異世界転移 135話目
「ご、ご主人様なにを!?」
「おおお!? な、何がおこったの?」
「あれ、私達なんで服を着て……」
「ふん、アイツがそこに居るのが答えだろ。」
振り下ろされた槍により、一帯に凄まじい轟音と魔力が荒れ狂った結果、シリヤが言ったようにみんなの姿が腰ミノと下着から戦闘が始まる直前の姿に戻っていた。
「ケ、ケン! どう言うことっちゃね! 開戦前の、魔術陣に入った時に戻ってるっちゃよ!」
「リンカ殿、あちらを見てください、そしてケン殿、アイツとはドライト様の事ですか?」
「ケンなんとか言う……へ? ちゃあ!?」
魔術陣に入った直後だったリンカが驚き戸惑いながらケンにそう言うが、ケンは一点を見つめたままで話さず、代わりに王太子がリンカに丘の上を見ろと言い指差した先には、王太子の言う通り飛び去ったはずのドライトが20メートルほどの大きさで椅子に座り焚き火にあたっていた。
その横にはアンナ達、幼女3人衆もいてブランケットにくるまりココアを飲みながらマシュマロを焼いていた。
「甘~いココアにマシュマロ……幸せなのよ~」
「焚き火の暖かさが最高ですね。」
「ああ……ついつい寝てしまいそうになるのじゃ……あ、ドライト様、みんなが気がついたようじゃぞ。」
そしてケン達が正気に戻ったのに気がついたエルザがドライトに声をかける。
ちなみにエルザがのじゃ喋りなのは家庭教師を務める宮廷魔導師のフリッツの話し方を真似してしまったからだ。
なんにしろエルザに指摘されて真剣な表情でアタリメを炙っていたドライトは顔をあげる。
「みなさん、気分はどうですか?
なかなか面白いものが見れませんでしたか?」
「やっぱりお前が介入していたのか……なんにしろテメエ、この程度のことには介入しないんじゃなかったか?」
ケンがそう言うと、ドライトはウンウンうなづきながら同意してくる。
「そうなんですよ、しょせんは人同士の小競合い。
それに高位の神が介入するのもどうかと思うんですよ? でもですね、管理神のマリルルナさんに介入してくれと頼まれてしまったので、私としては好きにやらせてほっといた方がいいと思うんですが介入させていただきました。」
ドライトがまた身勝手なこと言うのかと思い、身構えていたケンは無視できない単語についつい質問をしてしまう。
「女神マリルルナ様に、頼まれただと?」
「ええ、あ。 主神とのどつきあいが終わったようですね、そろって降臨しますよ。」
「な、なん……そろって?」
ドライトの言葉にケンが首をかしげていると、ドライトの真横の空間が歪み次の瞬間には6人の美少女、美女達が立っていた。
「私がマリルルナよ。 ドライトさんごめんなさいね、私の眷族にやらせても良かったんだけども、私の眷族はお人好しが多くて……それで、そっちのがカルタサーラの奴等なのかしら?」
突然現れた6人の1人がそう言って辺りを見回す。
その言葉にリキッド王国軍もカルタサーラ軍の兵士達も驚き見つめる、何故ならこの少女は自分をこの世界の最高神の名前を名乗ったのだからだ。
特ににらまれたカルタサーラの兵士達はその迫力に真っ青になっている。
「それで大将はどこなの?」
「逃げちゃいました。」
「……副官なり、副司令官は?」
「それも逃げちゃいましたね。
あ、参謀とか高級士官のみなさんならそこに居ますよ。」
ドライトがそう言ってカルタサーラ軍の参謀や士官が居る場所を指差す、そちらを見ながら頬をひくつかせてマリルルナは聞く。
「それじゃあ支配の魔道具を改造した奴は!」
「そんなのここに居るわけがないじゃないですか!」
「むきゃあぁぁ!! あだ!?
エ、エルナルナ姉さん何するのよ!」
ドライトの言葉に発狂したマリルルナだが、6人のうちで一番歳上に見える金髪を腰まで伸ばした女性に後ろから頭をチョップされて慌てて振り向く。
「落ち着きなさい、もともとドライトさん今回の件に介入する気は無かったの。
それをあなたの頼みだからと介入してくれたのよ、とにかくあなたの話をみなに伝えなさいな。」
「そ、そうね……ではカルタサーラの者に聞く、この支配の魔道具を何故改造した。
私は神託で使用は認めたが改造は認めなかったはずだけど、なぜだ。」
主神モードになったマリルルナはカルタサーラの者達をにらみながら問う。
しかしカルタサーラの者達は改造した経緯など知らない一般の兵士ばかりなので、困惑して黙ることしかできない。
「……答えられる者は居ないのか!」
それを見てマリルルナが怒り始めるが、1人の者がスッと手を上げて前に出てくる。
「カルタサーラおよび小国家には原書の聖典が残っていません、なので知らなかったふりをして改造しました。
反省はしておりません!」
「死にさらせ!」
話を聞いたマリルルナは発言した者に双剣で切りかかる!
「ぎゃあぁぁぁ、アタリメがぁぁ!」
そして発言していたドライトのアタリメが切り刻まれてしまった!
「ハァハァ……ドライトさん、これで許してあげる……いや、許してあげるから近づいてこないで! く、来るなあぁぁ!」
アタリメを切り刻んだマリルルナは20メートルのドライトが迫ってくるとそう言うが、ドライトは聞く耳を持たずにマリルルナにどんどん近づく。
ちなみにドライトも斬られていたが、傷すらついていない。
なんにしろヤバイと思ったマリルルナは慌てて逃げ出すが、ドライトもそれを追って走っていってしまった。
それを見たマリルルナにチョップをしてエルナルナと呼ばれた女性がため息をつきながら前に出てくる。
「ええっと、まとめるとカルタサーラはこの魔道具を改造してはいけないと知りながら改造したのね?
これに対する神罰は……メリルルナ、どんなのがいいと思う?」
「え、わ、私に聞かれても困るわよ! メルクルナ、あなたはどう思うの?」
「え? ……ドライトさんを殴れば良いと思うわ!」
「それでマリルルナがボコボコされてるんでしょうが! チエナルナ、あなたは!?」
「知ったことか、ハゲろ!」
「まったくもう! みんな役にたたないんだから!」
「「「自分もどうすればいいか分からないエルナルナ姉さんに言われたくないわ!」」」
エルナルナは似た雰囲気のメリルルナとメルクルナ、そして少し幼い感じのチエナルナに意見を聞くがろくな返事が帰ってこなかった。
それを怒るエルナルナだったが3人は自分でも分からないのに批判するなと、怒ってつかみかかる。
「だって魔道具を改造したのは国のトップとかでしょ、ならここに居る少数の国民にどんな罰を与えろと言うのよ! 髪を引っ張るな!」
エルナルナ達4人が取っ組み合いの喧嘩を始めると、それを遠巻きに見ていた1番幼いツインテールの少女が怒って怒鳴り付ける。
「この未熟者達が! この程度のことも決められぬとはそれでも栄えあるこのユノガンドの眷族か!
ここはわらわが裁定を下す、取りあえず皆殺し「マリルルナドロップキック!」ぶ!?」
自分のことをユノガンドと呼んだ少女が物騒なことを言いかけたが、マリルルナが背後からドロップキックをブチかまして黙らせる。
「マ、マリルルナ! お主は使える原始の神に「ドライト踏み潰しです!」プギャ!?」
1度は倒されたユノガンドだったが、さすがは腐っても高位の神である。
即復活して起き上がり、マリルルナを糾弾しようとしたがドライトに踏み潰されて完全に気絶する。
「やった!?」
「みんなチャンスよ!」
「殺ってやる!」
「邪神戦争の時にも封じていた奥義、今こそ見せてあげるわ!」
「髪の毛を1本1本、丁寧に抜いてハゲにします。」
それを見たエルナルナ達5神が一斉に襲いかかる。
特に本当に髪を抜き始めたチエナルナは本気で怒られるから止めた方がいいと思う。
「ふぅ……どつきあいは負けたけど、一矢報いたわ。
ドライトさんあり……へ?」
エルナルナがすごく良い笑顔でそう言いながらドライトを見る。
そんな彼女が見たのは迫り来る銀色に輝くの龍の尻尾だった。
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