異世界転移 12話目




「んじゃ買い物に行くか、服とかも必要な物から先に揃えるぞ、それ以外は明日だな。」


「は、はい……あの、アルヴァー様達は良いんですか?」


「ほっとけ、あれでもAランクにBランクなんだ、自力でなんとかするだろ?」


俺が買い物に行くと言うと、ライナーとクリスの妹のアンナは純粋に喜んでいる。


クリスと両親はどう答えればいいのか困っているようだ。


「その格好じゃ、ろくに街も歩けないし冬になったら凍えちまうだろ?

それ以外にも必要な物が有るだろうし、食い物も買わねえと、家にはろくな物がねえからな。」


俺がそう言うと、クリス一家が全員がついてくる。


そんな俺達に背後から声がかけられる。


「ま、待てケン……!」


「……なんだアルヴァー?」


「エ、エリアハイヒールを……!」


「……じゃあな。」


「ケ、ケーン!」


俺はクリス一家を引き連れて、冒険者ギルドをあとにするのだった。




「よかったんですか?」


「ん? アルヴァー達か、ハイポーションとか魔法薬なんか持ってるから、大丈夫だろ?」


「ハイポーションと魔法薬って、最低でも金貨5枚はするんじゃ……」


「そんもんAランクやBランクの冒険者には、はした金だよ。

白金貨5枚ってんなら、ちゅうちょするけどな。」


「金貨5枚がはした金……」


「私達とおんなじ金額なのに、はした金……」


マックス達一家はクリスとライナーが銀貨50枚、母親のクラーラと妹のアンナが金貨1枚、父親のマックスが金貨2枚の総額で5枚だった。


姉のクリスと兄のライナーが銀貨50枚で、妹のアンナが金貨1枚なのはクリスとライナーの歳が10歳を越えてるので、今から教育するのは手間がかかるからだった。


両親の金額は宿屋を経営していたので、料理や接客系のスキルをいくつか持っていたので、少しは高くなったのだ。


「冒険者もCランクを越えると、稼ぐからな?Bランクになればさらに稼ぐ、Aになると下手な貴族や商人なんか目じゃないぜ。」


「そ、そんなに稼ぐんですか?

私が宿屋をしていた時は、年に金貨50枚から80枚稼いでましたが……」


マックスがそう言うと、ケンは冒険者の内情を話し始める。


「それは諸経費を引いてないだろ。

冒険者はCランクの人間で構成されたパーティーで、月に金貨100枚は稼ぐ。


これをパーティーのメンバー、大体4人から6人で分ける、突発的に組んだパーティーでなければ半分はプールするから1人頭で10枚前後だな。

BランクやAランクだとさらに稼ぐぞ?」


ケンの言葉に驚くクリス達、そんなクリス達にケンはさらに続ける。


「Bランク主体のパーティーなら月に金貨で500枚は楽にいく、それでポーションや装備なんかはプールした貯金で買うからな?

ハイポーションや魔法薬の1つや2つ、惜しげもなく使うんだよ。」


ケンの言葉にクリス達一家は、驚きながらもケンについていくのだった。




クリス達がケンに連れられて来たのは、冒険者ギルドのすぐ隣にある武器や防具等、冒険者の装備を売る店だった。


「あ、あの……ここで、買い物ですか?」


クリスは驚きながら回りを見回して聞いてくる。


「ああ……って、ライナーそっちじゃない、こっちだこっち!


それでだ、雑貨や服なんかが2階で売ってるんだよ、旅人や冒険者が着る頑丈で防寒、防水を考慮した物だから、それぞれ2着は買っとけよ?」


「おっちゃん、俺はあっちが見たい!」


1階の武器や防具が置いてある方に向かったライナーは、クラーラに引き戻されてやって来てそう言ってくる。


「ダメだ、とりあえず2階で服だの下着に生活必需品を見てこい。」


だがケンはダメだと言い、悔しそうににらんでくるライナーをにらみ返して黙らせる、そしてクリス達が全員2階に上がったのを確認すると、自分は武器と防具が置かれているところに向かうのだった。


そしてクリス達が服などを持って降りてくると、ケンがナイフやマチェット10数本づつに、槍と弓を何個かづつを持って待っていた。


「おう、買い物はすんだか。」


「は、はい……ところでこの武器は?」


「ああ、訓練用だよ、だけどライナーに冒険者になれって言ってるんじゃないぞ?こんな世界だからな、武器の扱い方ぐらい覚えといた方が良いからな。」


ケンはそう言うと、店員にクリス達が持ってきた物も含めて会計をするのだった。




「き、金貨で15枚も……」


「武器はそんなに高くないぞ? 5枚ってところだな、服は結構良いものだから、そこそこしたけどな。」


クリス達はケンの金使いにため息をつく、だがケンはそれを気にせずに次の店に入るのだった。


「家具屋ですか?」


マックスが不思議そうに聞いてくる、ケンはクリスを見ながら答える。


「ああ、クリスは知ってるだろうけど、家には部屋はあっても家具が無いんだよ。

ベッドなんか無いと雑魚寝をしてもらう事になるからな。」


ケンにそう言われてマックスとライナーは納得するが、クラーラとクリスは申し訳なさそうにしていた。


そして家具屋でタンスを人数分に、ダブルのベッドを2つ、シングルのベッドを3つ買うと次の場所に向かう。


「ここはこの地区の食を支える市場だ、マックスとクラーラに、クリスにも来てもらうと思うから覚えておいてくれ。」


「はい、色々売ってますが、品数が少ないみたいですね……」


「近隣の農家なんかが品物を持ってくるんだが、城壁の外から持ってくるからピークは昼前、10時頃だな。

市内の肉屋や小麦なんかの粉物屋も農民相手に商売するために、おんなじ時間に集まるからその頃には結構混むぞ。」


ケンはそう言って馴染みの露店商や肉屋等に、マックス達を紹介していく。

そしてマックスとクラーラに相談しながら食材を買い漁っていく。




「こんなものか? 後は明日か明後日にでも家族で足りない物を買い出しに出てくれ。」


市場をほぼ一周してからケンはそう言って、暗くなりつつある空を見上げてから自宅に向かってクリス達を連れて歩き始めるのだった。



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