異世界転移 59話目




屯田兵達の訓練の仕方を指示してから1ヶ月が経っていた、そして今日は王都の冒険者ギルドで祝いのパーティーが開かれている。


何があったのかと言うと、演説の後で訓練の指示を出したケンはフェルデンロット男爵邸建築予定地に入り浸り、隣で行われている練兵にはたまにしか顔を出さずに、建築現場で建築の指示をドワーフの親方と一緒にしていた。


そんな生活が半月ほど続いたある日、フェリクスが仲間を連れてケンを訪ねてきたのが最初だった。




「おっす、冬本番で本格的に寒くなってきたな。 それで今日は現場は休みだが屋敷の建築は進んでいるぞ?」


「おう、もうすぐ年も変わるが、来年の春には新しい屋敷に住めるし、シュタインベルクの復興も始まる。


軍の方でシュタインベルクとその地方を押さえてくれてるからな、ケンには悪いと思うが……。」


「構わねぇよ、近場に当てに出来ない軍が居るよか地元の奴等に頑張らせた方がましだからな、それで今日はなんの用だ? 屋敷の建設具合なら現場に行った方が良いぞ。」


「いや、そっちは来る途中で見てきたんだ、今日は別の話が有ってな、東の海との境にある森のことは知ってるだろ?」


フェリクスがニヤニヤ笑いながらケンにそう言うと、ケンは応接室のソファーに座りながら答える。


「ああ、知ってるぞ。 ついでに今までいなかったモンスターが現れたんで、ギルドが探索したら新しくダンジョンを見つけたのも知ってる。」


「な!? お、お前なんで!」


「あなた、だから言ったでしょ。

ケンは優秀な冒険者なのよ、情報収集位はしてるわよ……。」


「お前、俺が現場監督ばかりしてて冒険者ギルドで情報収集してねぇと思ったんだろ?


冒険者家業もそうだが、どんなことでも情報を先につかんだ方が有利になるんだぞ。

チェルシーにも集めさせてるが、俺も建築現場の作業が終わったらギルドや酒場で情報くらい集めてるよ。」


ケンにそう言われてフェリクスは顔をしかめている、そんなフェリクスを放置してパトリシアが真面目な顔で話しかけてくる。


「それで昨日の話なんだけど、今まで未発見だったそのダンジョンからモンスターが溢れて、近くの森なんかに散ったのが今まで居なかったモンスターが現れた原因だったのよ、それであそこにそんなダンジョン有っても邪魔になるだけだから討伐しようって話になってね。」


「へー? 昨日は今日が休みだから情報収集に行かないで、ミラーナとクリスと朝まで色々していたからな、俺は聞いてなかったわ。」


「あなたね……女性の前でそういうことを堂々と言わないでよ……。


何にしろダンジョンを潰していいなら相当なお宝が望めるでしょ?


だもんで結構な数の上位の冒険者達が討伐に乗り出してね、私達もお金が必要だし、参加しようってなったのよ。」


「ふーん、勇者フェリクスのパーティーなら簡単に討伐しちゃうんだろうなぁ?」


「それでね、あなたに提案なんだけど……。」


パトリシアがそう言ってケンに何かを言おうとした瞬間だった、応接室の扉が開かれて完全武装のミラーナにクリスとチェルシー、アルヴァーとフェリシーが入ってきたのだ!




「ケン、準備できたわよ! フェリクス様達を出し抜いて、ダンジョンを攻略するんで……パトリシア姉様!?」




「お前ら本当に油断も隙もねえな!?


それにケン、お前は知らなかったって言ってたじゃねえか!」


「知らなかったなんて言ってねえよ、俺が聞いてこなかっただけだ!


チェルシーが聞いてきたんだからな!」


「ミラーナ、あなたねぇ、ケンに似てきたわよ? 気をつけなさい。」


「だ、だってケンが、フェリクスのパーティーは人数が多いから、取り分が減るって……。」


「まったくもう!」


「それで、この面子で東の森のダンジョンに向かうのですか?」


フェリクスとケン達は揉めながら冒険者ギルドに行き、共同でダンジョンの討伐に向かうと言う面々をあきれた表情で眺めながらペトラが聞く。


「出し抜くのがバレちまったし、協力して速攻で潰しちまおうってなってな。」


「ケンにアルヴァーさん達も居るなら、問題なく攻略出来るでしょうね」


ケンとパトリシアがそう言うと、ペトラもうなずきながら言う。


「そうですね、フェリクス様のパーティーにアルヴァー様のパーティー、そこにケン様が加わればあのダンジョンも早期に討伐できるでしょう、頑張ってください。」


こうしてケン達は東の森で新たに見つかったダンジョンの討伐に向かったのだった。




―――で、半月でアッサリと討伐すると、王都に戻って来て冒険者ギルドに詳細などを報告をしに向かう。




「いや~、めでたいよ!


あんなところに何時までもモンスターを溢れ出しているダンジョンが有ったら、迷惑だからね!」


「しかも、問題になって1ヶ月で解決ですからね? それに冒険者のパーティーが2つもいてです!」


ヘルダとペトラが機嫌良くそう言うと、ケン達も笑いながら答える。


「50層越えた時は焦ったけどな?」


「フィールド型の階層が少なかったから、早く攻略できましたよ。」


「しかも未発見だけあって、お宝もザックザック出たから大儲けだったな!」


そう話していると、何か言いたげに冒険者達がケン達の周りをウロウロし始める。


それに気がついたフェリクスが若い冒険者の1人に声をかける。


「ん? なんだ、何か用か?」


フェリクスがそう言うと、冒険者は曖昧に笑いながら離れようとするが、ケンとアルヴァーが呼び止める。


「おい、分かってるって。

ペトラ嬢、用意は済んでるんだよな?」


「討伐完了の報告が有った時から用意させてます。」


「かなり稼げたからな、みんなも期待しとけよ!


ああ、お前ら孤児院とかにも声をかけとけ、炊き出しもするからな? ほれ、こいつは駄賃だ。」


アルヴァーはそう言うと、駆け出しっぽい若手の冒険者に金貨を投げる、若い冒険者は嬉しそうに「はい!」っと返事をすると仲間達の元に走りより、アルヴァーにペコリと頭を下げて冒険者ギルドから走り出していった。




「おい、なんなんだ?」


「ん? フェリクスは知らないのか? 俺達、冒険者は大儲けした時に仲間と宴会するんだが、儲けによっては他の奴等におごったり炊き出しもするんだよ。」


「今回はかなり儲けましたからね。 相当な金額になりますから、炊き出しもして孤児院の子供やスラムの人にも食わせてやるんですよ。」


「冒険者はそんな事をしてたのか……。」


「冒険者ギルドの前でたまにやってる炊き出しは、そういう事だったのね……。」


フェリクスとパトリシアはそう言って、知らなかったっとつぶやいている。




なんにしろこうして、東の森のダンジョン討伐記念パーティー、大酒飲み大会が始まったのだった。



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