異世界転移 124話目
次の日の朝、ケンはクリスにカリーナとシリヤ、アランとその部下達に命令していた。
「よし、取り合えずアズ・エーギク・エーレ・ファに行く面子は、俺とクリスにアラン、カリーナとシリヤの4人だ。
連絡係として騎馬隊からも10人連れていくが、完全に連絡係としてだ、いいな?」
「「「了解しました!」」」
ケンの言葉にアランと連れていく騎兵達が返事をして出ていく。
「ご主人様、奥様やチェルシーちゃん達は連れていかないのですか?」
「ああ、冬で工事も止まっているとはいえ、執務は有るからな。
ミラーナはもちろんハロネン達も連れていけん。
クッコネンは連れていきたかったが、あいつも連れていくとフェルデンロットの治安や防衛に不安がでるからな。」
ケンの説明に、クリスは納得したのか軽くうなづいている。
だがその隣にいたカリーナが疑問をぶつけてくる。
「ご主人様、なんでチェルシー達を連れていかないの、情報を集めるなら斥候の彼女達の方が私とシリヤよりも良いんじゃない?」
「今回はエルフの国だけじゃなく、下手したら商王国にまで行くかもしれん。
そしてそこで情報を集める、カルタサーラとレーベン王国が開戦になったときに有利になるようにだ、そして今回は隠密行動になる。
で、お前らあの犬っ娘3人+ワンが隠密行動出来ると思うか?」
「「「……無理ですね。」」」
ケンの言葉にクリス達3人は少し考えて即答をする。
「ってかよぉ、あいつ等は斥候のクセになんで隠密行動が出来ねぇのか。 ってことだよなぁ。」
「「「あははは……」」」
ケンが真剣な顔でそう問うと、乾いた笑いをするクリス達。
「絶対にあいつ等、俺の名前をでかい声で叫んだり、カルタサーラの指揮官を暗殺に行くぞ?」
「間違いないわね。」
「まぶたの裏に浮かびます。」
「ええっと……それでご主人様、エルフリーデ様やリンカさん達はどうしたんですか?」
「ああ、エルザとアクリーナも連れ帰るって言ってな、居間でアンナ達が起きてくるのを待っているはずだぞ。」
そう言うとケンは、居間に向かうのだった。
「お、居た居た……何してるんだ?」
居間に着くとエルフリーデとリンカが居たが、何故かフリッツも居て、隷属の首輪を3人で囲んで眺めていた。
「あ、ケン、これ今朝がた商王国から届いたのよ。」
「商王国では、これを使って奴隷を意のままに操ってるんじゃないかと考えているようです。」
「でも正直な話、私達は隷属の魔道具なんてあんまり見ないっちゃよ。
それでなんでこれで、奴隷を操れてるのか分からんちゃよね。」
そう言われて興味を持ったケンは、3人の頭越しに魔道具を“視て”みる。
【支配の首輪】
「……クリス。」
「……劣化版支配の首輪、凶化付きとしか“視れ”ません。」
よく“視れ”なかったケンは看破持ちのクリスに声をかけると、クリスもすでに“視て”いたようだが大したことは分からなかったようだ。
「支配の首輪?」
「こりゃ重犯罪者に使う魔道具だな、国家反逆罪や連続殺人のような、な。」
「そんなのまで有るの!?」
「ならこれを使って奴隷を操ってるちゃね。」
「ああそうか、エルフの国も獣人の国も奴隷制が無いから支配の魔道具なんか見たことないのか。
こいつは確かに隷属の魔道具なんかより強力なんだが、奴隷に使うってより、さっきも言った通り重犯罪者にしか使わないんだ、なぜなら高いからでな。
おひとつ白金貨1枚になります、しかも使おうが使わなかろうが1年しか持たないんで1年で使い捨てだしな。」
「白金貨1枚……」
「1年で使い捨て……」
ケンの説明を呆然とするエルフリーデとフリッツ。
「でもこれを使って操って、フォルトリを落としたんちゃろ?
15万人分用意したんちゃないんちゃ?」
「お前な、白金貨で15万枚だぞ? そんなのレーベン王国でも用意できんのに、カルタサーラや獣王国で用意できるのか?」
「……無理っちゃね。」
ケンの言葉にリンカは狐耳をペタンと倒し、5本有る尻尾を細くしている。
「しかし、こんな時こそあのアホの出番だと言うのに、こういう時には姿を現せねぇな。」
「アホって誰のことっちゃ?」
しおれて下がった尻尾と耳を復活させながら、リンカが聞いてくるのでケンは出したくない名前を出す。
「ドライトの事だよ、あいつの事だから顔を突っ込んでくると思ったけど、こういう時には来ねえなぁって。」
そう言った俺をキョトンとした顔を見ながら、エルフリーデが衝撃の事実を言うのだった。
「ドライト様なら来てるわよ?」
エルフリーデの話だと、昨日のケンの全裸観賞会の後に、ドライトは突然やって来て眠りについたアンナ達の部屋の前で不寝番を始めたそうなのだ。
エルフリーデは出来る限りエルザにお早うとお休みの挨拶をしているので、昨日もしようとしてアンナの部屋に向かったらドライトがすでに部屋の前に立っていたそうなのだ。
「居るなら言えよ、アホに聞けばこれが何なのか直ぐに分かるだろ!」
「いや、頼りすぎはよくないと思って。」
「なんにしろアクリーナ様を守ってくれんなら、こんなにありがたいことはないっちゃ。お礼を言わんと。」
「そうですね、私もアンナの事を感謝しないと……」
なんにしろアンナの部屋に向かう4人、カリーナとシリヤは難しい話は分からないからと、朝食の準備の手伝いに向かった。
そして次の角を曲がればマックス一家の居住スペース、アンナの部屋に着くと言うところでケンはいきなり立ち止まる。
「ご主人様……?」
「ちょっと、いきなりどうしたのよ。」
「なんかあったっちゃ?」
「……嫌な予感がする。」
そう言って動こうとしないケンだったが、このまま立ち止まっている訳にもいかず、意を決して角を曲がる。
そこには―――
[[[ザザザ!]]]
ドライトがいっぱい居た。
廊下を埋め尽くすほどのドライトが、手に手に刺股や梯子に十手、その他もろもろ捕り物道具を持って廊下にひしめきあっていた。
しかもケンが角を曲がると同時に、一斉に視線を向けてきたのだ。
なんのホラーなのか!
「き、来ましたね!」
「それ以上、進むのは認めませんよ!」
「御用だ御用だ!」
そしてドライト達は捕り物道具をケンに向けて威嚇し始める。
「お、お前なんでこんなに居るんだよ!?」
「ええい黙らっしゃい! 先ほども言いましたがそれ以上にアンナちゃん達に近づくのは許しません!」
ケンの言葉にドライトはそう叫ぶと刺股をケンに向ける。
だが、次の瞬間!
「朝からうるさいのよ、騒いでるのはどなたなの?」
寝室のドアを開けてアンナが出てきたのだ!
……ケンの屋敷の部屋は基本的に内開きだ、そして廊下に大量発生していたドライトがひしめきあっていた、そこにアンナがドアを開けたために。
「ひゃあ!? ドラしゃんがいっぱい雪崩れ込んできたのよ!」
アンナの部屋にジャンジャン入っていった。
「わあ、ドライト様がいっぱい!」
「なんじゃなんじゃ、なんのご褒美なんじゃ!?」
「あ、ズルいですよ、私達もアンナちゃんの部屋に突入するのです!」
「一緒に遊ぶのです、ボードゲームから最新のス◯ッチまでそろってますよ!」
「押すな押すな。」
そしてドアのそばに居たドライト達が部屋に雪崩れ込んだのを見て、他のドライト達も部屋に入っていってしまった。
「「「………………」」」
そしてケンの前には、刺股で威嚇していた1体だけが残った。
「ほ、本体を残して遊びに行くとは何事ですか!?」
しかもドライト本体だったようで、慌ててドアの方に駆け寄るがケンが素早く捕まえる。
「お前はここで何をしているんだ。」
「や、やめてください、触らないでください変質者さん!」
「誰が変質者だ!?」
捕まえられたドライトがジタバタと暴れながらケンの事を変質者と呼ぶ、当たり前だが変質者呼ばわりされたケンは怒ってドライトをにらむが、ドライトはにらみ返して言ってくる。
「ケンさん、あなた昨日の夜にアンナちゃん達に下半身の物を見せつけて、興奮してたじゃないですか!」
「ご主人様、ちょっと向こうに行きましょう。」
「そうね、大事な話が出来たからね?」
「ケンはそう言う趣味だったちゃね。」
こうしてケンは、クリス達3人に有無を言わせずに連行されたのだった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます