異世界転移 76話目




「ケン、反省した?」


「めっちゃしました。」


「ご主人様、自分だけフェルデンロットに行こうとしたり、民衆から女の子を差し出せようとしちゃダメですよ?」


「はい、今後2度としないと思います。」


「いや、思いますって……それにしてもこんな美少女達を4人もはべらせているんだから、満足しなさいよ?」


「なら毎夜添い寝を……」


「体が持ちません。」


ケンは演説のあとにロットリッヒから逃走してフェルデンロットに向かおうとしたが、ミラーナの母親のシルヴィアとクリスの母親のクラーラに補足されてしまい、アッサリと捕まってミラーナ達4人にお仕置きされた。




その後は仕事に打ち込み1週間が経ち、フェルデンロットに向かうのが3日後と決まった。


ちなみにこの1週間、ケンはミラーナ達と添い寝も赦されずにモンモンとした日々をすごしていたのだった。


「ところでご主人様、1週間前からチェルシーちゃんを見ないんですが、どこに行ったか知りませんか?」


「あの裏切り者なら俺の影の中だぞ?」


「……え?」


クリスの問いにケンは平然と答えると、ケンは自分の影に腕を突っ込み抜き出した、そしてその手にはグッタリとしたチェルシーが掴まれていた。


「チェ、チェルシーちゃん!?」


「このバカ、俺を裏切ってミラーナにチクったよな? それで報復が怖くないのかと不思議に思ってたんだが、俺の影に逃げ込めば良いと思ってたらしいんだわ?


だけどそんなところに逃げ込んでも、ブロックされたら出れなくなると思わんのかねぇ?」


「な! ま、まさか閉じ込めてたんですか!?」


「ん? そうだよ?」


「ご主人様!」


「は、はい!」


ケンがチェルシーを閉じ込めてたのを知ったクリスは激怒する、ケンも普段と違う怒り方のクリスにすでに土下座をしている。




「なんてことをしたんですか!

見てください、チェルシーちゃんたらこんなに衰弱しちゃって……いくらなんでも酷すぎます、1週間も閉じ込めておくなんて!」


「い、いや躾はちゃんとしないとですね?」


「これが躾だと言うのですか!?


1週間もご飯もあげずに「いや、飯はあげてたぞ?」え?」


「肉は一切やらなかったが、野菜中心に魚を入れて1週間ちゃんと飯はやってたぞ?」


「……チェルシーちゃん?」


「お、お肉を下さい……お肉を……」


「たんに、肉が食いたくてグッタリとしているだけだな?」


「……ご主人様、何かのお肉がありませんか?」


「いや、そんなすぐに……あれ? なんだこの肉、なんか魔法袋に入って、あ!? こらチェルシー! 得たいの知れない肉に食いつくな!」


クリスに言われて魔法袋を漁ると、ケンは入れた覚えのない肉の塊が出てくる、それを見たチェルシーはケンですら反応できないスピードで肉に食いつくのだった。


何にしろチェルシーを許す代わりにケンは自分も許してもらえた。




「いやぁー、偉い目にあったな?」


「グルルル!」


「俺を威嚇するなって! 肉を1週間抜いたぐらいでまったく……しゃーねぇなあ、広場で好きなだけ肉を食わせてやるよ。」


「主人様、大好きです!」


すんなり手のひらを返したチェルシーを連れて外に出ようとして、建物の中を見返す。


「お! これ良いわね、魔法の発動を助けてくれる指輪、デザインも良いし宝石もいい物がついてるわ!」


「ミラーナ様、こちらのネックレスはどうですか?」


「あら、それもいい物じゃない!」


「両方みんなでお揃いで買っちゃいます?」


「良いわね! 宝石を色違いで買えば間違えないだろうし、パーティーでも使えると思うわ。」


「ほ、本当にこの下着を買っても良いのかな? 5セットで金貨1枚だよ!?」


「カリーナ、このミラーナ様が買えって言ったドレス、白金貨1枚って値段ですけど見間違いですかね?」


「2人とも、ケンが買っていいって言ってるんだから買いなさい! クリスもよ!」


「「「はい!」」」


冒険者の店で何故かある装飾品や高価な下着や服を買い漁る4人、そんな4人を諦め目で見ながらケンは店を出ていくのだった。




「チェルシーは買い物は良かったのか?」


「? 服も下着も買いましたよ?」


「お前は可愛いな!」


「わふん!」


チェルシーの頭をなでくり回しながら広場に向かうと、早速露店から良い匂いがしてくる。


そろそろ昼に差し掛かるのですぐにでも食べれるようだ。


「さーて、何にすっかな、チェルシーは串焼きか?」


「わ……ん?」


ケンの言葉に元気に答えようとしたチェルシーだったが、急に立ち止まると周りを見回し始めて1ヶ所に目標を見定めて走り出す。


ケンは良い店でも見つけ走り出したのかと思ったが、チェルシーはそのままスラムの方に向かう路地に走っていってしまう。


「あ!? チェルシー、待て!」


慌てて声をかけるがチェルシーは路地のなかに消えてしまった。


「こ、こら! 待てって!」


そしてケンも焦って追いかけ、路地に入り込む。


「どこに行くんだって! 肉は良いのかよ!?」


ケンの肉を食わないのかと言う問いかけにも振り向かずチェルシーはどんどんスラムの方へ進む、普段着用のワンピースを着ているためにどこかのお嬢様にも見えるチェルシーを捕まえようと、途中いかにもなチンピラが出てきたがそいつらを殴り蹴り飛ばして進むチェルシー、ケンも倒れたチンピラを踏むつけて進むとチェルシーは行き止まりで止まり、ワンワン! っと鳴きながらウロウロし始めた。




「クゥーン……! ワンワンワン!」


「ど、どうしたチェルシー、そのゴミがどうかしたのか?」


チェルシーはゴミの1つに駆け寄ると、涙を流しながら鳴くのだった。



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