異世界転移 77話目




「なんだこのゴミは? チェルシーも一体どうしたんだ?」


「クゥーン……」


ゴミにすがりつくチェルシー、そしてその事が理解できないケンは困りながら近づく、すると―――




「……チェルシー? あは、最後にチェルシーに会えるなんて、最高に幸せだわ。


……幻覚だったとしても、最後に幸せだったから良いかぁ。」




ゴミにしか見えなかったそれは、なんと人だった!


しかもよくよく見ると犬耳である!


そして口調から少女だと分かるが服も体もボロボロで年齢などは分からなかった、そしてか細い声でそう言うとポロポロと泣き始める。


チェルシーはそんな少女を抱き締めると、頬をペロペロと嘗め始める。


「バカ! 汚いだろ!?」


「ガウ! ペロペロ……」


「怒るなって! それにこういう時は回復魔法やポーションを使うんだよ!


いでで、噛むなって!」


ゴミのような女性を嘗めるチェルシーを脇に退けようとするが噛まれて抵抗される、仕方なくケンはチェルシーごとまとめて回復魔法を使う。


「ハイヒール、キュア……エクストラヒール! オールキュア!


回復しないだと!? チェルシー、退け! おい、こいつを飲め!」


「キャイン! クゥーン……」


魔法が効果がないのに気がついたケンは慌ててチェルシーを押し退けて自分が持つ中で最高のポーションを無理矢理に口に流し込む。


「ウプ! コホコホコホ! ハアハアハア……」


「こ、こいつもダメなのか!?

他に何か……チクショウ! ろくなもんがねえ!


……ん? なんだ、こいつが欲しいのか?」


自分の魔法袋を漁って色々出しているとゴミ少女がケンの腕を掴む、ケンが手に持っていたのはチェルシーがこの間食いついた謎の肉だった。


ケンが止めるもの聞かずにかぶりついたチェルシーだったが、生肉だったためにクリスが叱るとアッサリと離して正座をして待ての体制になったので、回収したものだった。




「どなたか知りませんが……そのお肉を恵んでくださいませんか?


私の最後の願いだと思って……」


「……よし、食って良いぞ。」


そんなゴミ少女を憐れんだケンはその肉を差し出す、生のままで……


「やった! いただきまーす!

あ、こらチェルシー! これは私のだって!」


「ガウ! ハフハフハフ!」


途端に元気になって肉にかじりつくゴミ少女、その隣ではチェルシーもかじりついていたのだった。




「ったく! 肉を食ってなかったから力尽きてたって……なんなんだよ。」


「いやぁ、ごめんなさいね? 犬人族って定期的にお肉を摂取しないと力尽きちゃうのよ? はむはむ。」


「堂々とウソをつくなよ……俺は獣王国で犬人族の大族長と会ったことがあるんだからな?」


「げ!? あんた何者よ!? はむはむ。」


「私の主人様です! はむはむ。」


「へー、チェルシーちゃんのご主人様なんだ~、じゃあ、ポリーのご主人様にもなってもらお~、はむはむ。」


「……ん? うお!? もう1匹居たのかよ!?」


声と肉にかぶりつく音が3つ有ることに気がついたケンはよく見てみると、ゴミ少女は2人居た。


「ちょっと! 匹って何よ、匹って! はむはむ。」


「このゴミ少しでかいな? って思ってたが、2匹も居たのかよ……」


「また言ったわね! ガブゥ!」


匹と言ったことがプライドを刺激したのか、ゴミ少女Aがケンに噛みついてくる。


「いで!? 噛みつくなっての!」


「ガルルル!」


「アルマに続くのです! ガルルー!」


「思いっきりいくよ~、ガルル~。」


「だああぁぁぁ! めちゃくちゃウゼえ!?」


ゴミ少女Aに続きチェルシーとゴミ少女Bも噛みつく、多少は痛いがそれ以上にウザかったケンはなんとか引っ剥がそうとするが3人は見事な連携で的を絞らせない。




そんな風に戯れていると自分達の居る逆側、行き止まりの路地の入り口から声をかけられる。


「おい、にーちゃんに小娘! さっきは世話になったな!?」


「今なら身ぐるみはいで半殺しにするだけで赦してやるぜ?」


「そっちの小娘はまぁ穴として使えるだろう、ゴミは……女か? 洗えば使えるか?」


現れたのはチンピラが10人ほどに、3人の本職だった。


「……なんかしたか、俺?」


「てめぇ!? そっちの小娘が殴りかかってきて、おめえは思い切り踏んでいったじゃねぇか!」


「……おお! 気持ちよかったろ?」


「ふざけんじゃねぇ!」


「待て! ……兄ちゃん、うちの若いのをやられたんじゃ、うちらも黙ってられないんだわ?


その身なりからして金はあるんだろ? 金貨100枚で勘弁してやるわ。」


本職の1人がそう言ってくるが、ケンは高笑いしながら断る。


「ハッハッハ! 絶賛断る!」


「テメ……ブクブクブク……」


「ぶっ殺して……アバババ……」


「ひ、ひい!? ママー! ママー!?」


ケンが断ると言うと同時にチンピラ達は殺気立つが、泡を吹いて倒れたり口や鼻の穴から下からも色々と垂れ流して倒れてしまう。


1人だけ耐えたかと思ったが、幼児退行してしまったようで親指をくわえながら「ママー、ママー!」っと母親を探し始めてしまう。


何があったのかと言うと、ケンは同時に殺気と威圧をちょっと強めに放っただけなのだ。


「グ、グオ!? てめぇ、な、何者だ!?」


「フェルデンロット子爵ってもんだ、通り名は天槍のケンってな? ……ありゃ、虚勢だったのか、気絶しちまった。」


唯一意識を保っていた本職の1人も、ケンの名前を聞いて気絶してしまう。


殺気と威圧だけでヤクザとチンピラを黙らせたケンだったが、別に問題が有った。




「ワンワンワンワン!!」


「キャンキャンキャン!?」


「クゥ~ン……クゥ~ン……!」


チェルシーは2人を背にかばいワンワン吠えながらワンワン泣き。


ゴミ少女Aはキャンキャン言いながら必死にケンから距離を取ろうとする、そしてゴミ少女Bはそんなゴミ少女Aに抱きつき泣いている。


そのせいでゴミ少女Aは逃げられないのだが。


そして1番の問題が3人が3人共に股間の辺りを濡らしてしまっていることだった。


「やり過ぎちまった……またクリスに怒られる……」


こうしてケンは再度クリス達を激怒させることになるのだった。



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