異世界転移 136話目
「まったく、この人達は何しに来たんですかね。
笑いを取りに来たとしか思えない言動ですよ!」
ドライトの尻尾にぶちかまされた女神達は全員が伸びてしまい、ドライトがプンプンと怒りながらとどめとばかりに踏みつけている。
「ふぅ……不幸な事故で神が私だけになってしまったので、私が裁定を下しますよ!」
「お前が蹴散らしたんだろうが……それで、まともな裁定を下すんだろうな?」
神々のドツキ漫才をくだらなすぎてなにも言えずに見ていたケンだったが、ドライトが裁定を下すと言うので真面目にやるのか聞いてみる。
「私の人生におふざけはないのです! それでは裁定を「ま、待ちなさい!」蘇生しましたよ!?」
そしてドライトが裁定を下そうとした時だった、死んだと思われた女神の1柱、マリルルナが起き上がったのだ!
「あたたた……こ、ここは私が管理する世界よ、今回の裁定は私が下すわ。」
「なかなかの根性です、ここは譲りましょう!」
「酷い目にあったのじゃ……ドライトよ、ここはもともとわらわが創造してマリルルナが管理する世界じゃぞ。
ならばわらわかマリルルナが裁定は下すに決まっとろうが。」
「む? ユノガンド様も起きましたか、さすがは腐りきってても原始のか……」
次に起きたのは1番ひどくやられていたはずのユノガンドだった。
そんなユノガンドをさすがと言いながらドライトが見たのだが、ユノガンドの頭の毛が一部抜かれて禿げているのを見て、驚き固まってしまう。
「なんじゃ? なんにしろマリルルナよ、はよう帰って夕食にするぞ。 裁定を下すのじゃ!」
「へ? は、はい! ええっと……衝撃的な事があって何を言うのか忘れちゃったわ。
そ、そうそう、まずはカルタサーラの者達につぐ、今回の戦争に関しては私から言うことはないわ。
人は争うものだと私は認識しているし、豊かになるために戦うことも有るとは理解しますから……でも、隷属の魔道具ならともかく。
支配の魔道具を改造した事については別です!
聖典の原本を失ったそうですが写本が有るでしょうし、小国家群には私を信奉してくれている宗教の総本山も有ります。
そこに問い合わせるなり原本から写本を複製するなり手があったはずです!」
完全に主神モードになったマリルルナは、カルタサーラの者達にそう話て裁定を下す。
「カルタサーラの者達に告げます、今回の支配の魔道具を改造した件を調査し、聖王国の大聖堂にて私に報告しなさい。
期間は1年とします、もし約束が破られたら……カルタサーラには神罰として火が降り注ぐでしょう。」
マリルルナの裁定にカルタサーラの者達は悲鳴を上げる。
自分達が信じる神の裁定である、従わないわけにはいかないが本国に帰ってこの事を報告しても上層部が信じるか分からない状況で、1年で調査しきれるか分からないからだ。
そしてマリルルナはカルタサーラの者達を見回したあと、今度はリキッド王国の方を見る。
「リキッド王国については……停戦を命じる以外に特に言うことはありません。
強いて言えばなんでそこのアホは腰ミノなのか聞きたいだけですね。」
「……おお!? 道理で寒いと思った!」
幻覚が解かれてみんなの腰ミノと下着姿も普通の姿に戻ったのに、何故かケンだけまだ腰ミノ姿だった。
クリスが慌てて自分のマントをケンにかけている間に、リキッド王国の王太子がマリルルナの前に出て懇願するように言う。
「女神マリルルナ様の裁定に異議を唱えるつもりはありませんが、停戦となるならフォルトリはどうなるのでしょうか?」
リキッド王国としては停戦は良いとしても、さすがにフォルトリの返還はしてもらいたいのだろう。
王太子だけでなくその他の面々も真剣な表情でマリルルナの裁定を待つ。
「フォルトリですか、そこは……あら? なんかフォルトリが2つ在るような……在るわね、フォルトリが2つ在るわ。」
「……え?」
「なんで2つ……げ! 片方が溶けた、お前の仕業か!」
マリルルナはそう言うとドライトに殴りかかり、逆に殴り飛ばされる。
「えーっと、ドライトさんはフォルトリが攻撃される辺りから介入してたみたいね。
偽物のフォルトリを用意してそれを落とさせたのよ、本物のフォルトリの方は住民ごと軍隊なんかも全部眠らされてるわね。」
いつの間にか復活したメルクルナが、フォルトリの映像を空中に映し出して何が起こったのか説明してくれる。
「え、お、俺はカルタサーラで女を襲って……あれはなんだったんだ?」
するとカルタサーラの兵士の一人がつぶやく。
「……これって、スライムじゃない?」
「そうですね、スライムを凄い数を集めて町やら人に化けさせたんですね。」
「じゃ、じゃあ俺はスライムを相手に……!?」
さらに復活したエルナルナにメリルルナがそう説明すると、カルタサーラの男性兵士達が真っ青になる。 女性兵士はそれを覚めた目で見る、だがそんな兵士達にバカ笑いしながらとんでもないことを教えるものが居た。
「あははは、バカだわ! コイツら本当にバカだ、あんたらの相手をさせるなんてスライムが可哀想でしょ、これを見なさい!」
そう言ってチエナルナが手を振ると―――デカイ人形のコンニャクを押し倒して押さえ込み、突っ込んだり色々してる兵士達の映像が空中に写し出される。
「「「イャアァァァ!?」」」
カルタサーラの男性兵士達は真っ赤になり絶叫し、女兵士達は自家発電やろう! 一生こいてろ! っと大笑いしながら罵っている。
「っと、言うわけでフォルトリは大丈夫ですね、リキッド王国についてはこれ以上は私達から言うことは無いわ。」
「あ、ありがとうございます!」
エルナルナがそう絞めると、王太子はひざまずき感謝をのべる。
そんな王太子の横に1人の男が歩み出ると、エルナルナ達に質問をする。
「そりゃ良いけどよ、俺は何時まで腰ミノなんだよ。」
「へ……げ!? なんであなたはまだ腰ミノなのですか!」
なんとケンはまだ腰ミノ姿だった!
「マントなんかを羽織ると弾くし、脱ごうとしても脱げねえんだよ!」
「なんで……あ、それドライトさんが呪ってるわ。 私達も解くのは難しいから、本人に頼みなさい本人に。」
エルナルナにそう言われてケンはドライトの方を向くと、ドライトはマリルルナを追いかけ回していた、なので
ケンは手頃な木の棒を拾うとドライトの足元に差し込んだ。
「おろ?」
「のじゃ?」
「わあぁぁぁ!?」
足を棒で引っかけられたドライトはまるでボディプレスの様に手足を広げて、空中に飛び上がる。
問題はその着地地点にユノガンドとマリルルナが居たことなのだが、ケンには関係ない人なのでどうなろうと無視をする。
「ケンさん、何をするんですか、おかけでユノガンド様まで潰しちゃったじゃないですか!」
「おう、めちゃくちゃ狙ってやったように見えたがそれはともかく。 腰ミノから普段の姿に戻せや。」
「ええー、それ結構良い腰ミノなんですよ? 当分その姿で良いじゃないですか。」
「……お前がそう言うなら仕方がない、当分このままでいるか……そうだ、せっかくだからアンナ達にも見せてやろう。 勢いあまって金チラしてしまうかもしれんが「元に戻れ!」ったく、素直に直せよな。」
ケンが恐ろしい事を言い出したのでドライトは直ぐにケンを何時もの鎧姿に戻す。 するとケンは歩き出してしまい、どこかに行こうとする。
「ケン殿、どちらに行かれるんですか?」
王太子が気づいてそう聞くと、
「小便だよ。」
っと、ケンはそう言い残して森の中に入っていってしまうのだった。
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