異世界転移 141話目




「それでなんで嫁が増えたの? しかもエルフリーデ様って、私の順位が落ちちゃうんだけど?」


「ぜんぜん覚えていません、起きたら裸のエルフリーデとリンカが横で寝ていました!」


「そう……なら覚えてるところまで教えてくれるかしら?」


「ええっと、リキッド王国で戦勝パーティーをしてて、いい気分で子作りに入って、裸のエルフリーデに襲われたところまでは覚えているんだよ?」


「ハッキリと意識があったんじゃない!」


「すいませんでしたあぁぁぁ!」


カルタサーラとの戦いに勝利して半月後、ケン達はフェルデンロットの町に帰ってきていた。




「ってかね、なんで半月も帰ってこなかったのよ! おかけで執務が貯まっちゃってるんだからね?」


「……ミラーナ達が片づけたんじゃあ。」


「何言ってるのよ、正妻の私や重臣のハロネンにロボネンでも決済できない書類なんかも有るのよ!

ケンにはたんと働いてもらって、夜には子作りを頑張ってもらうわ!」


「夜だけ任せ……いや、耳を引っ張らないで!」


こうしてケンはミラーナに連れられて執務室に去ったのだった。


「それでクリス様、何故に半月も帰ってこなかったんですか?」


そして残されたハロネンがクリスとエルフリーデにリンカの3人に説明を求める。


「ええっと、夜はまぁご主人様の勢いに毎回負けていたんですが、日中は観光と買い物ばかりしていましたね。 ドライト様達が。」


「は、はぁ。」


クリスの説明に意味が分からないと、曖昧な返事をするハロネンやその他の重心達にクリスは戦勝記念パーティーの次の日の事を話し始めるのだった。




「やったちゃ! とうとうやったっちゃよ!」


「いやリンカさん、そんなに大声で叫ぶような事ではないかと……」


「へ? エルフリーデ様は何言ってっちゃか?」


「いや確かに私も率先してしちゃったけど、そんなに大声で初夜の事を話すのはどうかと……」


「何言うてるちゃ、私が言ってるのは種族としての格が上がった言うとるんや! 見るっちゃよ!」


リンカはそう言うと、エルフリーデの前に尻尾と顔を出す。

それを見てエルフリーデはハッとする、狐人のリンカの尻尾は5本で黄色だった、それが今や数は7本になり色は金色でうっすらと輝いているのだ!


「これでわちきは金毛狐人ちゃ、しかも7本尻尾と言うことはハイエルフや仙人クラスちゃよ!」


その言葉を聞きエルフリーデは慌てて鏡の前に行き自分の顔を見て驚く、耳はより細く長くなり目は猫の目のように縦に細長くなっていたからだ。


「……こ、この姿は伝え聞くハイエルフ……ま、間違いないわ、私はハイエルフになってる!」


自分でステータスを確認したのか、エルフリーデは涙を流して喜んでいる。

そこにドアを開けてクリスがやった来たが、踊って喜ぶリンカと滝のように涙を流して喜んでいるエルフリーデを見てギョッとすると、顔を背けてドアを閉めようとする。


「「ちょっと待って(っちゃ)!」」


「い、いえ、私はなにも見てませんから、どうぞ続けてください。」


「いえ、そう言うことじゃないのよ!」


「うちらは種族の格が上がったんで、喜んでたんちゃ!」


「格。 ですか?」


そう言われたクリスはエルフリーデとリンカを睨むように目を細めて見る。


「本当ですね、金毛天狐人とエルダーハイエルフになってます。」


「天狐人!?」


「わ、私はエルダーハイエルフに!?

って待って、なんでクリスさんにはそれが分かるのよ?」


「あ!」


クリスはしまった! っと顔をしかめてから少し考え、一礼すると普通に部屋から出ていこうとする。


「いや、普通に逃げようとしないでくださいよ!」


「クリスちゃん、何か特別なスキルをもらったか身に付けてるっちゃね! 教えるっちゃ!」


こうして看破の魔眼を持っていることを白状させられたクリスは、エルフリーデとリンカのさらに詳しいステータスとスキルを説明させられたのであった。




「……それで側室様、何故にそれで帰還が遅れたのですか?」


「ハロネン様、私は身分が低いのですから呼び捨てでかまいません。」


「いいえ、側室とは言え実質的に奥を差配していて主家の側室であるクリス様です。

そのような方を呼び捨てにするわけにはいきません、それで側室様、なぜに帰還が遅れたのですか?」


ハロネンにそう聞かれ、ロボネンやクッコネン達からも視線で問われてしまいクリスは諦めて何が有ったのか話し始める。


「実はうちのアンナに獣王様のお孫さんのアクリーナちゃんとエルフリーデ様の妹さんのエルザちゃんも同時に格が上がっていたんです。

それでドライト様がめでたいと言って観光とかを……」


「な、なるほど……いや、ちょっと待って下さい、アンナ様達や側室様はともかく、子爵様は帰ってきてもよかったのでわ?」


「……あら?」


ハロネンに言われてクリスもおかしいと気がつく、ドライトが設置したドアーが有るのだからそこを使ってケンだけでも先に帰ればよかったはずなのだ。

なのにケンは帰らずに昼はドライトやアンナ達と観光したりして遊び呆け、夜は寝ていた、色んな意味で。


「ご主人様に何故か聞いてきます。」


クリスはそう言うと立ち上がり、ソファーの方に向かうとソファーで寝っ転がっていたドライトを抱き抱える。

ハロネン達は居たことに気がついておらずギョッとすると同時に、何故にドライトを連れていくのか分からなかった、だがそうこうしているうちにクリスはドライトを連れてケンとミラーナが居るであろう寝室に向かう。


「ハロネン子爵、側室殿は何故にドライト様を?」


「クッコネン隊長、何かしら意味が(パリーン!)なんだ!?」


何故にドライトを連れていったのか分からずクッコネンがハロネンに聞くが、ハロネンはもとよりロボネンも分からず首を傾げていると何かが割れる音がする。


クッコネンが慌てて駆け出そうとすると同時に、ミラーナとクリスに、ドライトに捕まったケンがやって来たのだった。




「まったくもう! 仕事をサボっていたのがバレたからって窓を割って逃げようだなんて!」


「は、はぁ……それをドライト様に捕まえてもらったんですね。」


何があったのかと言うと、寝室に着いて中に入るとケンとミラーナはイチャイチャしていて後にしてと言われたが、クリスが何故に仕事をしに帰らなかったかだけ教えてほしいと聞いた途端に、ケンは窓を破って逃げようとして外で待ち構えていたドライトに捕まったのだそうだ。

そして捕まえたドライトはクリスに貰った賄賂クッキーを抱えてモリモリ食べている。


「さ、流石は側室様ですな、総督の行動を読んでらっしゃる。

何にしろ総督、決済待ちの書類が山になっておりますので早速執務室に。」


「い、嫌だ! 俺は嫁達とイチャイチャしながら遊んで暮らすんだ!」


「あなた、アホなこと言ってないで仕事をしましょう。 ……さっきの続きは夜にジックリと。」


嫌だ嫌だと泣くケンをミラーナがなだめていると、クッキーを紅茶に浸してしゃぶっていたドライトが爆弾を落とす。


「子作りですか? ミラーナさんとはお勧めしませんよ、もうお腹に子供がいますからね。」


ドライトがそう言って、クッキーの入った箱を抱えて外に飛んで出ていくと、書斎から一気に歓声が響くのだった。



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