異世界転移 61話目
「……いえ、怒ってはいないのですよ? 怒っては? 両親や弟と妹を助けていただきましたし、幼馴染ともこうして再会できましたのだから?」
「なら正座を止めて良いっすか?」
「ダメです。」
「あ、はい。」
怒ってるやん。
速やかに屋敷から撤退しようとしたケンだったが、ちょうど買い物から帰ってきたミラーナとチェルシーに妨害されてクリスに捕まってしまい、現在は屋敷の出入り口で正座をさせられていた。
「もー、大切な時はあんなに格好いいのに、なんで普段はこんなにバカなのよ?」
「格好いいなんて照れるぜ、ミラーナ、今夜は……今夜も寝かさないからな?」
「き、期待してるわ!」
「こんな時にイチャつかないでください。
あと私もご主人様は格好いいと思います。」
「もちろんクリスも寝かさん! これは決定事項だ!」
「は、はい!」
「……アホな子ばかりなの?」
「クリスが染まってしまった……」
「わおーん!」
カリーナとシリヤに呆れられチェルシーが遠吠えしたことで、ケンも許されて全員で屋敷の庭で話し合いが始まるのだった。
「でさ? この1週間何をしていたのよ?」
ミラーナはカリーナとシリヤを見てあきれながら言う。
「ちょい待て、1週間? いま1週間って言ったか?」
「ご主人様、ダンジョンの討伐記念パーティーから1週間経ってるんですよ? 本当に今まで何をしてたんですか?」
「ま、待て! 本気で思い出すから!」
クリスに1週間経ってると言われて、ケンは本気でパーティー、宴会の事を思いだし始める。
「……! 山の上から俺が沢山いるってバカなことを言ってるフェリクスを見下ろしてた気がする!」
「それ、私達が帰る時の事じゃないの? ケンってばテーブルの上に乗って高笑いしてたわよ?」
「……屋根の上で皆で宴会をしてた!」
「それは知らないですね?
というかご主人様、あまり危険なことはしないでください……」
「……なんか知らん男を槍で刺してる。
いや待て、俺は本当に何してるんだ!?」
本気で慌て始めるケン、そこにチェルシーが走ってきて報告をする。
「主人様が違法な奴隷狩りや盗賊団を潰しまくってたっていう情報がありました!」
「俺は本当に何してたんだよ!?」
「なんか主人様とフェリクス様に、ヘルダ様が競うように潰して回ってたらしいです!」
「な、なんだと!? それで誰が勝ったんだ!」
「主人様の圧勝だったと、情報操作をしておきました!」
「よくやった! いつの間にか魔法袋に入っていたワイバーンを丸ごと1頭やろう、好きなだけ食え!」
「わおーん!!」
屋敷の庭に出された10メートル近い大物のワイバーン、カリーナとシリヤの2人はドン引きだが、それを見たチェルシーは大喜びでかぶり付く。
生肉は体に悪いとクリスが止めようとしたが、何故かワイバーンはほどよく焼き上がっていた。
「それでカリーナとシリヤはどうするの?」
「うん、私達は冒険者にでもなろうかと思ってさ?」
「こんなおじさんのお妾さんにはなりたくないですし。」
「あなた達さぁ、一応はケンに買われたんでしょ? 主人の許可なく勝手な行動したら、犯罪奴隷よ?」
「「そこはクリスの力で解放してもらってですね?」」
クリスの質問に勝手なことを言うカリーナとシリヤに、ミラーナがあきれてそう言うと2人はクリスの力で解放してもらうと言う。
「はぁ……ご主人様、それでよろしいですか?」
「ん? 良いぞって言いたいが、ミラーナがにらんでるからダメだな。」
クリスもあきれながらケンにきくと、ケンは許可しようとするがミラーナに、にらまれて許可を止める。
「クリス、悪いけど最低限は買った時に支払った金額をケンに払わないとダメよ? でないと私達も買って解放してくれなんて言い出すやからがいるから。」
「……なら、借金ということで良いですか?」
ミラーナの言葉にクリスがそう言うと、カリーナとシリヤの2人も仕方がないか、っとうなずこうとした時にチェルシーが肉を口一杯に頬張りながら走ってくる、そしてその両手には大きな魔石が抱えられていた。
「主人様! こんなん出た!」
「おお、なかなかのサイズだな? 売っぱらってチェルシーの小遣いにするか?」
「わーい! これで肉を買います!」
チェルシーは小遣いだ! っと大喜びだが、カリーナとシリヤは目を見開き驚いている。
何故ならチェルシーが両手で抱えるほどの大きさの魔石なのだ、売ればいったい幾らになるのか、2人には想像も出来ない金額になるのは、間違いないからだった。
そして2人はオズオズとケンに質問をする。
「あ、あの? あの魔石は幾らぐらいになるんですか?」
「ん? サイズは大きいが、濁ってるから魔晶石には錬成出来ないだろうし、金貨で30枚……この間のダンジョン走破で値下がりしてるから、10枚ってところか? チェルシーの小遣いにちょうど良いな。」
「き、金貨10枚がお小遣い!? もしかして、お金持ち?」
「……! ケンって、天槍のケン様ですか!? フェルデンロットの男爵になった!」
「おう、そうだぜ?」
ケンがそう肯定すると、カリーナとシリヤは顔を見合わせてからケンに頭を下げながら言うのだった。
「「旦那様、私達も可愛がって下さいね?」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます