異世界転移 100話目




「よーし! どんどん運べ!

とにかく入られるだけアイテムボックスなり魔法袋に入れちまうんだ!」


「細かいのも残さずに持ってくるのです、チリカスすら残さない勢いで運ぶのです!」


採石場でケンは多数の魔法袋とアイテムボックス持ちの兵士達に石を持たせ、ドライトは亜空間を開いてそこに石を詰め込ませていた。


「まてやこらあぁぁぁ!?」


そこにフェリクスがカンカンになってやって来る、当たり前だが。




「お前ら何してるんだ! ここは俺の領地だぞ!? 止めろ、石を盗むな!」


フェリクスの叫びに、1度は手を止めたケンとドライトだったが、無言でまた石を入れ始める。


「ちょ、ちょっとケン、フェリクス様がカンカンなんだけど、問題ないんじゃなかったの?」


「うむ、問題ないぞ、ここはモンスターに支配された領域だからな、誰の領地でもないはずなのだ!」


「そうですよ! そしてここを解放したのは我々です、つまり私達のものなのです!

そして石材を確保すればあとは要らないので放置すれば問題ありませんよ!」


ミラーナはフェリクスが怒鳴り込んで来たので真っ青になりならがケンを問いただすが、ケンとドライトは平然とそう言って石を入れ続ける。


「んなわけ有るかぁ!

ここは昔からシュテットホルン家の採石場なんだぞ!」


「昔は、だろ? 今は巨人族が支配している、そしてその支配から取り戻したのは俺達だ、つまりここは俺達のものだ。」


「お、お前な!?」


ケンの理路整然とした答えについ黙ってしまうフェリクス、単に怒りのあまりしゃべれなくなったとも見えるが……




「主人様、連れてきたのです!」


「怪しい動きをしたら、家族の命は無いわよ?」


「首ちょんぱだからね~!」


「……私達が悪人じゃない、これじゃあ。」


「た、頼む、家族や一族の子供達の命だけは……!」


10メートルほどの大男が、身を小さくして犬っ娘4人衆に連れてこられる、1人は人族だが……


「お、おお! フェリクス様、お助けください、いきなりこの者達に襲撃されたのです!」


「黙るのです!」


「余計なことをしゃべる暇があるなら、お宝がどこに有るのか言いなさい!」


「家族の命が惜しくないようだね~?」


「だからあんたらねぇ!」


チェルシー達は完全に悪人だった、そして引き連れられているのはサイクロプスではなく、巨人族の男だった。


「フェリクス様、この娘達がやたらと強く……テ、テクタイト! 救援に来てくれたのか! 「逃がしません!」ぐぉ!?」


巨人族の男が情けない顔でフェリクスを見ると、その後ろにフェリクスを追ってパトリシア達を乗せたテクタイトがやって来る、それを見た巨人は助かったとばかりに駆け寄ろうとして、チェルシーに後頭部を蹴られて倒れこむ。




「ふははは! 巨人と言えどもこの程度よ!」


「我等に逆らうからこんな事になるのです! 身のほどを知るべきなのですよ!?」


倒れた巨人の男を見下すケンとドライト、周りの皆はドン引きしているが唯一止められそうなフェリクスがドライトに踏まれて押さえ付けられているために、もはや誰も止められないかと思われたその時だった。


「「何をしているのですか!」」


クリスと金髪の髪を肩の辺りで揃えたショートヘアーで、橙色の瞳を持つ美少女が止めに入った。


クリスはもちろんケンに向かってだが、橙色の瞳の美少女はドライトに向かっていく。

その事に皆が驚きクリスもあ然として立ち止まるなか、その少女はドライトの前に立つとドライトをにらみつける。


ドライトに対してそんなことをしてどんな報復が! っと思われたが、にらまれたドライトはケンの背後に隠れている。

ただ小さくなり忘れているのか、20メートルの体のままなので全然隠れてない。


「ドライト様! 別世界の住人に何をしているのですか!」


「ち、違うのです、私は私の権威を認めさせようとですね?」


「怯える巨人の方を威圧し、マリルルナ様が認めた勇者を足蹴にしてですか!」


「あああ! キャロが怒ってます、本気で怒ってますよ!?」


そして怒られたドライトはアワアワとして身を縮めている。

その光景を見て、ケンはどうしているかと言うと。


「ご主人様! 他の方に迷惑をかけるなんて何を考えているんですか!」


「いやクリス、フェリクスには俺も被害を受けていてですね?」


見れていなかった。




ケンはケンでクリスに怒られて土下座をしていて、周りを見れていない。

そんな状態の2人は、巨人やフェリクス等に構っていられるかとばかりにそれぞれの前に居る美少女に謝り倒している。


「……ケンがクリスに頭が上がらないのは知ってたけど、ドライト様が謝り倒しているのは誰なのかしら?」


「ま、まさかドライト様より高位の神か!?」


パトリシアとミラーナが話していると、そんな2人の後ろから声がかけられる。


「違うわ、キャロ姉様は上級神だから。」


「そうよ、でもお兄様の筆頭眷族神よ。」


「「え?」」


突然に後ろから声をかけられたので、慌てて振り向くとそこにはドライトの妹のステラとルチルが居た。


「「この間ぶりですね。」」


「ス、ステラ様にルチル様!」


「ど、どうしてお二人がここに!?」




突然に現れた2人にミラーナが驚きながら質問をすると、2人が話し出す。


「せっかくの家族旅行なのに、お兄様ったら温泉に全然来ません。」


「しかも言い出したのはお兄様なのにですよ?」


「なので私達が迎えに来ることになりました。」


「でもお母様に私達だけはダメだと言われて……。」


「お目付け役として、お兄様の筆頭眷族神のキャロお姉様が着いてきたのです。」


「「それで、アンナちゃんは……あ、居ないのですか? なら、帰りますね。

キャロお姉様、早く帰りましょう!」」


交互? に喋りながら、なぜ来たのか等を説明したステラとルチルは、アンナが居ないと聞きガッカリしてからアッサリと帰ると言ってキャロと呼ばれた美少女に声をかける。


「……セレナ様にこの事は報告させていただきました。」


「ほ、報告済みなのですか!?」


「はい。 さぁ、行きましょう、ステラ様とルチル様も逃げようと転移術に干渉する準備をしてないで行きますよ。」


「「バレました!」」


ステラとルチルは自分達は逃げようとしていたようだが、アッサリと見破られて連れていかれてしまった。




「ハハハ! あのバカ部下に叱られてオロオロしてやんの!」


それを見て笑うケンだったが……


「……ご主人様、ご主人様も今から叱られるんですが、それでも笑っていられますか?」


「すんませんでした!!!」


ケンはケンで嫁のクリスに土下座するのだった。



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