異世界転移 132話目




「おいリンカ、俺の前にあるポーチの一番右のだが、その中に有る特別なのを……そりゃ俺の股間の特別な槍だ!」


「何てものを握らせるっちゃね!」


「バカやってないでポーチの中に有る特製ポーション、おお、それだそれ。

そいつを持てるだけ持ってろよ? ……よし投げ落とせ!」


ケンはリンカを背負ったまま高度を上げる、下からカミロやアクロフにエルフリーデの文句やらが聞こえた気がしたが黙殺して。




ドカーン! ドカーン!


「ギャアァァァ!」


「こ、こっちにも降ってくるぞ!?」


「け、結界をすり抜けてくるんだけどなんで!?」


ドカーン! ドカーン!


「に、逃げろ! 撤退するんだ!」


「貴様ら逃げるな、ケンとアクロフを殺してあのエルフを捕まえろ!」


「む、無茶言わねぇでくれ!」


リンカの手で投げ落とされた特製ポーションは特製だった。


何がかと言うと爆発力はもちろんのこと、カルタサーラの精鋭兵が持つ魔道具や高価な防具などをほぼ無効化しているからだ!


ただ問題も有った、何がと言うと無駄に魔力の高いエルフリーデが張る結界や、国王のアクロフが身に付けている防具もほぼ無効化しているのだ。


さらに重大な問題点として―――


「凄いっちゃ凄いっちゃ! すごい爆発だっちゃよ! アハハハ、もっと爆発するちゃよ!」


何かのスイッチが入ってしまったリンカが、目標も何も考えずにばら蒔いている事だった!


「ちょっとちょっとリンカさん、こっちには……キャアァァ!」


ドカーン!


「エルフリーデ殿、そっちはわあぁぁぁ! リンカはどこを狙っとるんじゃあ!」


ドカーン!


「狙いも何もないぞあれは! 誰か止めろおぉぉぉ!?」


ドカーン!


逃げ惑うカルタサーラ兵とエルフリーデ達、降り注ぐ爆発と火炎の高威力のポーションが相手では逃げるしかなかったのである!


ちなみにケンがいる高さまで飛び上がれるハクトウは、最初にばら蒔かれたポーションの直撃を受けて、すでに気絶していた。




「アハハハ! もっとっちゃ、もっと逃げるっちゃよ! ……あれケン、ポーションが無いっちゃよ!」


「蒔きすぎだアホ! クッソーあの変質者、まだ生き残ってやがるじゃないか!」


「あのイケメンちゃか。 ……なんかエルフリーデ様と一緒に逃げ惑ってるちゃね?」


「何にしろ奥の手はノーマルしか残ってない、あの変態野郎を完全に消滅させるには本当に奥の手を使うしかなくなった!」


「本当の奥の手?」


「ああ……龍魔法だ。」


「おお、なんか凄そうちゃよ! 早くやるっちゃ!」


特別な奥の手を使いきってしまったケンは、こんなことに使うべきでない龍魔法を使おうとする。


「ちっょと周りに被害が出るかもしれないが、いくぞ!」


「キャハハハ!いくっちゃよー!!」


そして唯一止められるリンカはスイッチが完全に壊れたようで、笑いながらケンを煽っている。


そしてーーー!


「【日よ日よ、天を照らし焦がす日よ、龍の呼び掛けにより現れ、我が敵を照らし焦がせ!】」


ケンが龍魔法を唱えると、戦場上空にもう1つ太陽が現れる!


っと言うかテクタイトが昔使って島ごと邪神を滅ぼした龍魔法なので、ちょっと周りに被害が出る程度ではすまない龍魔法だった!


そしてもう1つの太陽は輝きを増して周囲を焼き尽くすかと思われたが、その輝きは小さくなっていく。

そしてもう1つの太陽は消えてしまうが……中心があった場所にドライトが居た、しかも20メートルの姿で。




「ちょっとケンさん! 龍魔法をこんなことに使わないでくださいよ、母様とかにバレたら怒られちゃうじゃないですか!」


「ド、ドライト! あいつだ、あいつをぶっ殺せ!」


「はぁ? なんにしろ私達はリキッド王国の大聖堂に社会見学に行ってきます。

龍魔法は人同士の戦争になんか使わないでくださいよ? まったくもう……。」


ケンがカミロ指差してそう言うが、ドライトはカミロをチラッと見たあと面倒くさそうにそう言って向きをリキッド王国の首都に変えてしまう。


そしてケンは気がついた、なんでこいつは20メートルの姿で現れたのかを―――


「あ、ケンのお兄ちゃんなのよ、行ってくるの!」


「お祖父様です、行ってきま~す!」


「姉者じゃ、私も行ってくるのじゃ~!」


頭の上にアンナ達を乗せていたからだ、手に手にでんでん太鼓を持って。

何にしろ頭にアンナ達を乗せて去っていこうとするドライト、そんなドライトが背を見せると他にも4人の少女が乗っていることに気がつく。


「あ! 変質者!」


「何ですか? ああ! あれはパール達を浚った人です!」


「え? あ、本当だ! 罵ってもらうのが趣味の変態だよね!」


「え~? あ、本当だ~間違いないよ、変質者だよ~。」


パール達、犬っ娘+ワンが背中に乗っかっていた。


よくよく思い出せば、今回連れてこなかった彼女達は草原に遊びに行くかアンナ達と遊んでいることが多かった。

つまりアンナ達が来たので、彼女達も着いてきたのだろう。




何にしろ声を出したことでパールはカミロに見つかってしまう。

そしてパールを見たカミロは最悪の選択をしてしまうのだった。



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