異世界転移 11話目
「んじゃ、うちからはミルカとカウノを出すわ?」
「うちからは最近Cランクになったパーティーの奴等だな、天狗になってるから叩きのめしてもらうべ!」
「おめえ等……何人相手にさせる気だよ!」
ギルド訓練場はちょっとしたグラウンド並みの広さで、そこに今はクリスファミリーにアルヴァー達、主だった冒険者達が、そして少し離れた所に俺がいてその前にミルカとカウノに率いられた若手の有望株が30人ほど集まっていた。
「その面子でいいわ、後から来たら参加させるからよ、頼むわ?」
「アホか! 俺はBランクだぞ!? それが同じBランクのミルカとカウノに、Cランクが10数人っておかしいだろが!」
「黙れアホ! おめえがBランクってのが元々おかしいんだ、おめえ等始めろ!」
アルヴァーの始めろ! の声に、冒険者達は散開してケンを包囲し始める。
「な、なぁ、ケンのおっちゃんは大丈夫なのか?」
アルヴァー達の近くに居たクリスファミリーは真っ青になっている、ライナーも呆然として模擬戦を見ている。
「ああ、全く問題ないな!」
「あの面子じゃ下手すりゃ瞬殺か?」
「カウノとミルカが居るんだ、5分は持たなきゃBランクの名が泣くぞ。」
アルヴァー達がそう言うと同時に、冒険者が数人吹き飛ぶ。
「な、何が……」
それを見て、マックスが驚きながらつぶやく。
その声にアルヴァーが吹き飛んだ面々を見ながら答える
「アホが……ケンの突きは絶対に受けるなって言っておいたのにな。」
どうやらケンの突きを盾か何かで受けたようだが、そのまま吹き飛ばされたようだった。
「……ん? おい魔法使い達、詠唱してねぇか?」
「あ、ありゃダメだな、ケンのが速いわ。」
今度は少し離れた場所に居た、魔法使い達などにファイヤーボルトが降り注ぐ。
初級の魔法だが数が多いのと威力が高いのか、当たった魔法使い達は詠唱を止めて慌てて逃げ出す。
「高ランクの詠唱破棄や詠唱短縮を持ってるケンに、ダラダラと長い詠唱してどうする……」
「アホか……敵に背を向けてどうする!」
「あーあーあー、こりゃズタボロだな……」
「カウノとミルカは……あ、殺られたか?」
カウノとミルカが殴られて気絶すると、とうとう戦線を支えられなくなり、冒険者達は逃げ出し始める。
アルヴァー達はため息をつきながらそれを見守り、今後の訓練をどうするか話始める。
「……ご主人様は人間ですか?」
「お、おっちゃんつえぇ……」
「しゅごーい!!」
クリス達姉妹に弟は口々に感想を言う、両親は驚きに何も言えないようだ。
「同じBランクがいたはずなのに、なんでこうも一方的に……?」
マックスがそうつぶやく、他の家族もウンウンうなずいていると、アルヴァーが答えてくれる。
「ケンはな、ほとんどソロでBランクになったんだ、あそこで寝ている2人もここに居る俺達も、たくさんの仲間と共に戦い行動して、やっとBやAランクになれたんだぜ?
そのケンと俺達の強さが一緒だと思うか?
それと冒険者がAランクに上がるには条件がいくつか有ってな? その一つにパーティーメンバーにも複数のBランクが居るって有るんだわ。
これはAランクに上がる冒険者は当たり前のようにそんな仲間が居るから問題ないんだけどな……ケンは1人であっという間にBランクに上がっちまったから、条件に合わなくてAランクになってないんだよ……もっともそれを利用して面倒事から逃げてもいるんだがな。」
アルヴァーの言葉にクリスファミリーも納得する、そしてキラキラとした目でケンを見つめるライナーに、アルヴァーがニヤリと笑って話しかける。
「それとボウズ、2つ名持ちって知ってっか?」
「知ってる! AランクやSランクに勇者様と英雄の人達が持ってるんだよね!」
「おう! だがな、正しくはAランクの一部と、Bランクの1人が持ってる、だな。」
アルヴァーがそう答えると、その隣に同年代の女性が現れて言う。
「ここにも20人以上はAランクは居るけど、2つ名を持ってるのはほんの一握りだけよ?
もちろんうちのアルヴァーもその1人よ。」
「来たか、ちなみに俺の名は堅守のアルヴァーってんだ、少しは有名だぜ?」
アルヴァーの2つ名を聞いて、クリス達は驚く。
堅守のアルヴァーと言えば、ロットリッヒ地方で最大のクランを率いる、英雄の1人ともいえる人物だったからだ。
そしてそんな英雄が自分達の目の前に居るのに驚いていると、アルヴァーは勝負がつきつつあるケン達、ケンを見ながら言い放つ。
「で、唯一、Bランクで2つ名を持ってるのが……あそこに居るケンだ、2つ名は天槍、天槍のケンだ。
おっし、おめえ等! ケンがなんで天槍って言われてるか、見せてやれ!」
アルヴァーの雄叫びに、いつの間にか現れていた30人ほどの冒険者達が、ケンに向かって突進したのだった。
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