異世界転移 9話目
「隷属の魔導具……奴隷か?」
俺は女の子の首を見て思わずつぶやく、そして俺のつぶやきを聞いた女の子はハッとしてベッドから飛び起きると、俺の目の前でひざまずく。
「ご主人様! 奴隷のぶんざいでご主人様より遅く起きて、申し訳ありません!」
……ご主人様? 黒潮さん、俺にひざまずいて俺の方を見てご主人様って、言っている?
もう一度確認してみよう、シーツは着けてなく今は下着姿だ。
歳はやっぱり中学生ぐらいみたいだな、胸は歳相応だがお尻はプリプリだ。
さっきまでまぶたを閉じていたので分からなかったが、瞳の色は明るいグリーンでパッチリしている。
そんな少女はますます黒潮さんにそっくりだった、そしてそんな美少女が半裸の下着姿で俺にひざまずいている。
俺の時代がやってきた!
違うだろ俺! 黒潮さん、少し震えながら俺の目の前でひざまずいていて、俺の言葉を待ってるんだぞ。
それに確認するって、乳と尻と顔の確認しかしてないし!
よ、よし、話しかけよう!
「えっと……誰?」
ははは! 誰はないだろ、誰は!
ほら見ろ、黒潮さんもキョトンとしてるぞ。
そんな黒潮さんは俺に見られて慌てて答えてくる。
「わ、私の名前はクリスです、一昨日にご主人様に買われた奴隷ですが……あの、覚えてないんですか?」
「ちょい待て、一昨日?」
「は、はい、一昨日です……。」
「ぜんぜん覚えてない! ってか俺って、まるまる1日寝てたの!?」
うなずく黒潮さん改めクリスちゃん。
本気でなんにも覚えてないぞ!?
あ、クリスちゃんが信じられないものを見る目で見てきてる、ご褒美か?
いや、今は悶える時じゃない。 本当に買ったのか、どうしてこんなことになったのか調べねば!
俺はクリスちゃんにどこの奴隷商か聞いてなぜ買ったのか話を聞くために、さらに冒険者ギルドの飲み会で何があったのか調べるために慌てて外に出ようとして、クリスちゃんに気がつく。
「……服を着てついてこい。」
クリスちゃんは俺の命令にしたがい、慌てて服を着たのだった。
クリスちゃんを買った奴隷商の商館にやって来て俺達は、たまたま店先に居た奴隷商に話を聞くことができた。
「ま、まじか……?」
「ええ、ケン様は一昨日の朝方にフラりとやって来て、荷降ろし中の商品見るなりに「黒潮さんだ!」っと叫んでその娘を買っていったのですよ。」
何してんの俺? まさか黒潮さんに似てるからって、買っちゃったとは……。
……あれ、そー言えば肝心のクリスちゃんはどこに行った?
ん? なんか檻の1つ、商品の前で悲しそうにしているな?
あ、それよりも大事な事を聞かなくっちゃだ!
「そ、それで、幾らで買ったんだ?」
この世界は奴隷制がある、町の中でも結構見かける。
そして俺も10年前に奴隷を買おうとして、奴隷商を回ったことがあるのだが、Bランクになったばかりの俺ではとても手が出せないほどの金額だったのだ。
その後、大分稼いだが老後の資金に残しておく分も有ったので、クリスちゃんにいったい幾ら使ったのかと、頭を抱えたい気分になっていた。
「クリスは50「白金貨50枚か!?」ち、違いますよ! 銀貨です、銀貨50枚ですよ!」
「安っす!? クリスちゃん安すぎないか!?」
この世界の通貨単位は最小が賎貨で、1番大きなのが聖硬貨なのだが、聖硬貨は神に祝福された硬貨なので国などで厳重に保管されていて世にでない。
賎貨ってのは欠けた鉄貨などなんだが、スラムの子供などが使うので逆の意味で世に出ない。
そして鉄貨➡️銅貨➡️銀貨➡️金貨➡️白金貨➡️大白金貨と、100枚ごとに単位が上がる。
さらに、鉄貨と銅貨に銀貨と金貨の間には大がつく貨幣が10枚ごとにあるのだ。
そして銀貨50枚なのだが、都市のスラムに近い家に住む5人家族で、1ヶ月に金貨1枚、銀貨で100枚有れば暮らしていけると言われているので、俺の認識だとかなり格安だと感じたのだ。
そしてその事を伝えると、奴隷商は俺の姿を見直して、高位の冒険者だと思ったのか訪ねてくる。
「もしかして戦闘奴隷と普通の奴隷との金額とで、行き違いがあるのではありませんか?」
そう言われた俺は、10年前の事を思い出しながら聞いてみる。
10年前に仲間がいないままBランクになった俺は、奴隷を買って仲間に加えれば寂しくないと考えて、奴隷商を回ったのだ。
そして行く先々の商館で奴隷の金額を聞いて絶望したのだ。
だが目の前の奴隷商が行き違いがあると言ってくるので、詳しく聞いてみる。
「戦闘奴隷と普通の奴隷ってそんなに金額が違うのか?」
「それはそうですよ! 最近は落ち着いてきたので、戦闘奴隷の価格も下がってきてますが、それでも最低で白金貨1枚は必要です。」
過去の俺もそう言われた覚えがあるので、軽くうなずく。
それを見た奴隷商が続ける。
「戦闘奴隷は当たり前ですが戦闘系のスキル、または索敵系のスキルを持っています、ですが単純にそれらのスキルを持っていれば戦闘奴隷と言われる訳ではありません、最低でも4ランクのスキルを2つか3つ持ってなければ戦闘奴隷とは言えないのです。」
俺はその言葉を聞いて驚き目を見開く、スキルランク4を2つか3つと言えば、冒険者や兵士でもベテランに足がかかったクラスだからだ。
奴隷商がそんな俺を見てさらに続ける。
「そんなスキルを持った者がホイホイ奴隷になったりはしないでしょう?
なので希少価値等で戦闘奴隷は高くなってしまうのですよ……。」
「なるほどなぁ……しかし、それにしてもクリスは安すぎないか?」
「いえ、そんなことはないですよ。
クリスは容姿が多少は優れてますが、田舎の宿屋の娘です。
接客なども少しはした経験が有るようですが、礼儀作法等を学んだわけではないので、この金額が妥当なところです。」
「そうなのか? ……しかしずいぶんと差が有るんだな。」
俺がそう言うと、奴隷商は少し悲しそうな顔をしてから言う。
「ケン様……邪神戦争でかなりの町や村がやられたので、スラムなどには人が溢れてますから……。」
奴隷商の話を聞いて、俺は納得すると、次は冒険者ギルドに行こうと思いクリスを探す。
すると彼女はいまだに檻の1つを悲しそうに見ているのだった、そしてそれに気がついた奴隷商がポツリと言う。
「あの檻には、クリスの家族が入ってます……。」
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