異世界転移 156話目




「なんでこんなところでビバークしてんだよ……」


「あ、横にテントが張ってある。」


「本気で1泊するつもりっちゃね。」


落とし穴の途中で崖でロッククライマーがキャンプするように、テントを張り飯を食いながら休むドライト達。 それを見てケン達だけでなくセレナ達やマリルルナ達も唖然としている、キャロ達は危険だから助けないと!っと騒いでいるがケンはふと思い立ち腰のポーチのふたの止め金を外すと、


「おっとスベった!」


そう叫んで前乗りに倒れこむ、そして魔法袋になっているポーチから武器や防具にいつものポーションなど様々なアイテムが飛び出し、そのまま落とし穴に落ちていく。


「フゥー、暖かいスープで体も……ん?ら、落石です!」


「な、なんでこんなところに落石、違いますよ!?」


「これ兜ですよ?」


「こっちはメイスですし槍も落ちてきましたよ!?」


「スープを死守するざます!」


狭い板の上で器用に右往左往するドライト達、そんなドライト達を嘲笑うがごとく、とどめとして爆発系のポーションが降り注ぐ。


そして爆発したそれによりーーー


「あああ!? 爆発で吸盤が~!」


キャンプ地を支えていた吸盤が外れ、ドライト達5人は落ちていったのだった。




「うん、処刑の準備よ。」


「いやいやいや、不幸な事故だったんだ、見てただろ!?」


早速、シリカに捕まり磔台に縛りつけれられたケン、だがケンは不幸な事故で自分に非はないとどうどうと言い放っている。


「あなたの冒険のライブラリ、見たことがありますが今まで油断することなく物を落とすなんてありませんでしたわよね?」


「今回が初めてだ、酷い偶然だな?」


「偶然じゃねぇだろうが! お前また頭を失くしてぇのか!?」


「……リア姉……それやると、アンナちゃん達が……泣く。」


「お、お前まさかアンナちゃん達がいるのを分かっててやったんじゃねえだろうな?」


「そんなことあるわけない。」


カーネリアの質問に爽やかに笑いながら答えるケン、それを絶対にわざとだなと考えるシリカ達。 まぁわざとなのだがそれに気がつているセレナはと言うと、アンナ達を気にして制裁に踏み切れないでいた。


「あの皆さん、ドライト様達なら何の問題もないと思いますので、セーフティーゾーンに行きませんか?」


「今の騒ぎで落とし穴のふたも元通り閉まりましたし。」


そう言ってここまで案内してきた分身体はアンナ達をチラチラと見て気にしながらそう勧めてくる。


「……仕方ありません、この者の罰はクリスちゃんやミラーナさんにできうる限り酷い目に会わせるように頼むとしましょう。」


セレナがそう締めたが、納得がいかないケンは叫び抗議する!


「ちょっと待ってくれ! 俺に何の咎が有るって言うんだ、ちょっと転んでアイテムをばら蒔いてしまっただけだろうが!」


「そのせいでドライトが落ちていったでしょうに!」


ケンの叫びにセレナは目を細めて威圧しながらそう言うと、ケンは一歩後ずさりながら言うのだった。


「いや、だったら飛んで上に来ればよかったじゃないですか、あの背中の羽は飾りじゃないんでしょう?」


「「「……あ!」」」


セレナの迫力に丁寧に言うケン、そしてケンの言葉にドライトが落石ならぬ落アイテムを利用して下にバックレたに気がつくセレナ達であった。




「それでこの先に安全地帯があるのか?」


「そうですよ、もうすぐそこです!」


分身体に先導されて5層目と書かれた看板の近くまでやって来たケン達、そして分身体はそう言いながらその看板の方を指差している。


「こ、ここっすか?」


「この辺りも一応調べたんですが、そんなものなかったけどなぁ?」


ここに1度来たことがあるカウノとミルカはそう言うと周りを見回している。


「……おい、当然あそこも調べたんだよな?」


「へ?あんなところを調べるわけないじゃないですか、いやですね兄貴も冗談が上手いんですから。」


「まったくですよ、ハハハブゲラ!?」


ケンが指差した先を調べてないと聞いて、ケンは槍を横に振って2人を殴り殺す。


「おい、このバカ共をさっきの落とし穴に捨ててこい!」


「ちょっと待てケン、俺がちゃんととどめを刺してからだ。 それから捨てろ。」


「おい、いつまでも死体にじゃれてないでそこを調べよう、時間の無駄だ。」


ケンにアルヴァーとフェリクスがそう言ってカウノとミルカを踏んでケンが指差した先に向かう。 ケンも「まぁそうだな。」と言うとやはり2人を踏んでからそちら、5層目と書かれたプレートの隣に有るごみ捨て場と書かれたプレートとその下に有る扉に向かうのだった。


「よし分身体、開けろ。」


「はいはい、ちょっと待ってて下さいね?」


分身体はそう答えるとドアを横にスライドさせて半分開けると、今度は上に持ち上げて下半分を残す、そして残りを再度横にスライドさせて完全に開けると、現れた壁が音もなくドアとは逆の横にスライドして通路が現れる。


「また面倒な仕掛けを……。」


「結構広いな? これなら全員で使えそうだ。」


アルヴァーとフェリクスがそう言って中を見ている、扉の中は縦横100メートルほどの部屋になっていた。 だがケンだけはあれ?っと言う感じで外の通路から部屋の中と通路の左右を見比べていた。


「ケン、どうしたんだよ。」


「いや、この部屋の左右のどちらかに隠し部屋が有ると思ったんだが、無い……上に有るなこりゃ。」


「よ、よく気がついたな?」


「廊下と材質が違うだろ? それにここは柱が有る、上に何かがあって支えてるんだろ。」


「こりゃあれだな、空間制御とかしてると勘の良いやつや魔導師クラスにはバレるから、普通に見せてるんだな。」


「あなた達、開けなさいな。」


ケンの言葉にカーネリアも天井をシゲシゲと見ながらそう言ってそれを聞きながらシリカが命じると、分身体の1体が先端がフックになった棒を天井の溝に突っ込みクルクルと回すと階段が降りてきた。


「屋根裏ハシゴかよ……。」


「珍しい作りだな?」


「一般市民の家で見たことが有るが、こういう作りは初めて見たな。」


ケンは呆れながら、アルヴァーは庶民の視線で、フェリクスは貴族の視線でそれぞれ意見を言っているうちにハシゴは完全に下りきる。 そして下りきった瞬間にセレナが飛び上がり開いた穴から上に飛んでいく。


「ハシゴ意味ねぇな。」


「何にしろ上がってみようぜ、シリカ様達も上がっちまったし。」


「嫌な予感しかしませんぜフェリクス様、俺達だけで帰りませんか?」


「帰りてぇけど、そんなことをしたら後で何が起こるかわからんから、行くしかねぇだろ。」


セレナに続きハシゴを上がっていくシリカ達やキャロリン達、それを見て嫌々ながら提案するフェリクスだが珍しくアルヴァーが帰ろうと言う。




だがケンが本当に嫌そうに上がるしかないと言い、全員で嫌々ながら上に上がっていくのだった。



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