異世界転移 161話目




「で、結局はこのダンジョンの事を知っていたのは誰なの?」


「私は知りませんでした!」


「拙者達も本当に関わってないでござるよ!」


「ぜんぜん話が見えないんですけど?」


結局、ドライト祖父母のモリオンとヌーマが魔界に行き、ルシフェルを捕まえたまま逃げ回るドライトを捕まえたのは次の日だった。


そして現在は、ドライトを含む関係者が全員拘束されてユノガンドに龍神達、そして地球の原始の神々の前に引き出されていた。


オマケでケン達も一緒に。


「いやおかしいだろ!? 俺達が居るのは!」


「あんたユノガンド様をはじめとした最高位の方達がいるのよ? 黙って刑に服しなさいよ。」


「いやだからな? 俺達はマナルで事後報告を受ければいいだけだろ!?」


「ケンさん諦めなさい、他のもの達は静かにしてるじゃない。」


「他は皆は気絶してるよ!」


ケンはとんでもなく高位の神々の前に連れてこられて文句を言っている、そしてフェリクス達は高位の神々の気配に耐えられずに気絶してしまっている。


「天槍のケン、静かに。」


「ここは裁定の場だ。 それでドライトよ、本当に気がついてなかったのか?」


「妹達がダンジョンコアを持ち出しているのと、マナルでなにか造っているのは気がついていましたがダンジョンなんて知りませんよ!」


「「「絶対に気がついてただろ!?」」」


とりあえず神々は罰としてドライトを逆さ釣りにする、そして悪魔のグシオンや天使達に話を聞き始める。


「確かに以前に邪神の召喚方法の書かれた本をマナルに持ち出されましたが、その問題は解決しております。」


「神々よアガリアレプトです、その問題に関しては裏切り者を捕縛して、マナルに写本や知識が残されていないか確認をしております。」


「なら今回のダンジョンに関しては本当に関係がないのか?」


「はい、誓って関係ありませぬ。」


「天使達よ、あなた等はどうなのですか?」


「釈迦如来様、私達は魔界が混乱しないように援軍として向かえと主に言われただけなので……。」


「そのヤハウェが逃げて居ないのだ、何か関わっているんではないか?」


「悪魔達もだ、ドライトが捕まえていたルシフェルがいつの間にか居らぬ、どこに行ったのだ?」


「「……へ?」」


原始の神々の視線が鋭くなるのと同時に、天使達と悪魔達の顔色は青くなる。

原始の神々はドライトとルシフェルに、ヤハウェも加わって何かしようとしていたのではないかと疑っているようだ。 だが天使達も悪魔達も何も聞いていないし、ダンジョンの事などさっき聞いてはじめて知ったぐらいなので何も答えられなかった。


「ドライト、あなたは本当にダンジョンに関知していないの?」


「レムリア祖母ちゃん、ダンジョンを知ったのはケンさんに報告があった時です!

妹達が造ってるのを知ったのはその3秒後で、これは利用できると裏工作とかしたのはその7秒も後なんですよ!?」


「「「やっぱりお前かよ!」」」




ドライトが真犯人と言うことで神々の話し合いは終わり、久しぶり集まったと言うことで神々が宴会をしようと準備を始める。

ドライトは罰を与えると言うことになったが、釈迦如来の寛容の精神で赦してやろうとの言葉と、龍神達、特に祖父母達の武力もじさないとの意見でセレナによる尻叩きのみになった。


「結局はドライトに振り回されただけか……あれ? セレナ様、ドライトに罰を与えるんじゃないんですか。」


深々とため息をつきながらケンが諦めの表情でいると、尻を叩かれているはずのドライトは真剣な目で虚空を見つめ、セレナは振り上げた手を止めたままオロオロとしている。


「ドライト、あなたは罰を受けないといけないのよ? それなのに尻叩きはダメですだなんて、何を言うのです。」


「ドライトよ、母に逆らうのはよくないぞ、ちゃんと罰を受けるのだ。」


セレナとディアンにそう諭されるドライトだったが、ドライトはそんな両親はおろか他の者達に見向きもせずに虚空を見つめている。


「……ドライト、母に返事を「フィーシュ!」ドライト!?」


「きました、きました、きましたよ!!」


「ど、どうしたと言うのです、ドライト!」


「母様、見てください! アホ共が釣れましたよ!」


ドライトがそう言うと同時に、虚空に何もない白い空間が映し出される。


否、そこは何もない白い空間ではなかった。 小さな染みのようなものが所々にあり、その染みは周りの白い空間を侵食していっていたのだ。


「邪神……それもかなりの数よ!」


「やりました、やりましたよ!


あいつ等がマナルを諦めておらず、監視をしていたのに私は気がつきました! そこで混乱したようにみせかけて、さらには私や祖父母が魔界に攻め込んだとの情報をばら蒔いたのです。 その結果はこんなに釣果が!」


ドライトは大喜びでセレナの拘束から抜け出して踊り始めている、ドジョウすくいを。


そんな騒ぎに目を覚ましたのか、フェリクスが呆然となり虚空の映像を見つめている。


「……ドライト様、あの邪神は……邪神達はいったい何処に向かっているのですか?」


「何処に? マナルに決まっているじゃないですか。」


「な、何故にマナルに!?」


「そんなの当然ですよ、マナルに元々いて妹達を小汚いと罵った奴等の一部に逃げられていますからね、元のマナルに誘導するのは当然なんですよ、私はやる時にはやる龍なんですよ? やらなくてもいい時にもやらかしますが!」


今回もやらなくていい時にやらかしたドライト、そんなドライトをフェリクスは虚空の映像と交互に見比べ、膝から崩れ落ちる。


「……駄龍! あの邪神がマナルに来たらどうなると思っているんだ!?」


それを見たケンは激昂して槍を取り出し殴りかかるが、その体は空中に縫い止められたかのように止まる。


「どうなるか? こうなるんですよ!」


ドライトの叫びと同時に、虚空に新たな映像の数々が浮かび上がる。




『第1軍集団、集合です!』


『マナル方面軍、配置についたのですよ!』


『フハハハ! オリンポスの神々よ、戦いの時が来た!』


『ウリエル、全軍集結した?』


『ハッ、ヤハウェ様、我が主よ!』


『アスタロト、悪魔達の集合は終わっているでござるか!?』


『はい、ルシフェル様、狩りの時間ですな!』


『戦いだ、戦いの時だぁ!』


『ひさびさに全力を出してあげるわよ、ウフフフ!』




それは先ほども見た魔界の映像だった、だが先ほど違うのは完全武装になったドライトの分身体達が軍団を組み、様々な神々や悪魔達が集結している映像だった。


「アホな邪神達はマナルの近くに来た瞬間に滅ぶことが決まっているのです! ウッヒョー!!」


喜びでますます早くなるドジョウすくい、それを見ずに食い入るように虚空の映像を見るケンとフェリクス。


「な、なんだ分身体のあの数は……。」


「神々もだ、ここにいる方々に負けないほどの輝きを持つ方々がこんなに!」


そう、映像の中では集結している分身体も神々も、信じられないほどの数が終結していたのだ!


「アホな邪神の皆さんはマナルにたどり着けることもなく実験材料になるのですよ、ウッヒョヒョー!」


そう叫ぶドライト、だがその目の前にいきなり別の映像が浮かび上がる。


『ちょっとドライトさん!』


「ありゃ、メルクルナさんじゃないですか、どうかしましたか?」


『どうかしましたか? じゃないわよ! どういことよ、邪神が集結してるじゃないのよ!』


「この間に伝えたでしょう、邪神をマナルに釣り上げると。」


『それは聞いてたけどそうじゃないのよ! その邪神達がそっちじゃなくメリルルナ姉のメテカトルに向かってることよ!』


「……ドントタッチミー?」


『私に触らないで? 何言ってるの?』


「おお、珍しくダーリンが混乱している。」


「本当に珍しいわ、何千年ぶりかしら?」


「邪神に裏をかかれたわね。」


「……夫……どうする?」


ドライトは邪神をマナルに引き寄せて大量に討伐するつもりだったようだ、だが裏をかかれたようで邪神はマナルと逆方向に有る(テルミス情報)と言うメテカトルと言う世界に向かったようだった。


その情報を聞きケンもフェリクスもその世界の人達には悪いが、自分達の住む世界は助かったと安堵する。 それと同時に策に溺れたドライトを覚めた目で見るのだった。


「ドライト、至急軍団を向けましょう。 メテカトルを救うのです。」


「……間に合いません、間に合いませんよ!」


「ドライト、間に合う間に合わないではないのです、メテカトルの民を、生きとし生けるもの達を助けるのです!」


『そうよドライトさん! ユノガンドからも龍達が出撃し始めたわ、メリルルナ姉を助けに行きましょう!』


そう言うセレナとメルクルナと呼ばれた女神だったが、ドライトはよほど邪神に裏をかかれたのが悔しかったのか、崩れ落ちるように地上に墜ちると四つん這いになって叫ぶ。


「そう言うのことじゃないのです!

あそこには……あそこにはグルメ同盟の神々とセレナ母様親衛軍とディアン父様近衛軍がいるんです!

これじゃあ私が行く前に良いところは持っていかれちゃいます!」


邪神が進攻したメテカトルにはドライトの愉快な仲間のグルメ同盟の神々と、両親の名を冠した精鋭軍がいてめぼしい邪神は自分が行く前に他の神に捕まってしまうか滅ぼされてしまうと嘆いていたのだった。




「えー、私としてはうま味が無くなったんで行きたくないのですが、母様が全員で行くと言うので行きます。」


「おう、もう帰ってくるなよ!」


「バカかケン、まだご両親とかがいらっしゃるだろ!」


「……ケンさん、フェリクスさん、アルヴァーさんや他の皆さんも、サヨウナラですよ。」


「……急に真面目な顔をしてどうした?」


地面に両足で立ち、ケンだけでなく今ここにいる全員にペコリと頭を下げるドライト。

その姿に違和感を感じたケンはドライトに向き直る。


「……もし私が次にここマナルに来るときは、皆さんは生きていないでしょう。」


「お前、そりゃどういう意味だよ!」


全員が死ぬと言われてケンは慌てて聞き返す。


「……邪神の討伐は時間がかかるのです、特に今回、メテカトルに攻め込んでいる邪神達の中にはかなりの力を持つものもいるようですし、数が多いのです。

そして、今回の討伐は祖父母や原始の神々が本腰を入れて殲滅戦をすることが決まっています。」


「……何が言いたいんだ?」


「私達にはこの戦いが一瞬でも、人の生、人生に換算すれば何百年とかかるのですよ……つまり、討伐を終えてここに来たとしても、あなた方と再度今生で会える事はまずないのです。」


「……そりゃ、いや本当にか?」


「……ドライト様、お別れなのですか?」


「はい、残念ですがケンさん、フェリクスさん。

他の皆さんともご挨拶したかったんですが、あまり湿っぽくなるのなんですし、ここらへんでお暇しますね……ああ、アンナちゃん達をよろしくお願いします。」


そう言うと再度ペコリと頭を下げるドライト、そして羽をパタパタと動かし飛び上がると、それに続いて他の龍達や神々も宙に浮かび上がる。


「それでは行きますね、おたっしゃで! 皆さんおたっしゃで~!」


「人間達よ、何時もドライトの助けが入ると思うなよ?」


「私達も全てにおいて万能と言うわけではないのです、滅びを恐れるなら自らを鍛えなさい。」


「邪神め等が、我が眷族の世界に攻め込もうとしたことを後悔させてくれるわ!」


「メルクルナ姉も応援に来てくれるんだから、気合いを入れないと!」


「ドライト、久しぶりの本格的な戦いだから気分が高揚するわ!」


「旦那様、メテカトルは様々な文化が育っていますから、是非とも守らなければですわね!」


「ダーリン、先陣は私にやらせてくれよな、な!?」


「……邪神……ぶちころがす。」


「「にーちゃ、私達も戦わせて!」」


セレナ達が声をかけ、ユノガンド達が気合いを入れて空を駆け上がっていく、テルミスやキャロリンと言った眷族達はケンを一目見たり、頭をペコリと下げドライト達の後を追って消えていく。


そしてすべての龍と神々が消えると、そこはダンジョンコアの有る制御室の中だった。




「……っておい、このダンジョンはどうすればいいんだよ!?」


『いや、置いていかれてしまって私もどうすればいいんですかね?』


こうして神々と龍達は去った、魔界に繋がった奇妙なダンジョンを残して………………




























「テルミスさん、あなた確かテクタイトさんと仲がよかったですよね?」


「え? はいそうですが何か?」


「ふむ、あなたとあなたの眷族は残りなさい、マリルルナさん、それでいいですか?」


「何よドライトさん、テルミスは私の筆頭眷族神でその眷族も私の眷族のなかじゃ最強の神々なのよ、なのに今回の戦いに連れていくなって言うの?

それにマナルの守りならなん柱か残すし、それこそ今でたテクタイトがいるじゃない。」


「……これは感です、本当に感なんですがマナルにも邪神が何かしら仕掛けてくる気がします。

なのでテクタイトさんと連携が取れるテルミスさんに残れと言っているんです。」


「……分かったわ。 テルミス、それでいいわね? ならマナルの天界なりでマナルを見守ってて、お願いね。」


「かしこまりました、我が眷族は続け! マナルを守りに戻るわよ!」


自分の眷族を連れて戻るテルミス、それを見ながらドライトはポツリと言う。


「もう少し、保険をかけておきますか。」


そう言うとドライトは一瞬だけ銀色に光輝く、そして今来た方向、テルミス達が戻っていく方向をもう一度見直してからメテカトルに向け速度を上げるのだった。



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