異世界転移 162話目




「邪龍追放パーティーにようこそ、乾杯!」


「そんなパーティーじゃないでしょ!


ええ皆さま、ダンジョンは機能を停止して安全が確認されました。 本日はそれを記念してのパーティーとなります、多少では有りますがお食事とお飲み物を用意したので堪能してください。 それでは失礼して、乾杯!」


「「「乾杯!」」」


ドライト達が去って半月後、ケンはレーベン王国の王都にいた。


ダンジョンはその後、コアの中に残っていた龍珠が機能を停止させ、魔界への通路もグシオン等が閉じて普通の?廃ダンジョンとなった。

龍珠も残っていたロッテンドライヤーが回収して去っていった、なのでケンは喜びで先ほどのような発言をしたのだ。


そしてその事を国王に報告しなければならないので王都に来ていた、あとちゃんとした挨拶をしたのはエルフリーデだった。


「しかしフェルデンロット子爵、ダンジョンの活動は止まったと言われたがゴーレムやドール系の魔物が増え続けているとか、本当にそれで大丈夫なのか?」


「アイヒベルク侯爵、それについてなんですが貯めておいた魔力が枯渇するまでは自動で製造を続けるようになっているそうなのです。」


「そうなのか? しかしそれでは魔力が供給されていれば作り続けるのでは?」


「ええ、なので一定数が作られたら止まるようにしたそうです、その後は魔力を放出させて枯渇状態にするそうなんですよ。」


「子爵殿、何故そのように面倒な手順を踏むのだ?」


「それが急に魔力の供給を止めると防衛システムが起動するとかでして……何にしろダンジョンは完全に私達の管理下に有ります。」


「侯爵閣下、それは私も確認しましたし、エルフリーデ様も確認しましたので大丈夫かと。」


フェリクスが周りを安心させるように少し大きな声だ言うと、アイヒベルク侯爵は安堵のため息をつきながら話を続ける。


「そうなのか……何にしろこれで北部も安定するのか、南部は去年の商王国とカルタサーラの戦いの影響で少し混乱しているが一応国内は安定している。 ここは国内の安定のために軍を魔物の巣などの討伐をさせるべきか?」


「侯爵閣下、街道の整備なども急がなければなりませんぞ、各国との通商なども活発化しておりますし。」


「それに魔物だけでなく盗賊対策もしなければです、すでに何件か商団等が襲われたとの報告が入っております、軍の巡回を強化するべきでは?」


「盗賊か……他国からの流民も入ってきておるようだし、やっかいだの。」


レーベン王国は早くに魔人の討伐を終えており、魔物も他国に比べて少なくなっていたため流民が入り込んできていた。

さらに問題なのは今までほとんどいなかった盗賊も出始めていたのだ、ちなみに盗賊がほとんどいなかったのは軍や騎士団の活躍ではなく、今までは魔物に食われてしまうのでほとんどいなかった。


「あと森の道をなんとかしないとですね、獣王国とアズ・エーギグ・エーレ・ファとの交易もしたいですしな。」


「獣王国では魔導具やポーションの需要がたかいっちゃね、エルフからも買ってるんけど全然足りてないっちゃよ。」


「エルフは鉱石や一部の薬草などですね、海や寒い地方のものはどうしても手に入りませんでしたから……。」


「あのドアが使えればよかったんですが、交易なんかには使うなってセレナ様に釘を刺されましたからね。」


アイヒベルク侯爵だけでなく、王国を支える法服貴族や宮廷貴族と言われる領地を持たないか、領地を代官なりに任せて何代も王都にいる官僚系の貴族とこれからの事を話していると、ふと1人の貴族が思い出したように言う。


「そう言えば子爵、フェルデンロットに出来た山脈はどうするのですかな? かなり有望な鉱山も確認されているそうですが。」


「あー、セレナ様が創った山脈ですか、あそこは今年から開発を進めようかと思っているんですが……先に他の町の建築に入る可能性も有るのでなんとも言えませんね。」


「あら? ケンのところにいるドワーフが自分等を住まわせてくれって言ってたんじゃないの?」


エルフリーデが思い出したようにそう言うと、ケンは困った表情になり何が問題なのか説明をする。




「王都で買ったドワーフ氏族なんだけどな、まだまだ建設なんかの主力なんだよ。 他にも大工なんかの技術者は奴隷や流民からも集めてるんだけどな、まだまだ仕事はいくらでもあるしな。」


「エルフリーデ様、一応は戦士を送るのを許可しとるんよ。 ミラーナ様が。」


「しかし子爵殿、フェルデンロットの建設も他の町の建設にもあの山から採れる石材や鉱石が必要なのではないか?」


「それについてもなんですが楽園の探索者、ええ堅守のアルヴァーに頼んで調査してもらったんですよ、その結果なんですがかなりの鉱脈が手つかずで有って石材も良質のものが有るそうなんですよ、手つかずで!」


「おお……何か問題が有るのか?」


話を聞き驚く貴族達だったが、アイヒベルク侯爵はケンの態度で何か問題が有ると分かり聞いてくる。


「手つかず過ぎて安定的に何かの鉱石を掘り出すにしろ、石材を切り出すにしろ10年はかかるそうなんですよ、うちに今いるドワーフや屯田兵を動員しても!」


「「「……あ!」」」


ケンの言葉に皆が気づく、あの山脈はセレナと言う龍が創ったのだ、自然のままに。


つまりあの山脈までの道のりを切り開くにしろ、ドワーフや作業員のための町を造るにしろ、時間がかかると言うことに。


「フェリクス、シュタインベルク子爵のところの巨人族を借りようと思って相談もしたのですが……。」


「何人かに見させたのですが、シュタインベルクの石切場や鉱山を止めて全員でかかれば5年ほど短縮できるとの結論でした、しかしそんなことをすればシュタインベルクが干上がりますし、王国に供給する物も止まってしまうので。」


現在レーベン王国内に供給されている石材や各種鉱石はシュタインベルクからのものが3割ほどにもなっていた。 これは比較的に他の国よりもレーベン王国が安定していて昔の町や砦の復旧などが多くなっていたのと、シュタインベルクの山を守っていた巨人族の力で直ぐに採石等が出来るので需要が増えているからだった。


「まぁなにもしないわけではないですよ、実際に楽園の探索者の何人かとドワーフが少人数で拠点を造って住まわせてますし。」


「うちの巨人族も2家族が移住をしますし、数年以内にある程度は形になるんじゃないんですかね。」


「まぁ仕方がないのぅ、慌てても良いことはないか。」


「そうですね。」


ダンジョン攻略パーティーはこうして終わった、その後はフェリクス達と近場の魔物の巣を殲滅したり、リンカやエルフリーデを連れて王都をデートしたり、夜に3人でグッチョングッチョンになったりしてすごしていった。


そうして1ヶ月すごしたあと、国王に挨拶をして領地に戻ることになり、今はレーベン王国の冒険者ギルドのグランドマスターであるヘルダ達に挨拶に来ていた。




「それでもう帰るかね、もう少し残って仕事を受けていってもいいんだよ?」


「ババア、お前がよこすのは塩漬けか難易度がやたらと高いのばかりだから、絶対に受けねぇからな。」


「ヘルダ様、私も領地をあまり長く離れられないので、さすがに……。」


「そうかい、まぁしょうがないね。 それで2人は真っ直ぐ帰るのかい?」


「ああ、アイヒベルク侯爵と一緒に真っ直ぐロットリッヒに行くよ。」


「私もロットリッヒに一度寄ってから帰ろうかと。」


「おや、珍しいね、アイヒベルク侯爵とはあまり仲がよくないんじゃないかい?」


冒険者嫌いで有名なアイヒベルク侯爵と一緒にロットリッヒに行くと聞き、ヘルダは疑問に思いそう聞いてくる。


「いや、陛下の命令なんだわ。 国内有数の貴族であるアイヒベルク侯爵と、俺が仲が悪いなんて国民に知られたら問題だからってな。 この間もそれでパーティーにアイヒベルク侯爵とその派閥の貴族も呼んだんだぜ?」


「なるほどねぇ、それでフェリクス様はなんでまた遠回りしていくんだい?」


「今年は帝国は暖冬だったようでして、例年の荷がもうロットリッヒに着いているそうなんですよ、それを見て行こうかと。」


「なるほどねぇ、レアメタルと……奴隷かい。」


北方の帝国の主な産業は鉱山から採れる鉱石と、多すぎる人工から口減らしとして送られてくる奴隷である。

しかし奴隷と言ってもカルタサーラとは違い、契約によって不当な乱暴や扱いは禁止されており、衣食住もちゃんとしていないと今度は主が奴隷になることになっている。 そして奴隷も永遠と奴隷のままではなく、働きによっては土地を与えられ小作農として自立する者も多い、なかには冒険者として一山当てて奴隷を数百人買い、その者達と一緒に村を造って男爵にまでなった者もいる。

ちなみにその冒険者の妻は帝国の貧乏男爵の末の娘で、やはり口減らしとして知識奴隷として売られてきたものだったそうだ。


「帝国の奴なら鉱山関係の奴もいる可能性が高いからな、もしいたら買い取って山に送ろうかと思ってな。」


「うちは逆に農奴ですね、鉱山の方は足りているんですが食料生産にたずさわる者が少なすぎでして。」


「ふぅん、まぁいいさね。 何にしろ帰るならペトラも連れていっておくれよ。」


「ペトラ嬢を?」


「ああ、フェルデンロットの冒険者ギルドのギルマスが決まってなかったろ? 当面の間はペトラを送ることになったのさね。」


「いいのかよ、あんたの右腕だろ?」


「仕方ないよ、1からギルドを造らないとだし、魔の森に近いから冒険者達も荒くれ者が多いらしいじゃないか。 とりあえず適任の者が見つかるまでペトラを送り込むことに決まっちまったんだよ。」


「ふーん。」


「と言うことなのでよろしくお願いしますね。」


「うぉ!」


「全然気がつかなかった……。」


いつの間にかケンとフェリクスの間にペトラが立っていた、気配がまったくつかめなかった2人は驚きながらもヘルダに了承すると翌日にはロットリッヒに向かうのだった。



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