異世界転移 155話目




「うお! いつの間に!?」


「び、ビックリした!」


壁に出来たスライド式の扉を開き顔を出すアンジェ、ケンやマリルルナも気づかなかったので驚いているがテルミスだけは真っ青になって呆然としている。


「……私は……嘘つきじゃない……謝れ。」


「す、すいませんでした! そうですよね、アンジェ様がそんなくだらない嘘をつくわけありませんよね!」


テルミスは格上のアンジュラを嘘つき呼ばわりしたのを聞かれ、その事を追求されると土下座して謝り倒す。

そんなテルミスをふんぞり返って見下していたアンジュラだったが、後ろから押されてケン達のいる通路に押し出されてくる。


「アンジェ邪魔よ、あなたがそこに立ってたら出られないでしょ!」


「あら、お義母様だわ。」


「お、他のもそろっているな、ダーリンがいないけど……ってなんでマリルルナはアイアンクローされて、テルミスは土下座してるんだよ?」


アンジュラを押し退けて通路に出てきたのはシリカ、サルファ、カーネリアの3人だった。

そしてマリルルナとテルミスを見るとその惨状にギョッとして何してるのかと聞いてくる。


「あ、聞いてよリアさん、アンジェさんたら酷いのよ! 私に嘘をついたのよ!」


マリルルナはそう言ってアンジュラの非道を訴える、アイアンクローされたまま。


「まぁ、アンジェさんったらダメよ? こんなのでも最上級神なんだから。」


「嘘はよくないよな、嘘は!」


「……嘘なんてついてない……失礼な。」


サルファとカーネリアに怒られたアンジュラは、表情は変わらないが不満そうに嘘はついていないと言う。

そしてその間にシリカが何があったのか聞くと、ため息まじりにアンジュラを叱り始める。


「アンジェ、ダメでしょうにマリルルナで遊んだら。」


「……シリカ姉様まで……酷い。」


「あのね、マリルルナの聞き方も悪かったとは思うわよ、ケンの加護は肉体に宿ってるって聞いたんですって? それにたいしてあなたは「……そう。」って答えたんでしょ?」


シリカはアンジュラそっくりと言うか、本人としか思えない声でそう言うとアンジュラはうなづきながら少しずつシリカから離れる。


「そうね、確かに肉体に宿ってるわね、でも魂にも宿ってるのはあなたも知ってたでしょ? なのになんでそれを伝えないの?」


「……その方が……笑える事態になると……思ったから!?」


答えながらさらに距離をとるアンジュラだったが、いつの間にか背後をサルファとカーネリアに押さえられていてそれ以上は逃げられなくなっていた。


「はぁ……アンジェはマリルルナに聞かれて素早く考えたのね、ドライトが加護を肉体と魂の両方に付与させている事を黙っていれば、マリルルナがどこかで接触してドライトにバレて面白いことになるだろうって。

つまりアンジェは嘘はついてないけど必要な情報を与えなかったのよ、その方が自分にとって面白いからって。」


「ああ、たしかに嘘はついてませんね、だから必要な情報は渡してないだけだから嘘はついてないと言ってたのですね。」


「……それでも私は……嘘はついてない。」


「まぁ嘘はついてないよな、騙したけど。」


カーネリアの言葉が引き金となりマリルルナが怒りジタバタと暴れるが、セレナの指がガッチリと顔に食い込み離さない。


「ムキー! セレナさん離して、アンジェさんを1発殴らないと気がすまないの!」


「……お義母様……握り潰して。」


マリルルナは暴れ、アンジュラはマリルルナの頭を握り潰せとセレナを応援?していると、通路の奥から困った声がかけられる。




「あの、それでドライト様はどちらにいらっしゃるんですか?

アンナちゃん達は泣き疲れて寝てしまいましたし、今後のダンジョンアタックはどうすれば?」


そこにいたのはアンナ達を背負ったキャロ達、龍の躍り手だった。


「もう一度聞きますが、アンナちゃん達も泣き疲れて寝ちゃいましたし、地上に帰りますか?」


「帰るっても今日潜ったばかりだしなぁ……せめて軍団がいるって言う6層か、その手前の5層までは行きたいんだが。」


キャロは再度そう言うと戻るかと提案するが、ケンは潜ったばかりで帰るのもと難色をしめす。


「でもさ、アンナちゃん達を背負ったまま戦うのも危ないんじゃない? 一回戻ってアンナちゃん達だけでも置いてきた方がいいと思うんだけど。」


「それが本当はいいんだろうが、おいていったらおいていかれたって泣かないか?」


「あー……」


セイネはおいてこようと提案したものの、ケンの言葉にどうする?っと仲間を見るがキャロ達も困ったように顔を見合わせる。


「あれっちゃよ、ドライト様を呼んで分身体にお世話してもらえばいいんじゃないっちゃか?」


「「それだ(よ)!」」


リンカの言葉にケンとセイネが賛成するが、シリカが首を振りながらダメだと言う。


「ダメね、ドライトはお義母様から逃げてるから寄ってこない……来たわね。」


来ないと言いながら来たと言うシリカの視線の先に目をやると、ドライト達がワラワラとやって来ていた。


「ドライト、あなた母から逃げ「セレナ様です、こんにちわですよ!」……あら分身体?」


「……お義母様……この子達、見たことない。」


「旦那様もいないみたいですね。」


やって来たのは分身体達だけのようだったが、どうやら今まで見たことがない者達だったようでアンジュラが不思議そうに見ている。


「あれ、アンナ様達です。 お寝んねしちゃったんですか?」


「ちょっと私達もやることが有るんで、あとでで良いなら安全地帯に案内してあげますよ!」


そう言うと分身体達はゾロゾロと歩き始める、ケン達は皆で顔を見合わせるとその後を着いていくのだった。




「ここですね、ここの穴で何か有るみたいです。」


「ここは落とし穴が有るんですが、開きっぱなしになってて警報がなってるんですよ。」


分身体が口々にそう言う通りに通路に穴が空いていた。


「お義母様、あんな分身体はやはり見たことがないですね。」


「と言うかやっぱり旦那様が関与してるのですね。」


「あいつ等、警報が鳴ったって言っちまってるぞ?」


「……でも夫……嘘をついてるようには……見えなかった。」


「そりゃドライトさんが生粋の嘘つきだから分からなかったんじゃない?」


「マリルルナさん、あなたはまた分かりたいのかしら?」


「ヒィ!セレナさん指をワキワキさせながら近づかないでよ!」


シリカ達はドライトが関与してるのが決定的になった事を話ながら分身体の後を追いかけ、穴の中を覗きこむ。

そして、穴を覗きこんだ状態で固まってしまう、それを後から着いてきていたケンやキャロ達は不審に思い穴の中を除きこみ、同じ様に固まってしまうのだった。


そこで見たものとは?


「こんなところでビバークとは、やはりダンジョンアタックは色々と起こって面白いですね!」


「総統、とりあえず一泊したらさらに下に降りますか?」


「計算だと10分ほど自由落下すれば底に着くはずです!」


「やはり冒険はいいものですよ!」


「何にしろ今は暖かいスープで体を休めるざます!」


ドライト達、トップ冒険者パーティーのあら鍋が壁に吸盤を張り付けて、ロープをたらして板を敷きビバークしている姿だった。



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