異世界転移 131話目




「オオオ! カルタサーラのくず共が! ワシは決して降参なぞせんぞ!」


「アクロフ様、アクロフ様だけでも逃げてください、血路は私が開きますから!」


「エルフリーデ様、くぅぅぅそこを退け! 皆はなにをしているか、エルフリーデ様とアクロフ様をお助けするのだ!」


現在アクロフとエルフリーデはカミロ率いるカルタサーラ兵に囲まれており、それをフリッツがなんとか助けようとしていた。




「囲め囲め! アクロフは殺してもかまわんがエルフリーデは捕らえるのだ! そしてエルフリーデを人質に本国まで撤退するぞ!」


「カミロ将軍はどこだ!」


「向こうで指揮をとっている!」


「レアンドロ副将は!?」


「とっくに逃げたよ!」


カルタサーラの本陣を守っていた精鋭兵は指揮官を失い混乱していた、そしてそこにアクロフとエルフリーデが攻め混んできたのだが、カミロはそれを逆に利用して逃げようと考えていた。


つまりエルフの王女であるエルフリーデを捕らえようと考えたのである!


「ちくしょう、あのクズが逃げ足ばかり速くなりやがって!

お前らあのエルフ達を近づけるな、あれがエルフ共の精鋭のはずだ!」


「「「ハッ!」」」


カミロの号令に合わせて精鋭兵がさらにアクロフ達を囲みエルフリーデを捕らえようとする。


それをアクロフが必死になりながら斧を振り回して防いでいると、頭の方から声がかけられる。


「おお、これはもうダメだ、俺のオッパイだけ助けて熊は諦めよう!」


「私もそれに賛成したいんやけど、他人の目が有るから言い訳しとかんと。

アクロフ様、出来る限りの助けるっちゃ! さぁケン、これで良いっちゃよ、エルフリーデ様だけ助けて逃げるっちゃ。」


「リンカ! アクロフ様も助けないとだろうが、王よ今行きます!」


ケンとその背中にしがみついてちゃっかり着いてきたリンカが、アッサリとアクロフを見捨てようとするが、ついてきたハクトウは納得せずにアクロフの元に舞い降り槍を振り回して戦い始める。




「ちょっとケンにリンカさん、助けなさいよ!」


「大丈夫だ! オッパイサンドのためにもお前だけは助けるからな!」


「オッパイサンドってなんだっちゃ?」


「今お前のオッパイが俺の背中に押し当てられている、そしてエルフリーデを助ければ前から抱きついてくるはずだ、するとリンカとエルフリーデの素晴らしい巨乳に俺が挟まれる。

これがオッパイサンドだ!」


「おお、すっごいアホだっちゃ、聞いた私が間違いだったよ!」


「「「アホなこと言ってないで何とかしろ!」」」


ケンとリンカの漫才に、アクロフ達は耐えられなくなりそう叫ぶ。


「仕方ねぇなぁ……やべ、フン!」


「あぶないちゃよ!? ほりゃ!」


ケンがリンカを背負ったまま高度を落とすと、弓と魔法で攻撃される。

それをケンが槍で矢を払い落とし、リンカが結界を展開して魔法を弾く。


「あの男だ、あの男を殺せ!」


「カミロ将軍、無茶を言わないでください!

お前ら、牽制だけしてアクロフとエルフリーデの方に集中攻撃だ!」


「貴様! 俺の命令が聞けないのか!」


「しょ、将軍!? ギャアァァ!」


「あいつだ、天槍のケンを殺せぇ!」


そんなケンに気がついたカミロがケンを殺せとわめき散らす、それを諌めてアクロフ達に集中しろと言った参謀は斬り殺されてしまった。


「な、なんちゃね、あのイケメンはケンに何かの恨みがあるんかね!?」


「見たこともないやつだが、イケメンだから気に入らずに殴ったことがあるかもしれん。」


ケンはリンカにそう言って首をひねる、リンカはそんなケンを「さすがっちゃ。」っとほめている。


……ほめてるのか?


なんにしろ知らん人扱いされたカミロは激怒して叫ぶ。




「貴様! 忘れたとは言わせんぞ、俺の女を奪い取りやがって!」


「………………いや、本気で覚えがないわ。 マジでお前誰よ?」


「カルタサーラの評議長を代々排出しているスカルファロット家の次男、カミロだ!」


「人違いだな、スカルファロット家に知り合いはいないぜ。」


「ほ、本気で忘れたのか!?」


カミロの意識がそれたことで指揮するものがいなくなり、アクロフ達は圧力が弱まったのでジリジリと包囲の輪から出かけている。


ケンはそれを狙って知らないフリをしていた。


わけではなく。


アルマやポリー達、エーコンの一族を追いかけ捕らえて、奴隷にしようとしていたカルタサーラの奴隷狩り部隊の指揮官だったカミロのことなんか、綺麗に忘れていたのだ!


ちなみにクリスかカリーナにシリヤが居れば話は違っていたのだろうが、クリス達3人は安全のためリキッド王国の本陣に残していた。




「名前は知らんが、青い髪を肩でそろえた女をロットリッヒで俺から奪い取っただろうが! 忘れたとは言わせんぞ!」


「名前を知らない女って、なんかむちゃくちゃなこと言っとるけど、本当に知らないっちゃか?」


カミロは完全にキレて空中に浮いているケンを怒鳴り付けている、その勢いにリンカも多少ひきつりながらケンにそう質問をする。


そして質問をされたケンはジィーっとカミロを見ながら、青い髪を肩でそろえていてロットリッヒ自分が手に入れた女のことを考えていた。


『……条件に合うって言えば、パールのことだよな。 ってことはあいつは……パールに罵られてアへってた変質者か! よし、殺そう!』


カミロのことを思い出して、嫁達の視線のなかに入れないことを誓ったことも思い出したケンは即座に決断をするのだった。



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