。




「しっかし不思議な地形っちゃね、なんかそこらじゅうが発光しとるし。」


リンカは上下に見てから周りを見回し、不思議そうにそう言う。


「本来は鉱石を掘り出しながらこんな感じに造り上げていくんだよ、その時に光石や魔道具を埋め込んで明かり取りにするらしいんだわ、まぁ暗視のあるドワーフ達には本来要らないんで客用らしいんだがな。」


「ふーん……おっと! こんにゃろ!」


「あ、バカやめろ!?」


周りを見回しながら上の空で聞いていたエルフリーデに数本の矢が飛んでくる、それをアッサリとかわすとエルフリーデは反撃とばかりに矢飛んできた方向に10数発のファイヤーボールを撃ち込む。


それはケンが止める暇もない早業だった、そしてファイヤーボールは見事に矢を放ったゴブリン達を中心に当たり爆発した。


「何よケン、どうしたひゃあぁぁぁ!?」


「こんなところで襲われたら恥ずかしいっちゃあぉぁぁ……おろ?」


ケンはエルフリーデの脇に腕を回してオッパイをわしづかみにし、リンカは腰から腕を回して尻をつかむと、走って広場のような場所から先ほど制圧して入ってきたトンネルに全速力で向かう。


ちなみにフェリクスとアルヴァーの2人はとっくに逃げていたので、変な悲鳴を上げていたリンカが不審に思った瞬間だった。




[グチャ!]




空からゴブリンが降ってきた。


「なんちゃね!なにごとちゃね!?」


「へ?何々……わあぁぁぁ!? いっぱい降ってきた!」


自分のすぐ横に落ちてきて肉塊になったゴブリンに驚きまくるリンカ、その叫びにエルフリーデもゴブリンが降ってきたのに気がつき上を見上げるとゴブリンが大量に降ってきていた。


「なんでゴブリンが降ってくるっちゃ、どんな天候なんよここは!?」


「臭っさい! それにキモい! ケン、もっと速く逃げてえぇぇぇ!」


「全力で逃げとるわ!」


かなりの間か、一瞬だったのか……何にしろ地中なのに天候は晴れ時々ゴブリンである。

天変地異かはたまた悪魔の所業か、ゴブリンが降ってくるなかケンはエルフリーデとリンカを抱えてトンネルの中に逃げ込んだのだった。




「い、今のは何なのよ!?」


「ゴブリンがいっぱい降ってきて、みんな肉塊になったっちゃよ!?」


「まったく、勝手に攻撃をするからだ。 2人ともちょっとこっちに来てこれで見てみな?」


そう言うとケンはトンネルの出口、先ほどの裂目が見える広場のような場所の出入り口に行き双眼鏡を2つ取り出して2人を呼ぶ。


2人は恐る恐るにケンのそばに近寄ると、双眼鏡を受け取り辺りを見回して動きを止めると、双眼鏡から目を離してケンの方を見る。


「なになになに、なによあれ!?」


「凄い数のゴブリンが壁に居るっちゃよ!?」


そう、2人が見たのは壁にしがみつくゴブリン達だった。

その数は凄まじく壁一面を覆っていて、岩肌がまったく見えない状態だったのだ!


「気味が悪いだろ? あいつらは序列が低かったり、年老いて力の弱まった奴等なんだ。 そういったのが平地の部分なんかの住みやすい場所から追い出されて、壁に張りついて生活してるんだ。」


「いやいやいや、それにしても多すぎるでしょ!?」


「何層にも積み重なってるちゃよ!?」


「オスラブしてるんだろ……おい、俺に魔法を撃とうとするな、と言うかさっきので懲りろこのバカ達が!」


「エルフリーデ様、魔法は今は撃たないで下さい。 さっきのも衝撃でバランスを崩した奴等が落ちてきたんですから。」


アルヴァーに注意されて、先ほどの事を思い出したエルフリーデは慌てて練り上げた魔力を霧散させてトンネルに逃げ込むエルフリーデ、それを呆れた表情で見送っていたケン達だったが、そこにクッコネンと黒石を掴む手の族長のクトワルがやって来た。




「エルフリーデ様はどうされたのですか?」


「ゴブリンの雨が苦手なようだぞ?」


「エルフの軟弱者と言いたいが、あれを好むものはおらんと思うがな。」


クッコネンの質問にケンが答えると、初老のドワーフは顔をしかめながらそう言って辺りを見回す。


「うーむ、報告には聞いておったがここなら確かに素晴らしい都が造れるな。」


「今はゴブリンパラダイスだけどな? それで最初に出張るのは?」


ケンの言葉にますます顔をしかめるドワーフ、そんなドワーフはトンネルの方に向き直ると手にした戦鎚を振り上げ叫び部下を呼び出す。


「黒棘山の者達よ! 貴様等の力を見せてわし等の氏族に対する忠誠と貢献をみせい!」


その叫びに呼び出されたのはロットリッヒでケンに購入された、ドワーフの一団の戦士達、およそ100名だった。


「おおぅ! 戦士達よ、我等に先陣の誉れが与えられたぞ! ここで武功と忠誠を示し、新たな氏族の一員となるのだ!」


「「「オオオ!」」」


完全武装で隊列を組んでトンネルから出てくる赤棘山改め黒棘山の戦士達、彼等は分厚い鎧と兜に手足にも鉄製の頑丈な籠手や脛当を着け、タワーシールドと戦斧を持ってやって来た。


「お、結構居るな?」


「先陣を任せられたからな、女達も戦える者は総動員したそうだ。」


「彼等も正念場ってことか……」


「おい、あんなでかい声を出したから流石のゴブリン共も騒ぎ出したぞ?」


「そんじゃあ始めるか……クッコネン、クトワル、俺達はトンネルまで後退だ。 ……黒棘山の戦士達よ、勝利して自分達の穴ぐらを手に入れよ!前進!」


「「「オオオゥ!」」」


ケンの言葉に怒号で答えると黒棘山の戦士達はテストゥド、亀と呼ばれるローマ軍の歩兵戦術の1つ、密集して盾で上と左右前方を固めた状態で前進するのだった。



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