異世界転移 145話目




「がおーん! がおーん!」


「……ドライトの声ね。」


「中に居るみたいですけど、なんで鳴いてるんですかね?」


「入ってみればわかるって、たのもー!」


応接室の前まで来た一行は、ドアの向こうから聞こえるドライト鳴き声に立ち止まっていた。

シリカの横に立ち、ドアの開け閉めなどをレイナとしていたキャロも立ち止まり、様子をうかがっていたがカーネリアが前に出るとさっさと開けてしまう。


そしてシリカ達の目に飛び込んできたのは!


「ほどいてください、ほどきまくってください!」


両手足と両羽を縛られてソファーに転がされたドライトだった!




「いたわね、ドライト。

あなたミラーナさんが妊娠していると言ったそうね?

でもリティアやキャロちゃんが視ても妊娠していると出ないんだけど、どう言うことなの?」


「おやつ、おやつの時間です。

おやつをください!」


「おやつ? なに言ってるのよあなた。」


「さっきおやつの時間とクリスさんが言ってました、おやつです!」


シリカの質問におやつをくれと言うドライト、どうやらクリスのおやつの時間と言う言葉をしっかりと聞いていたようで、ドライトはガアガア言いながらおやつを要求している。


「そう言って逃げ出そうとしたから縛って拘束してるのよ、お説教はまだ済んでませんからね。」


「なるほど……ドライト安心して、おやつならほら……アンナちゃんが食べてるわ。」


セレナの説明に納得したシリカは、そう言って自分の後ろを指差す。


「へ?……があ!?」


「ドラしゃん安心してね、とても美味しいチーズケーキなのよ!」


シリカの言葉にドライトがアンナの方を見ると、アンナと何時の間に来たのかアクリーナとエルザ居てモリモリとチーズケーキを食っていた。


「の、残りは! 私の分は!?」


「モンちゃんにあげたのよ?」


「アンギャアァァァ!」


こうしてチーズケーキは食い尽くされ、ドライトはむせび泣くのだった。




「それでドライト、ミラーナさんは本当に妊娠しているの?」


「? さっきから何を言っているんですか?」


「キャロちゃんにリティアちゃんが視ても妊娠していると出ないんだけど、本当に妊娠しているの?」


シリカの言葉にミラーナやクリスは真剣な表情でドライトの答えを待つ、するとドライトはチーズケーキ(追加でクラーラが持ってきた。)を口に運びながら言う。


「してますよ? あなた達はもしかして魂を感知しようとしてませんか。」


「そんなの当たり前だろ? じゃなきゃどうやって妊娠しているのが分かるんだよ。」


カーネリアの言葉にシリカやキャロ達もウンウンうなづいていると、ドライトはあきれたように言う。


「人の子に魂が芽吹くのは個人差もありますがおおよそ妊娠3ヶ月頃です。

その前に視ても魂が芽吹いてなければ視れる訳がないじゃないですか。」


「ああ、そうでしたわね……それじゃあリティア、そこも踏まえて視てみなさいな。」


サルファがドライトの言葉に納得してリティアにそう命じると、リティアは「はい。」っと答えてミラーナの前に行くが、そこに立ちふさがる者が居た。


「ちょっとドライト、ミラーナさんが妊娠しているのか確認するんだから、退きなさいよ。」


それをシリカが退かそうとするが、ドライトはその手を逃れて反論をする。


手足に羽を縛られたまま。


「今のミラーナさんを視るのは不許可です。

何故なら魂の芽吹いてない肉体は非常にもろく、リティアのように力の強い者が不用意に視ると胎児に悪影響を、最悪の場合は胎児が死んでしまいますからダメですね。」


そして、ドライトの言葉に応接室に居た全員が固まったのだった。




「ド、ドライト、リ、リティアなら視ても大丈夫よね?」


少し青ざめながらシリカがそう聞くと、羽ばたいてもいないのにドライトは飛び上がり室内の皆を見ながら言う。


「リティアやキャロなら問題ありません、しっかりと力をコントロールして注意しながら視ればですが。

ちなみにレイナみたいにコントロールが下手だったり、雑に視たらえらいことになっちゃいますね。」


続けて言われたドライトの言葉に、キャロ達眷族神は真っ青になる。


そして同じように青ざめながらアンジュラが質問をする。


「……夫……もし私達が、視たら?」


「普通なら胎児が消滅しちゃうんじゃないですかね?」


そしてドライトの答えを聞いたシリカ達4人は―――一斉にミラーナに土下座するのだった。


「ごめん! 私達も視ちゃったのよ!」


「私も私のリティアさんでも視れなかったからつい!」


「俺なんか、かなり本気で視ちまった!」


「一切……妥協せずに、視た!」


シリカ達4人が土下座しているなか、それに文句を言いそうな眷族達はと言うと。


「わ、私、赤ちゃんを殺しちゃった?」


「あわわわ! な、なんとか出来ないんですか?」


「アハハハハ、シリカ様のために正義の刃を振るうと決めていたのに、アハハハハ。」


「………………そうだ、時間を巻き戻せばなんとかなりますわ!

それには龍神様や原始の神々を説得する? ……どうやればいいのです!?」


「ごめん! 私も視ちゃったのよ、でも妊娠したって出なかったから、黙ってたの!」


「よし、皆殺して無かったことにしよう!」


皆が混乱していた、1人混乱しすぎて恐ろしいことを言っている猫耳が居たが。


「……嫁とその眷族がやったことだから何とかしたいけど、リティアちゃんが言う通りに時間を巻き戻す位しか方法がないわね。

でも、それをお父様達や原始の神々が認めるとは思えないわ……どうしましょう。」


そしてセレナは何とかして助けようと考えているようだが、いい手が思いつかずに困ってしまっている。


そんな中で、応接室の扉の1つがいきなり開き何者かが入ってくる!




「俺の子は無事か!?」




それは天槍のケンだった。



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