異世界転移 137話目
「クソ!クソ!クッソォ!」
「カミロ将軍、今は我慢です!」
「とりあえずこのままカルタサーラを目指しましょう!」
「フォルトリが溶けたのはなんだったんだ!?」
偽物のフォルトリが見渡せる丘の上を35騎の騎馬が走る、それはカルタサーラのリキッド王国攻略軍の指揮官である、カミロとその側近達だった。
「クッソォ! 天槍のケンを討ち取るチャンスが、使えない奴等だ!」
「カミロ将軍、今はそんなことよりもカルタサーラに帰還するのが重要です!」
「そうですぞ! あのフォルトリは偽物だったようです、いったいどうやってあのようなことが出来たのも問題ですが、その事も議会に報告しなければですぞ!」
カミロはケンを殺すのを諦めきれなかったが、側近達はカルタサーラに報告のためにも帰還するのが先決だと言い馬を走らせている。
「天槍のケンと突然現れた竜が何か関わっているのは間違いないでしょうが、どの様な手段でやったのか調査しなければ、その時に暗殺を計かグェ!?」
側近の1人がカミロを落ち着かせるためにケンの暗殺を提案しようとしたが、呻き声と共に落馬してしまう。
「な、なんだ、どうしたんだ!」
「全員防御体制! カミロ将軍を守れ!」
「首に矢が刺さってたぞ、どこから射たれた、んだぁ!?」
突然に側近の1人が落馬したので、カミロは狼狽えたが側近達は素早く抜刀し盾をかざして防御体制を取る。
そしてその隣を走っていた1人が落馬した者が、首に矢が刺さっていたと叫ぶと同時に呆然と自分の脇腹を見る、そこには1本の矢が刺さっており驚くと同時に馬から落ちる。
「森だ! 左手の森から矢が飛んでうぉ!?」
さらにその隣を走っていた騎士が森から矢が飛んできたと叫ぶと同時にまた矢が飛んできた、だがさすがにそれは騎士が剣で切り落とす。
そして切り落とされた矢が地面に落ちていくのと同時に、矢を切り落とした騎士もまた馬から落ちる。
その目には矢が刺さっており、騎士はすでに絶命していた。
「射手が複数いるぞ!」
「バカな、全力で走る馬に乗る完全武装の騎士を射る事が出来る射手がそんなにいるわけなかろう!」
「何にしろ5騎着いてこい!
射手を始末するぞ!」
側近の1人が何人かの騎士を連れて森に向かおうとした時だった、最右翼を走っていた騎士の1人が自分のすぐ側を走る小さな影に気がつく。
「うん? 右手に1人ギャア!」
「貴様! グァ!?」
それに気がついた騎士は防ぐまもなくナイフで刺されてしまい落馬する、それを見た他の騎士が激昂して斬りかかるが軽くかわされてしまい逆に首を切り裂かれしまい落馬する。
「右手から奇襲だと!? 3人ついてこい!」
それに気がついた側近が3人の騎士を引き連れ小柄な影に対応しようとした離れた瞬間だった、後方から全力で走る騎馬に追い付いた新たな小柄な2つの影が10人抜けて出来た穴から入り込み、瞬く間に後方にいた3人の騎士を斬り伏せてしまう。
「今度は後方だと!?
ええぃ、森に向かったのを呼び戻せ、もう森からは矢が飛んできていない!」
「後方と右の敵が退きます! 森の方からまた矢が!」
「いったいどうなっているんだ!」
後方の敵は立ち止まり、右から来ていた敵はかなりの速度で走り去っていく。
そして森から再度、矢が飛んでくるためにその逃げていく小柄な影を追うことも出来ない、しかもこれが走っている騎馬に仕掛けられた奇襲なのだからカルタサーラの士官と騎士達は敵は強敵だとさとる。
「隊長、今のやつらは犬人族でした!」
「犬人族だと? 奴等はたいして戦闘力は高くないはずだぞ?」
「いや、聞いたことが有る。
犬人族は優れたリーダーに率いられると優れたハンターになると。」
騎士の1人が影の正体を見抜き報告するが、側近は犬人族に今みたいな芸当が出来るのかと疑問を口にするが、別の側近が犬人族は率いるリーダー次第で戦闘力が変わると口にする。
「今はそんなことよりも襲撃してくる犬人共を始末するのが先だ!
大方、一族が奴隷にでもされた恨みが有るんだろうが、正面から戦えば叩き伏せるのは難しくないはずだ!
それに森に行った奴等はどうしたんだ!」
「アロルド副将なら……ああ!?」
側近が2名に騎士が5名、計7名が殺られて残り28騎になってしまったために、森に向かった6名がまだ戻って来ないのかと側近が叫ぶ、それに答えて森に向かった6名の方を見た騎士が見たものは、宙に舞う側近と騎士達の6つの首だった。
「副将! 本隊が襲撃を受けているようです!」
「なんだと!? ッチ、こっちは囮か!」
「森からの気配が無くなりましたから、間違いないでしょう。」
「よし、左方向に転回して後方から襲撃を仕掛けてるやつらを始末する、続け!」
そう素早く判断した側近のアロルドは、部下に指示を出しながら自分も左に転回しようとした時だった。
「始末されるのは困るな、一応は俺の嫁達なんでな。」
前からいきなりそんな声がかけられたと思ったと同時にアロルド副将と騎士5人の意識は途切れたのだった。
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