異世界転移 125話目




「それでドライト様、ケンはもうダメなのかしら?」


「ダメって何がですか?」


「アンナ達に見せて興奮してたのですよね? ならもう……小さな娘じゃないと、ダメなのかな、って。」


「どうなんですかね? さっきのは私の冗談ですし。」


「……フリッツさん、ケン達を呼んできて。」


こうしてケンの冤罪は晴らされたのだった。




「ひでえ目にあった……」


「ご主人様、申し訳ありませんでした。」


「アクリーナ様に変なことをするかと思っちゃよ。」


「日頃の恨みが少し晴らせたわ。」


ボロボロになったケンが戻ってくると、早速にミラーナがドライトに支配の魔道具を見せて質問をする。


「それでドライト様、こちらなんですが、カルタサーラはどうやってこれを用意したのですか?

1つ作るのに、白金貨1枚かかると言われているのですが……」


「……アンナちゃんの朝御飯の支度をしなければです。」


そう聞かれたドライトだったが、魔道具をチラリと見た後にフワリと飛び上がりアンナの所に行こうとする。


「おい待て、ちゃんと質問に「ケンは黙ってて!」ミラーナ?」


「ドライト様、質問に答えられないのなら……これでどうですか?」


そう言うとミラーナは[パンパン!]と手を叩く、すると応接室のドアが開きアンナにアクリーナとエルザの幼女3人組が入ってきた。


エプロンドレスを着た、メイドの姿で!


「ドラしゃん朝御飯なのよ?」


「パンとご飯のどちらが良いですか?」


「食べさせてあげるのじゃ!」


そう言ってドライトに近づく3人組、そしてドライトもフラフラと3人組に向かおうとするが。


「みんなごめんなさいね、ドライト様は朝御飯は要「何でも聞いてください、できる範囲で答えますよ!」お話が終わったら食べるそうよ。」




速攻で落ちたドライトによると、これはカルタサーラで開発されたもので、支配の魔道具を改良したものなのだそうだ。


「改良と言うか改悪ですね。

1ヶ月も持たないですし、薬を使って思考能力をほとんどなくした状態じゃないと効果がないですし。 その分、落ちた戦闘力は凶化、凶暴化させることにより補ってますね。


その分、安くなってますがそれでも金貨1枚かかります。

ま、私から言わせてもらえばゴミですね。 あーん、パクン! 美味しいです!」


そう言うとドライトは隣に居たアンナに口を開ける、その口にこれでもかとジャムを塗りたくったパンをアンナが放り込む。


ミラーナは朝食はこの魔道具について話し合いが終わってからと説得しようとしたが、ドライトがそれじゃあ一切話さないと言って聞かなかったので、仕方なく応接室に朝食を用意して、ドライトはアンナ達を周りに侍らせて朝食を取っていた。


「モグモグ……ゴックン! それでですね、この魔道具を改造したのはカルタサーラの技術者なんですよ、なのでこの戦争は人間同士のくだらない争いなので、私達龍やこの世界の神々は介入しません。」


「……そうですか、仕方がありませんね。

最後に1つだけ良いですか? ありがとうございます、なぜ強力な魔眼である看破や龍の目でその事を見破れなかったんですか?」


ミラーナに聞かれたドライトがうなづくと、なぜケンやクリスがそれを視れなかったのか聞いてきた。


「そりゃこれは何かの力でそういう効果が付与されてるわけじゃないですからね、魔道具の構造や方式などの知識が無ければ分かりませんよ。

魔眼にしろ神眼にしろ、鑑定するなり見破るにはそのものに対する知識や見識が必要なんですからね、頼りすぎは良くありませんよ。


あ、今度はそちらのスコーンをください!」


「はいドライト様!」


「お茶も入ったのじゃ。」


ドライトはアクリーナにスコーンを要求すると、アクリーナがジャムとクリームを乗せたスコーンを口に放り込み、エルザが紅茶を差し出してくる。


「モグモグ……ゴックン! ズズズ……美味しすぎますよ!」


「あ、あの、この魔道具はドライト様や神々には問題ないんですか?」


朝食を続けるドライトに、今度はクリスが質問をする。


「……問題ないわけではないんですが、この程度で介入すると言うのもですねぇ。

それにこの世界の管理神はマリルルナさんです、彼女もボスとのドつきあいのケンカの勝負がそろそろ着きそうなので、かまってる暇はないでしょうね。」


そう言うと、ドライトは紅茶のお代わりをユックリと飲み始めるのだった。




「もう少し教えてもらいたいけど、これが限界ね……」


ミラーナはそう言ってドライトを見る、ドライトはお代わりの紅茶を飲み干すと今度はアンナ達を席に着かせて朝御飯の用意をし始めていた、しかもいつの間にかステラとルチルの姉妹も着席しており、ミラーナやクリスが質問をしようとすると睨み付けて妨害していた。


「朝はしっかりと取らないとですよ、干物に卵焼き、ご飯に味噌汁です!

納豆は好き嫌いが有るのでお好みで!」


「また和食オンリーだな……俺達の分は?」


「どうぞどうぞ、たんと有りますから!」


自分達の分も有ると知ったケン達はそれぞれに席に着き、食事を始める。


「それでケン、クリスとカリーナにシリヤだけ連れていくんでしょ?」


「ああ、観戦武官ってやつだな、それでこの面子はヤバくなったらバックレるのと身バレしないためにだ。」


ミラーナの問いかけにそう答えたケンはご飯を一口食べる。


「クッソ美味えなぁ……」


「食事中に下品な単語言わないでよ! ……それでケン、勝ち目は有るの?」


「そう言われてもなぁ……実際にフォルトリで戦ったことの有るやつから話を聞くなりしないと、まだまだ分からないことも有るからなぁ。」


「そう……この干物も美味しい、けど戦乱の時代に戻るのかと思うと、心配で味も分からないわ……」


ミラーナがそう言いながら干物をモソモソと食べていると、それを見かねたアンナが話しかけてくる。


「ミラーナのお姉しゃん、心配事があるならみんなに相談するのよ? 特にドラしゃんに聞けば色々と教えてくれるわ!」


「アンナちゃん、ドライト様はもうこれ以上は教え「特別にもう1つだけ教えてあげます!」……あ、ありがとうございます。」


アンナに甘いドライトはもう1つ教えると言うので、ミラーナは質問しようとしたがドライトはそれを手で制して話し始めてしまう。


「いいですか、支配の魔道具は強化ではなく凶化が付与されているのです、身体などが強くなるのではなく、一時的に発狂させて恐怖心や反抗心を無くさせて目についた相手に突っ込ませてるのですよ。」




そう言うとドライトはアンナ達のご飯の世話に戻ってしまう。


「はぁ……たいした情報はもらえなかったわね。」


「……いや、こりゃかなり良い情報をもらったぞ。

こいつに身体強化なんかが付いていないって事は、精強な兵を持つレーベン王国やエルフに獸王国の兵だったら数の差が有っても十分に対応できるはずだ。」


「え、でも城塞都市のフォルトリですら落ちたのに、大丈夫なの?」


「ああ、詳しい話を聞かないとだが、フォルトリが落ちたのはある意味奇襲だな。

まぁ、詳しい話は実際に商王国に行ってみてからだな。」


こうしてケンは、商王国に向かうことになったのだった。



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