異世界転移 126話目




「お久しぶりです、商王様。」


「おお、エルフリーデ殿、援軍感謝する!」


「リキッド国王よ、久しいな。

商王国の危機と聞き、とりあえず5千だけだか援軍を連れてきたぞ!」


「アクロフ殿、獣王国の精鋭5千がいれば勝ったも同然、この礼は必ずやさてもらうぞ!」


「……通りすがりのただの旅人です。 帰っていいっすか?」


「……誰?」


俺達は商王国に着いたのだった。




「いやですね? 商王国の大聖堂を焼け落ちないうちに見ておこうと思ってやって来たらですね、そこ熊の化け物に捕まって、あれよあれよとここまで連れてこられてしまいまして。」


「ちょっと! 大聖堂が焼け落ちるって、商王都が落ちるってことじゃないの、失礼すぎるでしょ!」


「打ち首になる前に謝れ!」


「本当の事を言って何が悪い! 二足歩行する気持ち悪い熊とオッパイは黙ってろ!」


「お前、気持ち悪い熊ってそれはないじゃろ!」


「オッパイ以外も評価しろ!」


アクロフとエルフリーデが文句を言ってくるが、それを無視していると商王がケンをジロジロと見てからハッとして叫ぶ。


「ケン、ケンではないか!

久しぶりではないか、やっと借金を返す気になったのか?」


「ケン? 私の名はカンと言うのですが? 何にしろ、もうろくした爺のせいで知らない借金を背負いたくないので、帰らせていただきますね。」


俺はそう言うと、少し後ろで聞いていたクリス達をうながして謁見の間から出ようとするが、それをクリス達に止められる。


「ご主人様、借金って何のことですか?」


「あとご主人様、商王様をさらっともうろく爺扱いしてます。」


「絶対に知り合いですよね?」


クリス達に退路を阻まれているうちに、商国王は追撃を仕掛ける。


「ケン、お前が壊した大聖堂の修繕費、白金貨100枚を早く返せ。」


「……ご主人様?」


商国王の言葉を聞いたクリスは、ニッコリと笑いながらケンに迫るのだった。




結局、クリスによって洗いざらい吐かされて分かったのが、かつてケンは商王国のフォルトリにあるダンジョンから産出される鉱石を得るために、商王都にも立ち寄ったのだそうだ。


そしてその時に女神マリルルナと商業の神を祭る、この大陸でも屈指の大聖堂を見学したのだが、建築方法や彫刻などの美術品をよく見ようと立ち入り禁止の場所まで入ろうとして、聖騎士や衛兵と揉めて大聖堂の一部を倒壊させたのだった。


そして本来なら犯罪奴隷となるところだったケンを、助けたのが今も目の前に居る商国王、リキッド十二世だった。

すでにソロのCランクの冒険者として、レーベン王国で注目され始めていたケンの事をリキッド十二世は知っていたのだ、そしてダンジョンに潜るなら国で指定した薬草や鉱石を採ってきたらその価格分を修繕費に当てて、返し終わったら罪を無かったことにするとなり、白金貨1000枚分を集めることになったのだ。


商王国もリキッド十二世も、少しは補てんできれば程度の考えだったが、1ヶ月もしないで帰ってきたケンはなんと、白金貨1500枚分も採って帰ってきたのだ!


「あれでチャラだろうが!」


「ケン、お主1000枚分しか置いていかなかったじゃろ、手数料が10%かかるんじゃから差額の100枚が借金になるんじゃ!」


「アホ言うな! 俺の手間賃が50%のところを、55%にしてやってその分は渡してな……いや、今のは忘れろ。」


「お主、そんなにパクってたのか!? しかも減るんではなく増えるとはどう言うことなのじゃ!?」


結局、ケンの財布を握っているクリスが白金貨100枚を支払い、過去の罪を無かったことにしてもらい事を納めたのだった。




「また俺の老後の資金が……」


「ケンよ、お主はアチラコチラのダンジョンを走破してアホみたいに儲けたはずじゃろ、100枚位で何を言っとる。

それよりもお主、レーベン王国で貴族に列せられて今は子爵だったはずじゃろ、それがこんなときに商王国に来るとはどう言うことじゃ?」


「陛下、私の名はクリスともうします。」


ケンが色々と黄昏ているために、代わりにクリスが前に出て説明しようとしたがそれを商王は手で制する。


「うむ、第二夫人じゃったな、元々は奴隷じゃったがケンと正妻のミラーナ夫人に気に入られているとか、それでそちらがカリーナ

夫人とシリヤ夫人か?」


「な、なんで!?」


「私達のことまで知ってるなんて……」


エルフリーデの背後に隠れていたカリーナとシリヤは、自分達の事まで知られているのに驚く。


「商王国は各地の商人と繋がってるって、言われているんだ。

俺の事もしっかりとマークしてたんだろうな。」


ケンがそう嫌そうに言うと、商王がニヤリと笑いながら話す。


「ケンほどの者の事を、放置しとくわけにはいかんからな。

さすがに見た目が変わっていたので最初は気がつかんかったが、それなりに情報はつかんでいるかならな?」




こうしてケンは数年ぶりに、商王国にやって来たのだった。



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