異世界転移 144話目




「……うーん、やっぱり妊娠しているようには視えませんわ。」


「私もなんだよね、リティアでも見えないんじゃやっぱり違うんじゃないの?」


「でもドライト様は妊娠していると言ったんですわよね?

なら、妊娠しているはずなんでが……」


リティアとセイネはジッとミラーナを見ながら話し合っていたが、諦めたのかセイネだけがサルファとアンジュラの方を見て言ってくる。


「サルファ様、アンジェ様、どうしますか?

キャロちゃんやレイナも呼んでみますか?」


「キャロさんはともかくとして、レイナさんを呼んでも意味ないでしょう。」


「ここは数で勝負よ!」


こうしてセイネに呼ばれてドライトの眷族のキャロとナタリーに、シリカの眷族のレイナとおまけでシリカがやって来たのだった。




「リティアさんが視たんでしょう? なら私が見たって無駄だと思うんだけど。」


「うーん、私もちょっと無理かな? キャロちゃんはどうですか?」


「……ダメですね、リティアちゃんでもダメだったんですよね。

なら、やっぱり妊娠していないんじゃ?」


新たに現れたレイナ、ナタリー、キャロの3人はジッとミラーナを視たがやはり妊娠しているとは思えないと言う。

その言葉にミラーナだけでなくクリスやカリーナにシリヤ達の表情は暗くなる。


「うーん、でもドライトが妊娠していると言ったのよね?」


「アンジェじゃないですけど、旦那様はそう言う嘘は言わないんですが……」


「でも、神々を騙す時とか詐欺師も真っ青の二枚舌やらニセ情報を屈指して騙すんだけどな?」


「……騙す、セイネ。」


「ええっと、嘘言ったり何か用意しなくても、わざと何も言わずに疑心暗鬼にさせて騙すこともあるから、侮れない。 で、いいですかね?」


そんなミラーナ達を見ながらお茶をしていたシリカ達はそんなことを話している、ちなみにシリカは現れてミラーナが妊娠していると聞くと、「こんな寒いところに居たらダメでしょ!」っと言って手を振ったら辺りが春のように暖かくなり追加のテーブルと椅子を出してくれていた。


「セイネちゃん、よく分かりますね……」


「そりゃアンジェ様のことを思ってれば当たり前よ!」


「アレナムさんは視ないのですか?」


「あー無駄無駄、リティアとキャロが視て解らないんだから、私が視たって無駄よ。」


そして諦めたのかナタリー、セイネ、レイナはそれぞれの使える主人のそばに戻る。

もっともナタリーはドライトが居ないのでシリカのそばに、アレナムは諦めていたのか最初からカーネリアのそばに居たが。

ちなみにナタリー、レイナ、アレナムはそれぞれドライトの次席眷族神、シリカとカーネリアの筆頭眷族神である。




「あ、あの、龍の皆様に視てもらうのはダメなのでしょうか?」


龍や神々の話し合いに参加しても良いのかと思ったクリスだったが、ミラーナの妊娠はケンにとって、フェルデンロット家にとって一大事なことなので不敬とは思ったが思い切って聞いてみたのだ。


「私達? あー……私達はダメね、視ない方が良いわ。」


その言葉に答えたのはシリカだった、シリカは一度サルファ、カーネリア、アンジュラを見回してから手をプラプラして視ないと言う。


「ええっと、視ない方が良いですか?」


「ええ、私達だと力が強すぎて胎児に悪影響を与えちゃうのよ。

だから私達に比べて力が弱くて、力の使い方のうまいキャロちゃんとリティアちゃんに視てもらってるのよ。」


「ってかよ、ダーリンが言ったのならダーリンに視てもらえばいいじゃん。」


シリカの説明になるほどっと、クリスが思っているとシリカの隣に座っていたカーネリアが、そんなことを言いながら近くをフラフラと歩いていたドライトを捕まえる。


「あー……ドライト大将か、ダーリンはどうした?」


「総督ならまだ遠乗りに行ってますよ、アンナちゃんを乗せて。」


そう言ってドライト大将はカーネリアの手からスルリと抜け出してまたフラフラと歩いていってしまった。


「んだよ、肝心なときに何時も居ねえな?

アレナム達を探しに行かせてみるか?」


「リア、言い出しっぺなんだから探して連れてきなさいな。」


「いやサルファ姉、ダーリンはしっかりと隠蔽なんかしてるらしくって気配すらつかめないんだよ、だからこんなだだっ広い草原を探すよりも帰ってくるのを待った方がいいって。」


わざわざ探しに行こうとし始めるサルファとカーネリアに、クリスがフッと思いついた事を提案して実行してみることになった。




「アンナー、おやつよーーー!」




「今いくわー、なのよ~!」




「おお、反応が有ったぞ!」


「これでドライトを捕まえれば[カサカサ]カサカサ?」


「ただいまなのよ、今日のおやつはなにかしら?」


「キャア!?」


「……ビックリ。」


反応があったことにカーネリアが喜び、シリカがドライト上手く捕まえようと身構えて城門の方を見ていると、背後から虫の歩くような音ともにアンナの声がした。

慌てて振り向くとそこには体長5メートルはある蜘蛛に乗ったアンナが居ておやつが何かと聞いてきたのだった。


「だ、旦那様ったらモンちゃんにまで隠蔽をかけて!」


「……元々気配を消すの……上手だから気づかなかった。」


「そ、それよりもアンナちゃん、ドライトを知らない? ちょっとミラーナさん達が用があるのよ。」


「ミラーナお姉しゃまが? ドラしゃんは遠乗り中にセレナしゃまに見つかって、捕まって連れていかれたわ。」


「……な、なら屋敷の何処かに居るのね……セレナお義母様、いらっしゃいますか? ドライトも居ますか? ならそちらに行きますね。

屋敷の応接室に居るそうよ、行ってみましょう。」


そう言うシリカにうながされて、皆はケンの屋敷へと戻るのだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る