異世界転移 15話目




まどろみのなかで俺は目が覚める、心地よい気だるさを感じながら左腕に重みが有るのに気がつき確認すると、クリスが俺の腕を枕にスースーと寝息をたてていた。


それを確認して俺は心から思う―――




『異世界に転移して本当に良かった!』




この世界に転移した際に、俺の肉体年齢と年齢は15歳と設定された。


これはこの世界の成人が12歳、そして独り立ちするのが大体15歳だったからだ。


これは邪神との戦いが有った頃の名残で、早めに成人させて国や各ギルドに登録させて、両親が戦いなどで死亡しても子供が無事ならどこの誰か分かるようにとの配慮だった。


そして15歳での独り立ちは、本当の意味で大人と認められて、誰かと結婚して家を持つなり、何かしらの仕事に就くなり出来ると認められた者の事だった。


なんにしろ村が壊滅し、唯一の生き残りとしてこの都市に来たという設定の俺は、田舎過ぎて国や各ギルドに登録はしてないと言うと、色々調べられたりされて大工にはなれず冒険者として生きて15年。


色々有ったが、俺は今この瞬間のために生きてきたのではないだろうか?


そんなことを考えていると、寝ていたクリスがモゾモゾと動き出す。


クリスも起きたら一緒に食事にしようと思い、俺はクリスが完全に目覚めるのを待つのだった。




はい、起きたら昼過ぎでした!




うーむ、昨日は5回戦もしたから、寝たのは明け方だったものな。


クリスも起きて、食堂に行く前に庭に面したカーテンを開けたら日が西に傾いてたから、おかしいと思ったんだよ。


ん? 処女の15歳になに無茶してやがるんだ?


この世界には回復魔法というものが有ってだな、それを上手いこと使ってクリスの負担をなるべく減らしたんだよ!


……すいません、初めての処女、しかも美少女をいただいたので興奮して無茶してしまいました。


なんにしろ起きたクリスと食堂に行くと、母親のクラーラがクリスを、


「よくやりました!」


っと褒めて、父親のマックスは、


「娘を褒めたいですが、いささかやり過ぎではないですか?」


っとにらんできてクラーラに殴られていた。


ライナーとアンナは起きていて、庭で元気に走り回っている。


昼食をと考えていたが時刻は昼過ぎ、13時に近いようだったので皆で昨日の市場に出かけて露店ですますことにして、軽く食事を摂り昨日は売り切れていた物などを買ってから冒険者ギルドにやって来る。




「おう、ケン、こんな時間に珍しいな、どうしたんだよ?」


ギルドに入るなりでかい声で話しかけてきたのはアルヴァーだった、そして隣には昨日も隣に居た女性、アルヴァーの奥さんのフェリシーも居た。


「おう、アルヴァー、隣の女性はどこから拐ってきたんだ。」


「お前な、毎回それを言うからうちのクランの中にまで、本当に拐ってきたと思ってる奴が出てきたんだぞ!?」


「そりゃミルカとカウノに広めさせてるからな?」


「あ、あのアホども!」


俺の言葉に怒って立ち上がるアルヴァーだったが、フェリシーが鋭い目でにらむと大人しく椅子に座る。


それを見て相変わらず尻に敷かれていると笑いながら俺も席に着く。


この女性、フェリシーはアルヴァーの幼なじみで、一緒に村から出てきて冒険者として活動を常に共にし、15年前に結婚した夫婦だった。


その後は子供が生まれて、子育てのために冒険者はほぼ引退したような生活をしている人だった。


「それでケン君は本当に何しに来たの?」


「いや、市場に買い物に出ただけだったんだが、ライナーがどうしてもここに来たいって言ってな。」


「おめえ、結構子供に弱いよな……」


アルヴァーの言葉にフェリシーはニッコリと笑い、俺は顔をしかめていると、副ギルド長がやって来て聞きたいことが有ると言ってきた。


大事な話なので、ギルドマスターの執務室に来て欲しいと言われて、俺はクリス達に俺のつけで何か食べるなり飲むなりしていてくれと言って、副ギルド長についていくのだった。


「んで、話ってなんだよ?」


「おう、ちょっと待っててくれ、おい、呼んでくれ。」


ギルドマスターの執務室に来ると、すでにギルドマスターが待っていて、ソファーに座るようにうながしてくる。


そして副ギルド長に声をかけると、副ギルド長は部屋に有る俺が入ってきたドアとは別のドアから出ていき、5分も待たずに数人の男女を連れて戻ってくる。




俺は入ってきた男女の中でも特に豪奢で金のかかった服を着てる50代後半の男を見て、慌ててソファーから立ち上がる。


その男の名はロットリッヒ辺境伯、この都市ロットリッヒだけでなく、ロットリッヒ地方を支配下にする王国有数の大貴族だった。



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